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『不如帰』で有名な蘆花ですが、実は探偵小説を残していたという。それがこれ。
解説によると、明治時代を代表する家庭小説・通俗小説に尾崎紅葉『金色夜叉』・菊池幽芳『己が罪』と蘆花の『不如帰』があるが、その三人とも探偵小説(あるいはそれに近いもの)を残しているのは興味深い、とある。
前者二人は海外物を翻訳・翻案した長編、蘆花は短編を上梓。
『探偵異聞』は『マイケル・デイヴィットの手記』というミステリとしてはイマイチなものを翻訳か翻案したもの。
『外交奇譚』はアレン・アップワードという法曹家で政治家で教師で詩人という人の作品が原作との事。
明治生まれのミステリ愛好家たちは、日本には何故優れた探偵小説がないのだろうと嘆きながら涙香や蘆花の翻案・翻訳を読み漁っていたそうよ。
不木も読んでた探偵異聞。ふぼくうぅ…

・探偵異聞…1897~98年に『国民新聞』に断続掲載されたもの
序:昨年秋に他界した知人の探偵・穴栗専作から渡された一冊の覚書から、以下の話を抜粋して紹介するよ。
という前置き。

巣鴨奇談(探偵秘聞録):巣鴨に「化生(おばけ)屋敷」と呼ばれる家がある。昔、妾とその間男が嬲り殺されたといういわく付きの屋敷で、その後持ち主が何度か変わったが、怪事が起こる為家主は半年と居つく事はなかった。
そんな屋敷を改装して住むようになった男がいたが、二年後、車夫もろとも崖から転落して死亡した。
更に五年後、事故死した男の甥が帰朝し屋敷に住み着いた。彼はアメリカで財産を成し、僕と共に帰ってきたところで叔父の変死を聞き、財産を相続したのだった。
そして半年後、またしても「化生屋敷」で惨劇が起きてしまう。

身中の虫(探偵秘聞録):大阪の大長者が正月に殺害された。彼は誰からも尊敬され恨まれるようなところはどこにもないのだが…

露国探偵秘聞(探偵秘聞録):穴栗老探偵<ロシアの探偵まじすごい。
穴栗が語るロシア探偵の話…

雲かくれ:在日公使館の一等書記官である伯爵は、金持ちで才学があり事務にかけても抜かりなく、見た目は男装した少女と見紛う程で、日本に在留している外国婦人をはじめ日本の上流階級のご婦人たちまでをも虜にしていた。
12月12日の晩餐会で手紙を受け取った彼は一時間程で戻ると言ってそのまま失踪してしまった。
身代金の請求もなく、死体も発見されず、本人の意思による失踪とも断言出来ない。

大陰謀:穴栗が最近帰国した者から聞いた話…
舞台はロンドン。ロシアからやってきた伯爵の屋敷には二人の娘と執事下男下女、さらにロシアに長く住んでいたというイギリス人女性が暮らしていた。伯爵家の全権は何故かこのイギリス人夫人が牛耳っていて、一家の者ですら彼女に逆らう事をせず、彼女の機嫌を損ねた客は二度と屋敷に招かれないという。

まがつみ:冤罪で裁判にかけられた男を救う話。穴栗探偵は出てこないよ。
被害者が銀行から引き出したのは五千円なのに、被告が借金返済に充てたのは三千円だった。残りの二千円はどこへいったのだろう?というのがポイント。

秘密条約(老探偵の夢物語):サブタイトルによって「これはフィクションです、実話じゃないよ」と仄めかしとるそうです。
某国から秘密条約の案文を受け取ったが、それを盗まれてしまったという外務大臣から極秘の依頼を受けた穴栗…

・外交奇譚(抄)…1898年に刊行された短編集。全12編のうち、探偵色の強い7編が採録されている。
白糸:外套の襟についた糸屑をとられた事に対して酷く驚いた元フランス大使の「何某」。その理由を聞き手に語る。

土京の一夜:夜のトルコの街をそぞろ歩く「何某」が見つけたのは一足の靴。拾い上げると中には切断された足が…恐ろしい奇形の足であった。

冬宮の怪談:ロシア皇帝アレクサンドル三世崩御後、冬宮にアレクサンドル皇帝の幽霊が出るという噂がたった。その噂の出所は「何某」と親しい若者であった。彼は新帝ニコラス二世の扈従(こしょう)を務め、冬宮の警備にあたっている最中にその幽霊を見たという…

鞭の痕:「法で裁けない悪人に対して血闘は有効な手段だ」と語る「何某」の血闘話…

王の紛失:スペインの幼王が病気になったと聞いた「何某」は面会に行くが母親である太后にすら会わせてもらえなかった。
彼を父のように慕う幼き王の為、フランスから特注の玩具を見舞として持参し、ようやく太后との面会を許された。
「何某」の気遣いに絆された太后は、幼王は病気ではなく拐かされてしまったのだと告げた…

北欧朝廷異聞:スウェーデン王の著作を外国語に訳して売りたいと言う三人組の対応を任された「何某」。実はその三人組は、フリーメイソンの最高幹部であり、謀反を犯した王を死刑にする為、「何某」に協力を命じたのであった。
スウェーデン王に恩義がある「何某」はどうにか王を死刑にしないよう画策するが、自身もフリーメイソンの会員である為、裏切り行為は自身の命の危険を伴うものであった。
果たして「何某」は王を救い、自身の危険も救えるのか…

法王殿の墓:ローマ法王が住まうヴァチカン宮殿は、世界一小さな国である。
法王バイアス九世の時、「何某」はフランス公使として法王庁にいた事があった。当時のローマ法王とイタリア国王の仲は険悪で、一方と謁見すれば他方の怒りを買う事になる程だった。
それでも「何某」は宝石や古牌好きという共通の趣味を持つイタリア人伯爵と親しくなった。
ヴァチカン殿の博物館にはマニア垂涎の古牌コレクションがあった。その博物館は誰でも入る事が出来る公共の施設であったが、伯爵は頑として行こうとはしなかった。
珍しい古印が手に入ったという博物館からの招待を受け、伯爵は「何某」が同伴する事を条件にしぶしぶ従った。
しかし、伯爵は博物館から忽然と姿を消してしまった…
という話。このあと伯爵の甥ってやつが出てきて遺言書を読むんだけど、妻には再婚する時に指輪買えって20リラ与え、「何某」には親しくしてくれたお礼にと20リラ与え、残りの財産全て甥にやる、という内容。
こいつ、ほんとに甥だったのかな…これについて詳しく触れられていないのである。

全編読んで思った事…
明治の文体難しいわ、高校時代の古文の授業思い出すわ。あとヴァチカンもスウェーデンもアレキサンドルも漢字過ぎてルビないと読めぬ…「聖彼得堡」てなにか解ります??「セントベエトルスブルグ」てルビ振ってあるけど、…どこ??(ロシアの地名?らしい)

とくとみ・ろか(1868-1927)
肥後国水俣郷生まれ。本名は健次郎。
政論化であった兄・徳富蘇峰(※苗字…正しくは「富」らしいが、蘆花は頑なに「冨」の字を用いていたとの事)と共に京都の同志社に入学するが二年で退学。
再び同志社へ入学するが、新島襄の義姪との恋愛事件を起こしてまた退学。
兄が設立した民友社に入社。ヨーロッパ巡遊をしていた兄が持ち帰った二冊の英書を翻訳・翻案して同社が発行していた新聞に掲載する。
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寝ても覚めてもミステリが好き。最近はもっぱら「探偵小説」ブームで新しい作家さんを良く知らない。
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