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[創作篇]
園田教授の事件簿:名古屋Q大医学部の法医学教授・園田郁雄博士を探偵役に据えたシリーズ。親友であり妹の夫である芥川検事の要請を受けて事件の現場検証に赴くスタイル。
・Sの悲劇→1947年発表。太平洋戦争が勃発して間もなく財閥を解体し、堅固な鉄筋コンクリート建の洋館に隠棲した花隈家の当主、聡一郎。彼の愛人である女形役者と、顔と手指をめちゃくちゃに破壊された女性の死体が発見された。女性は妊娠しており、女形役者との浮気現場を目撃して逆上した聡一郎が殺したと考えられたが、聡一郎と女形役者が暮らす母屋には女性が住んでいた痕跡があり…早い段階で聡一郎が女性仮性半陰陽であった事が園田教授によって示唆されるのだが、銃声が聞こえて人々が現場に駆け付けてんだから被害者の身元判らんくする細工をする暇がないので聡一郎犯人説は最初から破綻しているのでは…?それと、そこら中刑事がいる筈なのに殿木が盗み聞き出来たなんて…刑事仕事しろ。ただ、犯人のどんでん返しは良かったと思う。
・二重殺人事件→1948年発表。染料研究の大家である一柳博士が自宅の研究室で刺殺された。死体の発見者である研究助手の脇田の部屋から血塗れの実験着が見つかり…「Sの悲劇」に登場した鹿村警部が警視に昇格しとる。(以下ネタバレ反転)作品集としてまとめられてしまうと、ドウにも「きょうだい・いとこ超似てる」話が続いているのが気になるな…しかも結局やっぱり加害者被害者入れ替わりトリックってのはナァ…あと、園田教授しか知らないネタを推理解説の時に出してくるのはイクナイ。死亡診断書書いた本人だなんて、最初から容疑者判ってんジャン!!(反転終わり)
・貝殻島殺人事件→1948年発表。エロ親爺が殺される話。以上!読者への挑戦付きショートショート。
・蘭園殺人事件→1948年発表。蘭の栽培と蒐集する野呂伯爵が所有する蘭温室で殺害された蘭栽培家の盤田。野呂家の顧問弁護士である奈良の招請を受けて現場へ向かった園田教授。咽喉を切られた被害者の左手には蘭の花が握りしめられていた…人物描写で犯人が判ってしまう…読者をミスリードさせようとしてそれが逆効果になっている感じ。一端犯人ではない人物(=真犯人が濡れ衣を着せたい相手)を犯人と指摘するような流れになり、疑われた人物に「俺はやってない」発言させてからの教授による真犯人の指摘、とゆうパタンが多いな。
・青鬚の密室→1948年発表。射殺された赤間院長。だが、目撃者は院長が院長室に入り看護婦が死体を発見する間に誰も出入りしなかったと証言し…被害者射殺され過ぎ問題。殺害方法が違えばばれなかったかも知れんな…
・火山観測所殺人事件→1948年発表。浅間火山観測所所長の庶木博士が射殺された。警察は博士の死体が発見された前夜、博士を呼び出した電話の相手を突き止めたが、その男も博士を撃った猟銃で殺害されていた…『ロック』の懸賞探偵小説に投じ次点入選した作品。また射殺か…
・青酸加里殺人事件→1948年発表。タイトルに反して冒頭の被害者は射殺(またか)で「???」となった。園田教授の検死によって青酸加里による中毒死であると判明する。てゆうか個人の作品集だから「そっくりさん」「双子」が出て来た時点で「また入れ替わりかよ~~~~」と思ってしまうのはモウ生理現象なので仕方ない…
・神の死骸→1949年発表。癌腫研究所所長の青池博士が変死し、園田教授は芥川検事と現場へ向かった。研究所からラジウムが紛失しており、単純な強盗殺人事件だと思われたが…飛鳥高「犯罪の場」を思い出した。
・青鬚の密室(改稿版)→1950年発表。冒頭に青鬚の説明が追加されたりちょこちょこ加筆と修正がなされている。
・毒の家族→1975年発表。「青酸加里殺人事件」のリメイク。園田教授が尼子富士郎博士に変更され、園田シリーズでほぼ存在感がなかった書き手の「私(「Sの悲劇」に登場の助手)」が伊能理一という名の助手として登場。双子の入れ替わりは健在。ここ一番なんとかする箇所でしょ!



・新版「女の一生」→1933年発表。山本源一郎名義。情婦を殺したヒモ男の裁判の様子が書かれた犯罪実話(らしい)。
・女郎蜘蛛→1948年発表。特ダネを掲載し、金一封を送られた新聞記者の元に一人の女性が現れた。彼女は、記者が犯人の名を報じた殺人事件の真犯人は自分だと言うが…
・兇状仁義――次郎長捕物聞書之内――→1949年発表。清水一家の元に寄宿する兇状持の旅人が殺害された。夜中に見廻りをした石松の証言で午前二時から午前七時の間に殺されたようだが、現場の離家にいたのは半身不随の老人だけで、目敏い兇状持を殺せるとは思われない。死体を調べた次郎長は、下手人が客の中にいると言うが…次郎長と石松のやりとりが銭形平次と八五郎のパロディみたい。
・消えた裸女→1949年発表。裸婦を描く中堅画家の元を訪れた新聞記者は、画家の死体と未完成の裸体画を発見する。死因は心臓麻痺であったが、モデルがいない事を疑問に思った記者は夜中に一人現場を捜索していると、いつの間にか絵のモデルが現れ…
・肉体の魔術師→1949年発表。公園のベンチに寝ていて保護された女性は、二十三歳だと言うが、どう見ても老婆の姿で…
・幽霊夫人→最近結婚した佐奈田の妻が「幽霊夫人」と呼ばれる理由は…
・淫妖鬼→1949年発表。バークリー『毒入りチョコレート事件』のモデルにもなったハーバード・R・アームストロングによる毒殺事件の犯罪実話。
・南海の女海賊→初出年不詳。実在した男装の女海賊メリイ・リードの話。

[評論・随筆篇]
喰ふか喰はれるか/春閑毒舌録(はるのどか・きままのよせがき) 青地流介/青地流介へ/探偵小説の浄化――厳正なる立場よりの批判/海野十三私観/探偵味雑感/創刊号を斬る/故海野先制を悼む/乱歩文学の評価/わが探偵小説文壇/横溝先生に会わざるの弁
青地流介は平塚白銀の別名。


みずかみ・げんいちろう(1916-2001)
東京都生まれ。本名・細合(ほそあい)源一(旧制・山本)。別名・山本源一郎、栗栖二郎。
早稲田大学在学中から「探偵趣味の会」に参加し、甲賀三郎、小栗虫太郎、海野十三、木々高太郎と知り合う。
1937年都新入社。42年海軍報道班員として従軍、その際小栗虫太郎の『黒死館殺人事件』を携帯したという。46年帰国し結婚。細合と改姓する。
47年、園田教授を探偵役とするシリーズ第一作「Sの悲劇」が『ぷろふいる』に掲載されデビュー。50年「青鬚の密室」の改稿版を発表後、新聞界に復帰し多忙となった為小説の筆を断つ。
75年『幻影城』に「青鬚の密室」が再録されたのを機に、エッセイや中編「毒の家族」を発表したが、同誌の廃刊と共に再び沈黙した。
2001年死去。晩年は摩崖仏、石窟美術像に興味を抱き、毎年のようにインドや中国、東南アジアを旅していたという。
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[創作篇]
・B(バランス)/S(シート)殺人事件→1939年発表。防空訓練の夜、新聞記者達の溜り場となっている呑み屋で出会った老人。なりゆきで老人を送る事になったが、突然苦しみ出し、毒を飲まされたと言って血を吐き死んでしまった。近くの医者を連れて戻ると、老人は消えていた。帰宅後上着のポケットに老人が入れたと思しき、会社の考課状と殺人に関する条文を発見し…法医学者・藤波博士と新聞記者・立川コンビ登場の発端話。
・五人の乗客→1939年発表。新聞記者立川が乗ったバスには三人の美女と一人のやくざ人風の男がS町から千葉までの客として乗り詰めていたが、トラックと衝突してしまう。それから三週間後、スパイが暗躍し、立川の友人が出動を待つS部隊が乗る予定だった船を爆破したという…
・東京間諜戦→1940年発表。スパイ養成学校をパスし日本に派遣される事が決まったジュリア。一カ月後、アメリカから日本への観光客を乗せた豪華船に、マリアと変名したジュリアの姿が。そこにはアメリカ出張帰りの立川もいて、マリアの怪しい行動を目撃する…スパイの悲しい話。
・三行広告の女→1941年発表。新聞社へ三行広告の申込に来ていた来ていた女性に、忘れ物を届けるため追いかけた立川だったが、何故か彼女は逃げ出してしまった。数日後、殺人事件の報告を受け、向かった先でその女性を見かけ…事件に巻き込まれるタイプの立川氏。
・東京探偵事務局→1940年発表。東京探偵局――真の名を 日本青年正義聯盟 という武士道精神を守る愛国結社――の局長・樽見樽平の活躍を描いたシリーズ。普段は娘の梨枝子(血色は悪いが美少女で三か国語を話す!)と二人で東京丸の内にある私立探偵事務所に暮らしている。小男でこどもに見えるけどМ字ハゲってゆう強烈な外見を持つそそっかしいおっさん。だが八百人はいるという部下を使って日本に潜む外国のスパイを排除しているすげーおっさんのユーモアミステリ。
 第一話 盗まれた軍艦/第二話 白骨の謎/第三話 東京第五部隊/第四話 療養院の秘密/第五話 銀座間諜專/第六話 街の警視総監
・サンキュウ氏と眼鏡→1946年発表。電車で定期とバレエの入場券を掏られたマリエ。ポケットに残されたのは「I THANK YOU」と書かれたカードだった。一方、マリエの父・西野医師の元を訪れた胃病患者の三四田三九(みすた さんきゅう)と名乗る男は西野医師が勤務する病院の向かいのビルに住む私立探偵だった。西野医師は三九にある事を依頼をする…
・サンキュウ氏と記憶箱→1948年発表。サンキュウ氏が警察局長官に引き合わせた街の発明家。彼の発明品『記憶箱』は、持っているだけで忘れ物をしなくなるという。試しに秘書官が使用してみると遺失物もなく掏摸にも遭わなかったという。その噂はたちまち警察局内に広まり試用志願者が続出した。ついに警察局長官も使用してみるが、記憶箱を持っている事自体を忘れたために盗まれてしまい…これは皮肉が効いている、日陰者の放った矢だ。それにしてもこんな警察厭だ。
・天眼鏡→1947年発表。寝たきりで予言を的中させるというオシキリ様の元へ夫がいつ復員するか尋ねに向かった婦人。帰りに再会した婦人は、オシキリ様に夫が無事に帰っては来ないと告げられたという。興味なさそうにしていたサンキュウ氏が突然彼女の手相を見て、夫は帰ってくると確信に満ちた声で言い出した…
・トランプ物語→1947年発表。子どもにトランプの王様とクイーンとジャックだけ顔が描いてあるのは何故かと聞かれたサンキュウ氏。理由は知らないがと断り、子どもたちに聞かせたトランプにまつわるある童話…
・踊り子殺人事件→1948年発表。ナイフ投げが得意な丈二は友人の中川の頼みでショウに参加することになる。一躍人気者となった丈二に言い寄る二人の女性。その内の一人が、彼が舞台で使うナイフで刺殺され、容疑者となってしまった丈二だが…サンキュウ氏シリーズ。
・胃病患者→1948年発表。再び西野医師の元へやってきたサンキュウ氏は、夜だけ入院させてくれないかと頼む。夜の決まった時間に酷い胃痛に襲われると言うのだ。西野医師は痛み止めの注射を打ちに看護師を派遣することを提案する…プラセボサンキュウ。
・三人の秘密→雑誌編集者にせがまれて物騒な話をするサンキュウ氏。
・消えた花嫁→1958年発表。若原町警察署(自治警察)の公安委員で大学講師兼海外ミステリの翻訳家でもある北野三郎が主人公の田舎の事件シリーズそのいち。遠縁の農家の息子が、嫁入りの最中に新妻が居なくなったと北野の元にやってきたが…
・五月祭前後→1958年発表。(中古)パトカー納入式。
・狸と狐→1958年発表。北野の教え子の彼女の家の家宝として伝わる掛け軸と同じものが本家争いをする分家からも出てきて、どちらもうちの物が本物だと主張しているという…

[評論・随筆篇]
作者後記(『東京探偵局』)/荻窪雑記/捕物小説について/著者後記(『現代ユーモア文学全集』)/二つの星/RING NO.88/楠田匡介氏の「いつ殺される」の会/あとがき(『消えた花嫁』)/競馬場附近/アンケート
[創作篇]
・白日夢→1936年発表。W大学の人気投手・左近譲二が巻き込まれた恋愛醜聞と殺人事件…どんどん人が殺されていくけど、登場人物みんないけ好かなくて読み進めるの辛かった…女子も恋できる程の魅力を感じなかったし…真相が語られ始めてもグイグイ読む気になれず…それに犯人の自白アッサリし過ぎでは??死者の証言だけであんなにゲロらんでも良いと思うが、大悪党と見せかけた超小物ってとこかな。しかし最後で判るタイトルの意味は悲しさと幻想味があって良い。
・宝島通信→1936年発表。男性が極めて少ない女王が統べる宝島へ交流試合にやって来た日本の野球チームの運命は…ユーモアショートショート。
・五万円の接吻→1936年発表。借金があることを知らされずに亡父の跡を継がされ毛皮を扱う会社の社長にされてしまった剛造。「酒と女に気をつけろ」との父の遺言に反して社員のタイピストに恋をしたが…
・福助縁起→1936年発表。福助が白目をむいて笑うと不幸が起きる前触れだと言い伝えられている屋敷で、若旦那の二人目の嫁が自殺した…くそ一家だな…くそじじいにくそばばあ、くそむすこ…ほんとくそ。
・作家志願→1938年発表。
・聖骸布→1938年発表。借金を残して支那へ行った父から六年ぶりに手紙が届く。近く帰国するとの事だったが、盧溝橋(ろこうきょう)事件が起こってしまう。翌年四月、支那で父と一緒だったという男が、父の死体を包んでいた布を形見だと言って持ってきた。その布には父の死顔がうつされていた…宗教の話、と思いきや、というかやっぱり詐欺の話。狂信者の祖母は真相を知ったらどうなってしまうんだろう。

[評論・随筆篇]
由太郎と高太郎/苦労あのテこのテ/探偵小説の作り方/アンケート


きたまち・いちろう(1907-1990)
新潟県生まれ。本名・相田毅(あいだ・たけし)。別名・蔟劉一郎(そろ・りゅういちろう)。
福島高等商業学校在学中と思われる1928年、本名で詩集『手をもがれてゐる塑像』を上梓。東京商科大学入学。卒業後、婦女界社に入社。
35年「賞与(ボーナス)日前後」で第16回サンデー毎日・大衆文芸入選。36年『白日夢』が春秋社主催の長編探偵小説募集に第二席入選し探偵作家デビューする。同時活動や出版社勤務の傍ら、探偵小説、スパイ小説、ユーモア小説を発表。
40年『啓子と狷介(けんすけ)』が直木賞候補になるが授賞を逃す。同年同作品とその他作品により、第一回ユーモア文学賞を受賞。62年の「一一〇番野郎」を最後にミステリ作品の発表が途絶える。
79年、児童文学功労者として日本児童文学協会より表彰される。90年死去。
[創作篇]
・犯罪の場→1947年発表。土木工学科の一室で起きた事件。橋桁の耐震力の試験中に一人の学生が死んだが、自殺とは考えられず、かつ密室での出来事であった…建築畑の作者らしいトリック。動機もありきたりではないし、乱歩が食いついたのも頷ける内容だと思う。
・孤独→1951年発表。「血塗られたる部屋にて死ぬべし」との脅迫状を受け取った代議士が金庫の中で刺殺体となって発見される…金庫で殺されるの絶対厭だな。
・白馬の怪→1952年発表。二年前、首のない白馬が現れ白河家の次男が失踪した。そして首のない白馬が再び現れ、今度は白河家の当主が殺害され…
・火の山→1954年発表。三年ぶりに偶然再会した私と光枝。彼女の父の助手をしていた男が渡り廊下の中で殺害されたという。しかも火山灰で覆われた現場には足跡が無く、密室状態だったのだ…途中で犯人気付いちゃうよね…
・雲と屍→1955年発表。雪道に足跡を残さず消えた泥棒。更に密室殺人まで起き…タイトルは最後まで読まないと何なのか判らんけど、ちょっとしゃれてるなと思った。
・兄弟→叔父殺しの疑いで拘留されていた弟が釈放されたが、家の者は彼を邪魔者扱いしているようであった。真犯人を突き止めるため、現場を調べるうちにある恐ろしい考えに囚われ…
・放射能魔→1957年発表。近頃体調が思わしくない理学博士の白川は、友人の医師の診察により放射能障害との診断を受けた。放射性物質を取り扱わない白川は、自分を邪魔者にする誰かの仕業ではないかと疑うが…
・疑惑の夜→1958年発表。弱みを握られ会社に対し不正を働くよう強要されていた九里は恐喝者である島の殺害を決行した。しかし島の親分にあたる悪党・中条に島殺害の件で脅され、会社からある書類を盗むよう命じられてしまう。一方、自殺を図った鳥居工業の社長に一人娘の明子が死のうとした訳を尋ねると、中条に強請られ続け、ついには遺言状に財産を全て自分に譲るとの書き換えを強要されたためだと言う。明子はどうにかして中条を倒せないか考える…女の方がしっかりしているけれど、社長令嬢にここまで出来るのかしらん。

[評論・随筆篇]
本格物の需要について/探偵小説に関する疑問/消息/新風/無題/「宝石」への望み/「スパイの技術」を観る技術/読者と批評家と作家/はがき随筆/授賞の決つた日/江戸川先生の予言/思い出すこと/乱歩邸の“金策”/私にとっての江戸川先生/何が面白いか/乱歩――わが師/アンケート

あすか・たかし(1921-)
山口県生まれ。本名・烏田專右(からすだ・せんすけ)。
三歳の時に父を亡くし、七歳の時に母が再婚、烏田家の養子となる。山口高等学校卒業。東京大学工学部建築学科卒業。
1946年、『宝石』の懸賞探偵小説に「犯罪の場」を投じて入選。翌年掲載されデビューをはたすが、東北に転勤したため作家業は空白となる。結婚して住むことになった家が江戸川乱歩邸の隣であったことから執筆を再開。
50年に「湖」を発表。57年江戸川乱歩賞に「背徳の街」を投じるも受賞は逃した。翌年『疑惑の夜』と改題改稿して刊行。61年『細い赤い糸』で日本探偵クラブ賞受賞。
本業が多忙となり76年の「とられた鏡」を最後に創作の筆を断つ。70年コンクリートの研究で東京大学から工学博士号を授与。75年にはコンクリート工学の研究で日本建築学会賞受賞。
90年『青いリボンの誘惑』を上梓した。
[創作篇]
・噂と真相→1923年発表。寄宿舎で起きた盗難事件。圭二は山根から犯人と決めつけられ、生徒監の前で身体検査を受けた。すると覚えのない五十銭札が左のポケットから出てきて…
・利己主義→1923年発表。暗闇で殺された親日派の呉均。彼を斃した短刀の持ち主である日本人の私は拘留されたが、一人の日本人刑事に助けられ、真犯人を捕まえる事になった…
・股から覗く→1927年発表。股の間から世間を逆さに見る事を好む加宮が目撃したマラソンランナー殺害現場。彼の証言で「九」のナンバーを付けた浦地が拘留されたが、その後第三者によるアリバイ証明が成され、今度は加宮が疑われ…(以下ネタバレ反転)逆さで「23」を認識したのに、何で「6」を「9」と誤認しちゃうの…?あと、藤直先生とばっちり過ぎる…浦地悪人過ぎるだろ…(反転終わり)
・赤光寺(しやくくわうじ)→1928年発表。八人が集った会の最中、突然停電した僅かの間に男が一人殺されて…「利己主義」の焼き直し的な話。ちょっとだけ肝試し的要素が入ってるけど、必要を感じない…
・偽(いつわり)の記憶→1929年発表。「鉄道三部作」そのいち。自分の記憶に自信がない青年の話。そして彼の幻想を打ち破る最後の一行の強さよ。
・赧顔(あからがお)の商人→1929年発表。「鉄道三部作」そのに。
・杭を打つ音→1929年発表。「鉄道三部作」そのさん。猟の最中に誤って打ち殺された女の夫が自殺した。列車で出会った男はその夫・梅原の友人であると言う…このシリーズは列車で乗り合わせた見ず知らずの人間から事件の話を聞かされる話になっている。
・赤いペンキを買つた女→1929年発表。弁護士花堂初登場。走行中のタクシーに飛び移り乗客を殺したとして起訴された被告の裁判風景。被告弁護人の花堂は、唯一の証人である運転手の証言の信憑性を問うていくが…1928年に施行された陪審法を啓蒙するため、この頃はこういった法廷物が書かれていたとか。浜尾四郎とかね。
・霧の夜道→1930年発表。花堂氏の人となりが判る一編。
・骨→1931年発表。近所付き合いの全くない一家が惨殺されているのが発見されたが、現場は室内から鍵がかけられた密室だった…冒頭で「モルグ街の殺人」「黄色い部屋」のネタバレあり。この人は作品のオチ(要点?)をタイトルにしがちだなァ。ところで、この一家は斧で殺されたんだけど、六人も順々に殺されるってドウなの?最初の被害者悲鳴位上げるでしょ?何で一人も逃げたりできんかったの??犯人ひとりやぞ。
・影に聴く瞳(め)→1931年発表。母殺しを疑われ、かつ父が子を庇い自首して獄死した事によって世間から冷たい目で見られている女性と、彼女の友人の兄との往復書簡。愛を乞い、手紙を通じて兄は彼女の母の死の真相に迫るが…謎の装置登場。これ、実現できても相当な訓練が必要だから絶対一般には普及しないよ…それより冬子を愛したって…
・暗視野→1932年発表。自堕落な女と一緒になってしまった気の弱い男が、大金を盗もうとする話。強かな女。
・染められた男→1932年発表。女優殺しの裁判の話。
・女と群衆→1932年発表。男に財布を盗まれたと騒ぐ女。男を調べても財布は見つからず、群衆に罵倒された女の取った行動…
・古銭鑑賞家の死→1933年発表。過失死とみなされた転落死事件の捜査を依頼された花堂。現場で出会った南山警部は、痴情の縺れや遺産目的だと疑ったため、表面上は過失死だと言ったのだと答える。墜死した男は骨董集めが趣味で、中でも値が付けられぬほど貴重な古銭を持っていたという。しかし、その古銭が紛失している事から更に容疑者が増え…ちょっと犯人の立ち回りに小細工がありすぎて判り易いな…
・蝕春鬼→1933年発表。三、四十代の金持ちばかりが三、四カ月で衰弱死する事件が相次ぎ…人里離れた一軒家の床下にいた女は何だったの??とか何で金持ちばかり狙ったのかとか疑問しか残らない。そもそも性別誤認トリック無理あり過ぎるでしょ。おじさんみたいなおばさんなら兎も角二十五~六って。付け髭なんてスグばれるでしょ何なのみんなポンコツなの??人物の書き分けもビミョウで、怪しい男みんな花堂なんだけど、なんでそんなに犯人側にいるの??弁護士なにしてんの??
・慈善家名簿→1935年発表。(ネタバレ反転)花堂、詐欺に遭うの巻。(反転終わり)
・情熱の殺人→1935年発表。死の直前にある父から同居する身寄りのない女性と結婚するよう強く遺言された息子。だがある時出会った金持ちの娘と激しい恋に落ち、身を持ち崩してゆく…プロットはオルチー夫人の「情熱の犯罪」をベースとしているらしい。こんな男さっさと捨てた方が良いよ。
・花堂氏の再起→1948年発表。大陸からの引き揚げ船で再会した花堂の話――仕事で奉天へ行った際、銃撃事件に巻き込まれ、ある期間の記憶を失い足を引きずるようになった花堂。彼は南に置いた枕が夜になると北に移動しているのを発見し、次第に強迫観念に囚われる…
・紅鬼(フングウイ)→1948年発表。ショートショート。新妻の初夜を奪う紅鬼と呼ばれる怪人の噂。ユーモア。
・雨雲→1948年発表。田舎で起きた連続殺人事件。怪しい人物だらけだが、花堂の推理が冴える!短いけれど、トリック、ダイイングメッセージ、犯人が凝ってて面白い。
・後家横町の事件→1948年発表。雪密室。蕎麦嫌いの被害者の胃に二杯分の蕎麦があった謎。花堂の甥・新城裕刑事登場。



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くずやま・じろう(1902-1994)
大阪府生まれ。本名同じ。
八歳の時、父の赴任先だった満州国旅順へ移る。中学卒業後一人で帰国。
1923年、「噂と真相」を『新趣味』の懸賞探偵小説賞に投稿し一等入選。県立病院の病理研究所で助手として働く傍ら、27年『新青年』の懸賞に「股から覗く」を投じ一等入選。29年旅順に戻り兄の家業を手助けしながら、花堂琢磨弁護士シリーズや鉄道三部作を発表するが、家業の多忙と病気の為執筆が途絶える。
47年帰国。翌年「花堂氏の再起」で復活したが、「後家横町の事件」を最後に筆を断つ。92年第一作品集『股から覗く』刊行。94年死去。
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寝ても覚めてもミステリが好き。最近はもっぱら「探偵小説」ブームで新しい作家さんを良く知らない。
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