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再読

アマチュア奇術愛好会の新作発表会の舞台裏で、奇術に使う小道具の人形の首が盗まれる。
後日、ギロチンで首を切断された女の死体の脇には盗まれた人形の首があり、女の首は見つからなかった。
被害者の腹違いの妹が神津恭介に事件の解明を依頼するのだが、恭介はあまり乗り気ではない・・・
再び人形を用いた殺害予告が届く。人形は、隠し部屋から盗まれた上に、列車で轢断されたのだ。様子を見に行った松下研三にも犯人の魔の手が伸び・・・!

と、犯人は必要以上に人形を”殺す”事に執着しているのは何故か、という話です、ちょっと違う。
胡散臭い自称詩人とか、フーディニエの再来とまで謳われた元奇術師とか、巨額の金を左右に動かす怪人物とか、怪しい人物がうじゃうじゃしてます。
刺青殺人事件も能面殺人事件も好きだけど、やっぱりこれも好きだなあああ・・・
人形を殺してから人間を殺す、とかさ、乱歩のにおいがぷんぷんするよね!
本格はコウでなくちゃ! と思わされますといっても乱歩あんまり読んでないのですが。
いかんな、こうゆう戦後本格ミステリの雰囲気にどっぷりはまっていると新しいミステリ読む気がなくなる・・・
暫く神津さん読んでようっと!

そういや昨日のケーキ、賞味期限中に食べきれるのかなあ・・・
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人生三度目の読本。
最初は10年前、まだ安倍公房が推理作家だと思い込んでいた頃に『砂の女』と一緒に借りて読んだ。
そっから高木彬光にはまって神津シリーズを読み漁りだし、やっぱり能面手元に置いておきたいと数年後古本で購入して読む。
で、二回読んだんだけど、密室トリックがイマイチ把握出来ず、なんだかなぁであった。
いやいや、これすっごく好きな作品なの、だからこそ本棚に納めた訳で。
だので今回みたび読んで理解しました!なんだそゆことかって位簡単な事だったんだけど、やっぱ現場の見取り図がないと判り難いなぁ・・・右開きか左開きかも未だ判らず・・・
これって私が賢くないだけなんですが!なんですが!
空間認識能力が低いんだよおおおオンナってェのは!心理学実験でそんな結果が出た気がする。

・柳 光一:ビルマから帰還。化学者。千鶴井家に居候している
・高木彬光:光一の友人で、自称「日本のフィロ・ヴァンス」
・石狩弘之:「法の鬼」と呼ばれる検事。光一の父親と親友だった

本家
・千鶴井壮一郎:世界的な放射能化学者。分家に殺された?
・千鶴井香代子:壮一郎の嫁。博士の死後精神病院に入院
・千鶴井緋紗子:壮一郎の娘。5年前に発狂
・千鶴井賢吉:壮一郎の息子。強度の心臓弁膜症

分家
・千鶴井泰次郎:壮一郎の弟で医者。恐るべき物欲の人
・千鶴井麟太郎:泰次郎の長男。恐るべき虚無主義者で自分は超人だと信じている
・千鶴井洋一郎:泰次郎の二男。父親を一回り小さくしたような男
・千鶴井園枝:泰次郎の実母。脳梗塞の後遺症によって身体が不自由
・千鶴井佐和子:泰次郎の娘。分家の中では一番まとも

人物表がなかったので書きながら(ディープなファンはこうやって読むらしい)読んでたらふっと話の内容を思い出してゆきました。
登場人物の中に、精神病院に入院している人がいて、ああ、当時(戦後)の精神病院っつったら戦地とは違う方向に地獄だよなぁ・・・と思った事で記憶が蘇る。
昔の精神病患者って本当に酷い扱いを受けていたのだよ、ヒステリー患者が女性しかいないからってんで女性特有の病気だとして子宮を切除する事が治療法だった。その後、男性患者にもヒステリー症状が現れるケースが発覚してその治療法はやめたんだけど、そんなの後の祭りだよねぇ・・・断りもなく子供産めない身体にさせられた女性患者の事を考えると。
この作品に出てくる分家はヴァンの「グリーン家」日本版って感じで、ほんと、誰が死んでも誰も悲しまない、寧ろみんな死んだ方が社会の為。という人間ばかり。
中でも長男がほんとにどうしようもないクズで梅毒保有者なんだけど、気違いと天才は紙一重っちゅうやつで、本当に精神病院に入院させるべきはこいつなのに見た目正常者なので野放しになっている。

何でこの作品が好きなのかって考えながら読んでたんだけど、ドウやら人間的結末ってゆうんだろうか、人間の心理の割り切れなさとか不可解さ??なんか白黒つけられない心理描写に比重が傾いている結末の話が好きみたいです。『歯と爪』的な。
三回読んだけど、やっぱりこの作品は凄く好きで、ちょっと泣いた。
これはカーの処女作で、しかもいきなり密室ものである。
前の結婚生活で、良人に殺されかけた女。彼女が再び結婚をしようとしているところに前夫からの脅迫状が届く。
前夫は彼女が再婚する事を新聞で知り、精神病院から脱走、整形してパリにやってきていたのだ。
前夫の影に怯える女、そして婚約者の公爵。
二人の結婚式の当日、大勢の人々で賑わうクラブの中で公爵は首を切り落とされて殺害されてしまう。
しかもふたつしかない入り口の一つは刑事が見張り、もう一つのドアは予審判事・バンコランが一時も目を離さなかったにも関わらず、現場には犯人の姿はなかった・・・

今の今までディスクン・カーだと思ってた、ディクスンなのか。
昔一度読んだけどトリックが理解出来なくておもしょないなぁと思ってたけど、
ちゃんと密室トリック判ろうという意識を持って読み返したら面白いね!!
トリック理解出来ました、理解出来なかったあの頃の私に喝! 何読んでたの。

物語は随所に芝居の台詞が散りばめられ、シェイクスピアとか全然な私にはサッパリだけれども、登場人物の中に派手好きな、芝居っ気たっぷりの男が出てきているのでそれにもひっかけてあるのかなぁ。
古典ミステリって大抵犯人が自殺してお終いなパタンが多いけど、これはぶつりと切れている感じ。余韻がじわじわきます。

真面目にトリック理解しようとしながら読めば判るという事に気付いたのでもう一冊未だにトリック判らんのを読み返そうかな・・・
百物語シリーズの最後の作品であり、はじまりの話です。
巷説百物語で百介と出会う前の、又市がどうして小股潜りになったのかが判ります。
百介と出会ってから百介が死ぬまでの話を既に読んでいるので知っている人物がそこかしこに出てきてウレシイ。

・寝肥(ねぶとり)
=自堕落が過ぎた女が、寝ている間に部屋いっぱいに膨張する怪事。

上方でしくじった又市と「削掛」の林蔵が損料屋「ゑんま屋」に出会い、手下になる話。
うおおお林蔵!後巷説では京都の人っぽかったけど、すっごい大阪人っぽい!良く喋る!
「長耳」の仲蔵は、アニメ巷説のオリジナルキャラクタを京極さんが気に入って原作にも登場させた人物。二つ名の通り耳が長い。
巷説年表(昔、続巷説かなんかに挟まれてた巷説ガイドブック)によると、この事件は182●年の出来事。
又市がひいきにしている女郎の「お葉」は4度売られて4度見請けされた美女。彼女を買った男は悉く死んでしまう。
そのお葉が自殺しようとしていた所を、女相撲取りの死体を運んでいた林蔵が助け仔細を聞くと
「妾は、人殺しなんです」
と言う。
又市は何とか逃がそうとするが、当のお葉は死んで償おうとする。
そこへ居合わせた損料屋「ゑんま屋」の手代、角助が
「その損、手前どもがお受けしやしょう」
――と。そうして損料を又市が支払う事になり、彼はゑんま屋の手先となるのだ。

・周防大蟆(すおうのおおがま)
=周防の国の山奥にすむ古蛙。蛇を食う。

敵討ちをする為江戸まで来たのだが、兄を殺された男、岩見は敵討ちをしたくないと言う。
しかも、敵討ちの相手、疋田は無実なのだと訴える。
当時敵討ちは武士なら絶対にしなければならないもので、敵討ちを命じられた者が死んでも若い親族が果たさなければならないのである(但し、目上の親族が殺された場合のみ。目下の親族の敵討ちは認められていなかった)
取り敢えず疋田に罪を着せた真犯人を探そうと言う事で聞き込みを行うと、彼らが仕える藩主の世継ぎで、しかも世継ぎは疋田に惚れていて、自分に靡かないのは他に思い人が居るからだと勘繰り恋敵(と勝手に思い込んだ岩見の兄)を斬ったのだという。
なにこの色恋殺傷沙汰。
この話で剣術の達人「鳥見」の山崎寅之助が登場。彼は武家の出でありながら剣を捨て、細民窟で暮らしている変わり者。相手の獲物を奪って仕留める恐ろしい使い手である。

・二口女
=継子を虐め殺すと、その継母の子供は口をふたつ持って生まれてくるという。

武家の後妻が、前妻の子を虐め殺してしまったようだ、とゑんま屋にやってくる。
その損をどう埋めれば良いのか。また、後妻は本当に前妻の子を殺してしまったのか。
儒学者崩れの久瀬堂庵先生だいかつやく。
時代小説(巷説シリーズしか読んでないけど)読むと、武家ってほんとうに七面倒臭い職業だなあと思います。

・かみなり
=稲妻とともに落ちてくるとされる生き物。

損料屋の仕掛けで一人の女癖の悪い侍が切腹した。
その後、ゑんま屋の女将、お甲と角助が拐かされ、半殺しにされた角助だけがゑんま屋の店先に捨てられる。
プロの殺し屋に狙われるゑんま屋一味。先の仕掛けの復讐なのか。
御燈の小右衛門登場。

・山地乳(やまちち)
=人の寝息を吸う妖怪。寝息を吸われた者は胸を叩かれると死ぬが、途中で目を覚ませば助かるらしい。

憎い相手の名を書くと三日以内に相手が必ず死ぬという黒絵馬の噂。
神仏の霊験ではなく人の手によってなされた悪事だと考えた同心・志方兵吾は犯人を誘き寄せる為に自分の名前を黒絵馬に書く。
――しかたさまあああ!!なんなのこの人、おとこまえすぎるるるるr!
山岡軍八郎を彷彿とさせるぜ・・・
ついに稲荷坂の祇右衛門の影が・・・

・旧鼠(きゅうそ)
=古鼠の妖怪。猫を食うが、子猫を育てる事もする。

うおおおおおおんん!!ももすけが、ももすけがあああ!
出てるちょろっと出てる!!
と、大興奮したのも束の間、久瀬先生が失踪。おおん。
祇右衛門の悪事をちょくちょく損料屋が知らずに潰してしまっていた為ゑんま屋が狙われる。
撲殺された後、物見櫓に逆さ吊りにされたゑんま屋の手先・辰五郎、おしま、巳之八、そしてゑんま屋の裏稼業とは全く無関係のおちか。
ゑんま屋の仲間はどんどん殺されてゆく。腕の立つあの山崎でさえも殺されてしまう。
囲まれた又市も死を覚悟するが、そこへ現れたまかしょう(御札を売り歩く御行)。
シリーズの最終話にして、はじまりの話。
なんかこの繋がり感がすごいです。
京極作品は別シリーズにも被った登場人物が出てきて、なんというか、世界観のリンクがすごいです。
又市は『嗤う伊右衛門』『覘き小平次』にも出てくるし、何といっても後巷説に登場した人物の子孫が京極堂シリーズにも出てくるところが凄いです。しかも巷説の影響としか思えない性格形成しちゃってるところとか、すごい計算されているんだろうなぁと思う。
やっぱり昨日はW杯見なかったてゆうか眠気に負けた。
ベストエイトにはなれなかったけど、充分ではなかろうか。

+++++

『金田一耕助の帰還』は、中長編にリメイクされた短編を集めたもの。
横溝さんはよく短編を練り直して中編にしたり長編にしたりしている。

・毒の矢
御近所の秘密(奥さんが浮気してる、とか)を暴きたてた手紙が起こした事件。
『蝋美人』と改題される。
てゆか、これ元々は大正10年に投稿用に書かれたネタらしい。捕り物帳シリーズでもこのトリックを使用しているらしい。

・トランプ台上の首
ストリッパーの首がカードゲーム用テーブルの上に置かれている!
なんか手品のトリックを思い出します。
『迷路荘の怪人』に。読んだけど覚えてない・・・

・貸しボート十三号
斬首を中断した状態の男女の死体がボートに乗せられて漂っているのを発見される。
被害者はレインコートを着た40代位の女性と逞しい男性的な猿股一丁の20代男。
『火の十字架』に。金田一シリーズなのに読んだ事ない・・

・支那扇の女
稀代の毒殺女として大正の犯罪史に名を残した元子爵夫人を大叔母に持つ女性が夢遊病の最中に殺人を犯す。
これ、巧く伏線が張られているよ、知識ある人にはすぐ見破られる系だけど。
改稿版『支那扇の女』では冒頭でふれられていた強盗についても解答がある・・・らしい。

以下の三篇は横溝さん、高木彬光、島田一男の三人がリレー形式で連載されたもの
・壺の中の女
密室で殺された壺マニアは壺に入る曲芸を得意とする支那女が殺したのか・・・
一番かわいそうなのは名前もない孤児だった子供が悪い大人に拾われて女として玩ばれた揚句殺されちゃうところだよ。

・渦の中の女
これは!『白と黒』の元です!
私こっちの方が好きなんだ依頼人の旦那さん殺されなくて済むから。
この話も中傷誹謗の手紙が発端となった事件。
・・・うーん、同性愛ネタが多い。

・扉の中の女
渦の~に出てきた依頼者の紹介で、殺人現場に居合わせてしまったという女性が金田一の元へ訪れるところから始まる。
金田一さん、東京で依頼受けて仕事する場合もあるのね。
金田一=岡山 という思い込み。

・迷路荘の怪人
『迷路荘の怪人』(中編)から更に『迷路荘の惨劇』(長編)となった作品。
不義の疑いをかけられ日本刀で斬り殺された夫人と、その姦通の相手(と、旦那さんは思い込んでいる)の左腕を斬り落としたが、返り討ちにあって「名琅荘」の主人が殺されるという事件があった通称「迷路荘」で再び事件が起こる。
果たして「片腕の怪人」は生きているのだろうか・・・
懐かしい、懐かしいよう・・・!読んでるうちになんとなく思い出した。
しかし思い出すのはドラマ『悪魔が来たりて笛を吹く』に出ていたいしぐろけんなのであった。
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寝ても覚めてもミステリが好き。最近はもっぱら「探偵小説」ブームで新しい作家さんを良く知らない。
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