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・綱(ロープ)
瀬下耽のデビュー作。
新入会員の老人が、他の倶楽部メンヴァに現役判事時代のある事件を語るというもの。
典型的な「どちらが彼を殺したか」の作品だがちょっと捻ってある。
しかし勘が良ければオチは判る。トリックよりも人間関係や極限場面での心理状態を描いた作品。

・柘榴病
こちらは処女作。中学時代に同人誌に載せたものなんだって。
飲用水が枯渇した船がある島へ上陸する。そこは伝染病で住民が全滅した、死の島だった。
医者と思しき死体が握っていた日記によって明らかになった島での出来事とは。
ミステリというよりホラー色が強く、この作品が収録されているアンソロジィは全てホラー系。
支配者と弱者の立場が一転した時、人間はここまで残酷になれるという話。

・裸足の子
これは…特に謎の解明もなんもない。ただ、刑務所を出入りする子どもが可哀相な話…かな…??

・犯罪倶楽部入会テスト
なんかそーゆう会員制倶楽部の会報誌の為に書いた作品らしい。
海野十三のあれとかこれとかの作品を思わせるユーモア短編。
こんな倶楽部に入る為に命を危険に晒すなんて馬鹿げてる^^^
そーゆう皮肉まじりの作品です。

・古風な洋服
これはこわい。
普段スマートな服を着ている会社の同僚が、時代遅れの服装で町を歩いている所に遭遇した主人公。
その服装の訳を尋ねると、彼の秘められた悲しい過去を語るのだった。
しかし、思いがけない人物の過去も明らかになり、二人の男は絶望を抱くのである。

・四本の足を持つた男
これは秘名生の名義で発表されたもの。瀬下耽の名前で世に出すには落第点だったらしい。
老探偵・青砥甚之助(あおと じんのすけ)登場。
足跡トリックものなんだが…トリックが甚だ現実味のないものに感じられました。
あの見取り図の感じだと、どー頑張っても無理デショ!
タイトルでネタばれな上に、雑誌掲載時にはトリック実行中の犯人の挿絵があったらしい。興醒めだなー。

・めくらめあき
盲人の按摩が、明朝起こるであろう事件を妻に語った。
翌日、按摩が言った通りの服装の男二人の死体が発見され、按摩の予言は町の噂に。
怪しく思った役人が按摩を呼び出し追求すると、按摩は前夜の出来事を話すのだった。
設定が江戸時代という、珍しい作品。
しかしこれ、穿った見方も出来るよなー…実は按摩が全てを仕掛けたんじゃないかとか…
まァ、そんな事しても按摩にメリットないし、素直な見方をするか…

・海底(うなぞこ)
身重の妻が、自分の暴力から逃れる為に「自殺淵」から飛び降りてしまった。
自責の念に苛まれながら、仕事に没頭する事で忘れようとするが、漁の帰り、海底に漂う女の死体を見つけてしまう。
事件の当事者が「私」に語った過去の話。ちょっとホラーなオチがついている。

・R島事件
青砥老探偵登場。
乱歩的な、エロスとグロテスク、因習に彩られた、「変格」もの。
意外な犯人で私は驚いたけど。

・仮面の決闘
とても短い話だけど、どんでん返しあり。
ただ、オチはすぐに判ってしまうので面白さは半減、かな…

・呪はれた悪戯
このトリックは…

・女は恋を食べて生きてゐる
女を怒らせると恐いのよって話。

・欺く灯(あざむくひ)
ある夫婦がSMに目覚める切欠となった事件の話。
夫婦の性癖の話だので、事件自体についての説明は至極あっさりしている。
重公は短気で野蛮だけど、なかなか観察力のある男だと思った。

・海の嘆(うみのなげき)
深海での出来事。兄弟が一人の女を愛してしまった事で起きた悲劇。
深海という未知の世界の描写がグロテスクで神秘的で絵画的。
海と空とで違うけど、コナン・ドイルの「大空の恐怖」(多分タイトルこれだと思う)を思い出しました。
当時、全くの未知の世界だった遥か上空に潜む「何か」に襲われる恐怖と、
深海で、自分の命の心細さを実感する心理ってのが、私にとって同じラインで心にくる。
そして兄弟の心理描写がまた。この作品も好きです。

・墜落
複雑に交差する男女間の愛憎が、悲劇を生む。
サーカスが舞台の話は、先日郁二郎の「夢鬼」を読んだんだけど、夢鬼の方が陰湿でぬろぬろしてた。
こっちは割合さぱッとしてる気がする。だけど読後感はもやっとする。
しかしこんな死に方厭だ。

・幇助者
「裸足の子」と同じく、片親に捨てられ、残った親の為に生きている健気な子の話。
ネタバレになるけど、これは本当にぞっとする。子どもが全てを悟った時、どう思うかを想像するとぞっとする。

ある家に入ると、病人が侵入者である子どもを咎めるでもなく手招きする。そして自分の望みを叶えてくれたら金時計をやるという。
子どもは、例え自分の命に関わる願いでも請け負おうとする、それ位、何故か惹き付けられる病人の申し出だった。
子どもは言われるままこっそり小瓶を持ち出し、フラスコに中身を半分程入れる。
実は小瓶の中身は毒薬であり、病人の若く美しい妻と、その間男である医者を騙して毒を飲ませ、更に病人自身も毒を飲んで死ぬのであった。
子どもは、恐ろしさに耐えかね家を飛び出す。走りながら、病人が妻へ投げかけた言葉を反芻する。
病人が口にした女の名前は、片腕を失い、妻に捨てられた父親が写真に向かって血を吐くような声で呼ぶ女の名前と同じであった。
ただ、幼い子どもにはその意味がわからない。

ね、ぞっとするでしょ。
子どもは、何も知らないままに殺人と自殺の手助けをしてしまい、なおかつ病人と父親の復讐まで果たしてしまう結末なのよ。
子どもは幼くてこれらがどうゆう意味を持つか判らないからまだ救いがあるのかも知れない。
でも、全てを理解してしまう日が来たら?
そう思うと殺人と親殺しの二重の罪を彼がどう受け止めるか、どう昇華するのか、…
「裸足の子」は真実を知らないまま死んでしまうので、もしかしたら彼の方が幸せなのかも知れない。
兎に角、色々考えてしまうけど、どの作品が一番好きかって聞かれたらこれを選ぶと思う。

・罌粟島の悲劇(けしじまのひげき)
女は浅はかな生き物なのよ。

・手袋
珍しく大団円。
この復讐劇は古き良き時代の香りがする。古書のかほりである。
推理小説おたくにはたまらんです、ぐふふ。

・空に浮かぶ顔



・シュプールは語る
倒叙もの。

・覗く眼
隣人に情事を覗き見されていた事を悟った主人公の、復讐劇。
これは私はあまり好きな話じゃない。
つーか覗かれたくないなら薄い壁のアパートでセックスすべきじゃない。

・やさしい風
蒸発した女が残した赤ん坊は、本当に自分の子どもなのだろうか…疑惑は殺意に変わり、事故死を装うトリックを施した男の話。
瀬下耽最後の作品。

せじも・たん(1904-1989)
新潟県柏崎生まれ。本名は綱良。別名・秘名生(ひめいせい)
1927年『新青年』の懸賞に応募した「綱」が第二席に入りデビュー。
その後、1933年「罌粟島の悲劇」を最後に文筆活動から離れるが、1947年「手紙」を発表し復帰。
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寝ても覚めてもミステリが好き。最近はもっぱら「探偵小説」ブームで新しい作家さんを良く知らない。
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