[創作篇]
・銀の小函:私立探偵の妻が、夫が扱った事件のうち、比較的秘密にする必要のない不思議な事件の話をする――某男爵家に泥棒が入り、容疑者として連れていかれた小間使いを救って欲しいと連絡があり、夫婦は現場へ向った…
→デビュー作(2007年までの調査による)
・心霊写真:横溝君が撮った写真に写るはずのない女――三年前に死んだ町田みち子――が写っていた…
→カメラの仕組みを知らないとサッパリ…そしてややアンフェアかと…
・れえむつま:カフェを辞めたと電話を掛けてきたお葉を、友人の加藤が宿泊しているホテルの部屋で待つよう指示した原。しかしお葉は加藤の部屋で絞殺されていた…
→タイトル意味不明だったけど、本文中で判明する(好きな人には判るのかも。でも1927年の作品だからな…)
・箱根細工の函:探偵事務所へ入ってきた公爵令嬢・包子(かねこ)は、ある人物との婚約が成立しかかっていた。しかし三年程前の冬、親しくなった海軍中尉に送った絵手紙に、取りようによっては恋文ともとれるような事を書いたものがあった。それを手に入れた新聞記者に一万円で買い取れと脅迫されているという…
→ボヘミアの醜聞的な。延原がホームズシリーズ全編を日本で最初に翻訳した人だから、こうゆうの書いてみたくなったのかな。でもボヘミアより捻ってあるよ。
・幸蔵叔父さん:幼い頃、四つ上の姉を病気で亡くした私。姉の死後失踪した幸蔵叔父さんに関する事を口にするのは一族のタブーとなった。当時の事を知る者は皆死んでしまったが、私はある偶然からその秘密を知る事になった…
→おそろしく不運で貧乏くじを引かされ続けた叔父さん可哀想過ぎる。
・踏止つた忠太:十年の刑期を終え、弟家族の家へ厄介になる事になった忠太。しかし弟の源二は、夏に腸を患い、その看病疲れか今度は妻が臥せっていると言う。来年から学校だという息子に新しい服を買ってやるのもままならない弟の家で厄介になる事を心苦しく思う忠太だが…
→タイトル通りの話かと思いきや…ツライ…
・氷を砕(か)く:幾野鉄太郎が忍び込んだ家の押入れに死体が入っていた。それにも関わらず、家人は死体などないかのように生活しているようで、病人の為に氷を砕く音がしていた…
→『新青年』における〈連続短篇〉という企画。新人に短篇を六話書かせたもので、乱歩曰く、この企画を持ちかけられた作家は将来有望とみなされていたらしい。延原は既に翻訳家として長かったので新人じゃなかったけど、創作的には新人って事で書かされたっぽい。
本職は大工だけど、時々泥棒をして生計を立てている幾野鉄太郎と五十嵐登刑事コンビのシリーズ。
・レビウガール殺し:鉄太郎はタクシー強盗に襲われた運転手を助けたが、眼を離した隙に車を置いて逃げてしまった…
→〈連続短篇〉二作目。鉄太郎と五十嵐シリーズその2。
・悪運を背負ふ男:西岡竹二郎は、どこへ行っても何かしら問題を起こして飛び出すか、ていよく追い出されるかして、四十幾つの現在までに七、八回も転職している男だった。彼と似たような運命を背負っている鉄太郎は、酔って落ちた古井戸で死体を発見してしまう。その死体は、十万円拐帯犯の密田航策だった…
→えっ、えっ…?真相は、藪の中…??〈連続短篇〉三作目。鉄太郎と五十嵐シリーズその3。
・N崎の殺人:海水浴客で賑わうN駅の海水浴場で、大工の鉄太郎は屋台を出して稼いでいた。休暇で遊びに来ていた五十嵐刑事と世間話をしていると、N崎の方からひどく慌てた様子の男が走ってきた。聞くと、N崎で彼の弟が殺されていたという…
→〈連続短篇〉四作目。鉄太郎と五十嵐シリーズその4。「レビウガール殺し」に登場した沼津五郎と再会するよ。
・金・金・金/身売:父親に吉原へ売り飛ばされるという娘を救おうと、デパートでスリをしてお金を集めようとするが、刑事に眼をつけられてしまい…
大尽:この不景気の中、羽振りの良い客がやってきた。翌日、その客が刑事と共にやってきて…
→〈連続短篇〉五作目は短篇二つ。
・黄金魔人:N氏から、T教授に渡して欲しいとラマ教の仏像を預かった伏見。しかし仏像はN氏が寺院から盗んできたものらしく、伏見の家の廻りを怪しい男がうろつくようになった。そして仏像を返さなければ恋人の命に関わるという脅迫状が届き…
・三ヶ月の日記/至急金を必要とした会社員は、他の会社の給料を強奪する計画をたてた。金の入った鞄を奪う事に成功したが、どれだけたっても事件は新聞記事にならず…
→〈連続短篇〉六作目。
・ドンドの淵事件:海老名男爵家の別荘へ行く途中にドンドの淵がある。そこで海老名は背中を刺されて死んでいたという。迷信家の老風呂番は、ドンドの淵の主・うでな様に殺されたと言うが…
→〈連続短篇〉七作目。
・伯父の遺書
→本題部分がカタカナと漢字で読み難く過ぎて読めませんでした。謂れのない醜聞を収める為に伯父さんの遺書を公開するよ!て話。
・ものいふ死体/自分に良く似た男の身代わりに日本へ重要機密書類を持ち帰る事になった不破だが…
→冒険譚。ただしタイトルと内容は一致しない。予告でタイトルだけ告知してたから生じた不一致なのかもしれんとのこと。
・腐屍/昨夜、己(おれ)は恋のライバル田奈部を空き家で殺した。田奈部の死体発見記事は夕刊にも出なかったが、一夜を共にしたM子が殺害された記事が出ていた。M子は己が贔屓にしていた女で、殺されたのは己が帰ったすぐ後らしい…
→「三ヶ月の日記」と同じく犯人の手記形式。自分が殺した男が発見されない苛立ちと、自分が殺したのではない事件に巻き込まれるかもしれないという二重のストレス…
・銀狐の眼/銀座八丁目で起きた交通事故。しかし車に乗っていた男は事故の前に殺害されていた…
→銀狐の襟巻き争奪戦。
・女秘書/会社で禁止されている株をこっそりやっている相良は、社長秘書をランチに誘った。実は社長も株をやっており、今度社長が買う株を知らないか秘書に探りを入れようとするが…
・秘められた暗号/刑事の父親を湯治へ行かせる為、学校から帰ると靴磨きをして治療費を稼ぐ恒夫。彼の元に与太者らしい若者がやってきて、ある男に渡してくれと新聞包みを置いていった。その頃、銀座の宝石店では百万円の指輪が盗まれて…
→少年誌掲載作品。暗号物だけど、短時間にこんな細工出来るのかとか、何故暗号に気付かないようなやつに暗号で指輪の在り処を教えたのかとか色々疑問が湧く…
・求むる男(翻訳)/偽造小切手を用い現金を引き出し姿をくらました銀行員。ニューヨーク行きの旅船チケットを購入した事が判明し、レストレードは意気揚々とニューヨークへ向ったが、銀行員は監視されていたにも関わらず船の中から姿を消してしまい…
→ホームズ物の未発表作。という触れ込みで掲載されたが、実はアーサー・ホイテカーという人の贋作で、ドイル本人が買い取ったものだという。贋作だと判明する前に延原が訳したんだって。
ところで、毎朝ココアを持ってこさせる習慣のどのへんがぞくぞくする程興奮出来るの??ホイテカーのホームズ像はHENTAIなの??チョットイミワカラナイ。
[評論・随筆篇]
漫読夜話/心憎きクリスティ/好々爺ポワロ/わが本願/当選作所感/涙香の手訳本/断片/ヴエテランの退場/探偵小説など/コーナン・ドイルの逸話/強剛ホウムズ/短篇集二三――夏よ若人に――/海外探偵小説手引草/水谷準氏の作品に就て/探偵小説の翻訳と海外作家/ぷろふいるに寄する言葉/翻訳のスタイル/探偵小説図書館設立私案/十八年後の勝利/奇縁のポワロ/批評家待望/悪戯/あちら種二三――近頃読んだもの――/外国作家素描/いはでもの弁/ホームズ研究/シヤーロック・ホルムズと推理力/断片――翻訳誌の思い出――/ドイルの作品/回顧五十年/「偶然は裁く」訳者附記/シャーロキアン/ホームズと卅五年/ホームズ庵老残記/ホームズ庵毒舌録/思い出の一端/妹尾君を悼む/妹尾君をいたむ/ホームズとの出会い/アンケートほか
のぶはら・けん(1892-1977)
岡山県生まれ。本名・謙(ゆずる)。早稲田大学理工科卒。遁信省電気試験所で働きながら外国の探偵小説を趣味で翻訳。それが森下雨森に見出され翻訳家としてデビュー。(大学・試験所では海野十三の先輩にあたる)
晩年は「ホームズ庵」と名付けた別荘で生活を送り、1952年、シャーロック・ホームズシリーズの個人全訳を完成させた。
1977年死去。1979年、日本シャーロック・ホームズ・クラブによって延原謙賞が設立された。
・銀の小函:私立探偵の妻が、夫が扱った事件のうち、比較的秘密にする必要のない不思議な事件の話をする――某男爵家に泥棒が入り、容疑者として連れていかれた小間使いを救って欲しいと連絡があり、夫婦は現場へ向った…
→デビュー作(2007年までの調査による)
・心霊写真:横溝君が撮った写真に写るはずのない女――三年前に死んだ町田みち子――が写っていた…
→カメラの仕組みを知らないとサッパリ…そしてややアンフェアかと…
・れえむつま:カフェを辞めたと電話を掛けてきたお葉を、友人の加藤が宿泊しているホテルの部屋で待つよう指示した原。しかしお葉は加藤の部屋で絞殺されていた…
→タイトル意味不明だったけど、本文中で判明する(好きな人には判るのかも。でも1927年の作品だからな…)
・箱根細工の函:探偵事務所へ入ってきた公爵令嬢・包子(かねこ)は、ある人物との婚約が成立しかかっていた。しかし三年程前の冬、親しくなった海軍中尉に送った絵手紙に、取りようによっては恋文ともとれるような事を書いたものがあった。それを手に入れた新聞記者に一万円で買い取れと脅迫されているという…
→ボヘミアの醜聞的な。延原がホームズシリーズ全編を日本で最初に翻訳した人だから、こうゆうの書いてみたくなったのかな。でもボヘミアより捻ってあるよ。
・幸蔵叔父さん:幼い頃、四つ上の姉を病気で亡くした私。姉の死後失踪した幸蔵叔父さんに関する事を口にするのは一族のタブーとなった。当時の事を知る者は皆死んでしまったが、私はある偶然からその秘密を知る事になった…
→おそろしく不運で貧乏くじを引かされ続けた叔父さん可哀想過ぎる。
・踏止つた忠太:十年の刑期を終え、弟家族の家へ厄介になる事になった忠太。しかし弟の源二は、夏に腸を患い、その看病疲れか今度は妻が臥せっていると言う。来年から学校だという息子に新しい服を買ってやるのもままならない弟の家で厄介になる事を心苦しく思う忠太だが…
→タイトル通りの話かと思いきや…ツライ…
・氷を砕(か)く:幾野鉄太郎が忍び込んだ家の押入れに死体が入っていた。それにも関わらず、家人は死体などないかのように生活しているようで、病人の為に氷を砕く音がしていた…
→『新青年』における〈連続短篇〉という企画。新人に短篇を六話書かせたもので、乱歩曰く、この企画を持ちかけられた作家は将来有望とみなされていたらしい。延原は既に翻訳家として長かったので新人じゃなかったけど、創作的には新人って事で書かされたっぽい。
本職は大工だけど、時々泥棒をして生計を立てている幾野鉄太郎と五十嵐登刑事コンビのシリーズ。
・レビウガール殺し:鉄太郎はタクシー強盗に襲われた運転手を助けたが、眼を離した隙に車を置いて逃げてしまった…
→〈連続短篇〉二作目。鉄太郎と五十嵐シリーズその2。
・悪運を背負ふ男:西岡竹二郎は、どこへ行っても何かしら問題を起こして飛び出すか、ていよく追い出されるかして、四十幾つの現在までに七、八回も転職している男だった。彼と似たような運命を背負っている鉄太郎は、酔って落ちた古井戸で死体を発見してしまう。その死体は、十万円拐帯犯の密田航策だった…
→えっ、えっ…?真相は、藪の中…??〈連続短篇〉三作目。鉄太郎と五十嵐シリーズその3。
・N崎の殺人:海水浴客で賑わうN駅の海水浴場で、大工の鉄太郎は屋台を出して稼いでいた。休暇で遊びに来ていた五十嵐刑事と世間話をしていると、N崎の方からひどく慌てた様子の男が走ってきた。聞くと、N崎で彼の弟が殺されていたという…
→〈連続短篇〉四作目。鉄太郎と五十嵐シリーズその4。「レビウガール殺し」に登場した沼津五郎と再会するよ。
・金・金・金/身売:父親に吉原へ売り飛ばされるという娘を救おうと、デパートでスリをしてお金を集めようとするが、刑事に眼をつけられてしまい…
大尽:この不景気の中、羽振りの良い客がやってきた。翌日、その客が刑事と共にやってきて…
→〈連続短篇〉五作目は短篇二つ。
・黄金魔人:N氏から、T教授に渡して欲しいとラマ教の仏像を預かった伏見。しかし仏像はN氏が寺院から盗んできたものらしく、伏見の家の廻りを怪しい男がうろつくようになった。そして仏像を返さなければ恋人の命に関わるという脅迫状が届き…
・三ヶ月の日記/至急金を必要とした会社員は、他の会社の給料を強奪する計画をたてた。金の入った鞄を奪う事に成功したが、どれだけたっても事件は新聞記事にならず…
→〈連続短篇〉六作目。
・ドンドの淵事件:海老名男爵家の別荘へ行く途中にドンドの淵がある。そこで海老名は背中を刺されて死んでいたという。迷信家の老風呂番は、ドンドの淵の主・うでな様に殺されたと言うが…
→〈連続短篇〉七作目。
・伯父の遺書
→本題部分がカタカナと漢字で読み難く過ぎて読めませんでした。謂れのない醜聞を収める為に伯父さんの遺書を公開するよ!て話。
・ものいふ死体/自分に良く似た男の身代わりに日本へ重要機密書類を持ち帰る事になった不破だが…
→冒険譚。ただしタイトルと内容は一致しない。予告でタイトルだけ告知してたから生じた不一致なのかもしれんとのこと。
・腐屍/昨夜、己(おれ)は恋のライバル田奈部を空き家で殺した。田奈部の死体発見記事は夕刊にも出なかったが、一夜を共にしたM子が殺害された記事が出ていた。M子は己が贔屓にしていた女で、殺されたのは己が帰ったすぐ後らしい…
→「三ヶ月の日記」と同じく犯人の手記形式。自分が殺した男が発見されない苛立ちと、自分が殺したのではない事件に巻き込まれるかもしれないという二重のストレス…
・銀狐の眼/銀座八丁目で起きた交通事故。しかし車に乗っていた男は事故の前に殺害されていた…
→銀狐の襟巻き争奪戦。
・女秘書/会社で禁止されている株をこっそりやっている相良は、社長秘書をランチに誘った。実は社長も株をやっており、今度社長が買う株を知らないか秘書に探りを入れようとするが…
・秘められた暗号/刑事の父親を湯治へ行かせる為、学校から帰ると靴磨きをして治療費を稼ぐ恒夫。彼の元に与太者らしい若者がやってきて、ある男に渡してくれと新聞包みを置いていった。その頃、銀座の宝石店では百万円の指輪が盗まれて…
→少年誌掲載作品。暗号物だけど、短時間にこんな細工出来るのかとか、何故暗号に気付かないようなやつに暗号で指輪の在り処を教えたのかとか色々疑問が湧く…
・求むる男(翻訳)/偽造小切手を用い現金を引き出し姿をくらました銀行員。ニューヨーク行きの旅船チケットを購入した事が判明し、レストレードは意気揚々とニューヨークへ向ったが、銀行員は監視されていたにも関わらず船の中から姿を消してしまい…
→ホームズ物の未発表作。という触れ込みで掲載されたが、実はアーサー・ホイテカーという人の贋作で、ドイル本人が買い取ったものだという。贋作だと判明する前に延原が訳したんだって。
ところで、毎朝ココアを持ってこさせる習慣のどのへんがぞくぞくする程興奮出来るの??ホイテカーのホームズ像はHENTAIなの??チョットイミワカラナイ。
[評論・随筆篇]
漫読夜話/心憎きクリスティ/好々爺ポワロ/わが本願/当選作所感/涙香の手訳本/断片/ヴエテランの退場/探偵小説など/コーナン・ドイルの逸話/強剛ホウムズ/短篇集二三――夏よ若人に――/海外探偵小説手引草/水谷準氏の作品に就て/探偵小説の翻訳と海外作家/ぷろふいるに寄する言葉/翻訳のスタイル/探偵小説図書館設立私案/十八年後の勝利/奇縁のポワロ/批評家待望/悪戯/あちら種二三――近頃読んだもの――/外国作家素描/いはでもの弁/ホームズ研究/シヤーロック・ホルムズと推理力/断片――翻訳誌の思い出――/ドイルの作品/回顧五十年/「偶然は裁く」訳者附記/シャーロキアン/ホームズと卅五年/ホームズ庵老残記/ホームズ庵毒舌録/思い出の一端/妹尾君を悼む/妹尾君をいたむ/ホームズとの出会い/アンケートほか
のぶはら・けん(1892-1977)
岡山県生まれ。本名・謙(ゆずる)。早稲田大学理工科卒。遁信省電気試験所で働きながら外国の探偵小説を趣味で翻訳。それが森下雨森に見出され翻訳家としてデビュー。(大学・試験所では海野十三の先輩にあたる)
晩年は「ホームズ庵」と名付けた別荘で生活を送り、1952年、シャーロック・ホームズシリーズの個人全訳を完成させた。
1977年死去。1979年、日本シャーロック・ホームズ・クラブによって延原謙賞が設立された。
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