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[創作篇]
・釘抜藤吉捕物覚書:の(傍点有り)の字の刀痕/宇治の茶箱/怪談抜地獄/梅雨に咲く花/三つの足跡/槍祭夏の夜話/お茶漬音頭/巷説蒲鉾供養/怨霊首人形/無明(むみょう)の夜/宙に浮く屍骸/雪の初午(はつうま)/悲願百両/影人形
→雪の初午以外は青空文庫で既読なので省略。
 ・雪の初午:雪道で転んで頭を打って気絶し、そのまま凍死したらしい男の死体を発見した藤吉と勘次。
       解題によると、藤吉シリーズは(全てかどうかは判らないが)翻案ものらしい。アメリカ放浪中に読んだペーパーブックとかが元ネタなのかな…??

・早耳三次捕物聞書:霙橋辻斬夜話/うし紅珊瑚/浮世芝居女看板/海へ帰る女
→青空文庫にて既読。

[随筆篇]
吉例材木座芝居話/行文一家銘/著者自伝/作中の人物の名 その他/三馬の酔賛
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凄惨な人死にが出た物件を事件当時のまま完全移築し一つの「家」にした烏合邸。
その「家」で起きた不可解な出来事を綴った日記や手記が河漢社の編集者・三間坂の実家から見付かった。三津田もその記録を読むが、怪事に見舞われるようになり…

六歳位の息子を持つ母親の日記「黒い部屋」、作家志望の青年の手記「白い屋敷」、女子大生の録音テープ「赤い医院」、超心理学者の調査記録「青い邸宅」、三津田・三間坂が烏合邸で起きた事を推測する現代パートで構成されたホラーミステリ。
独りぼっちで読むのは躊躇われる…だってインターホン押されたり家鳴りしたらコエーもん。怖いけどリーダビリティ凄いからやめられない・とまらないである。読んでる最中より、夜中にふっとこれの事を考えちゃってる時が怖いかったです。
以下ネタバレ含むので畳みます。


[創作篇]
・都会冒険:夜汽車/襯衣/一五三八七四号/昼興行(マチネー)/コン・マンといふ職業/靴と財布/島の人々/うめぐさ/首から下げる時計/ネクタイ・ピン/トムとサム
→紐育自由新報の社会記者ヘンリイ・フリントを主役にした連作。狂言に遭ったりスリの仲間にされたりライバル社を出し抜いたりする話。地下鉄サムもちょっと出てくる。
 夜汽車は青空文庫にて既読だった。



・上海された男:友人を殺害したとして逮捕されそうになった男は神戸を出航する外国船に逃げ込みそこで働くことにした。しかし暴風で神戸へ戻ってしまい…
→『牧逸馬の世界犯罪実話集』にて既読。
 「上海される」とは暴力で無理矢理船に乗せられて強制労働させられる事。らしい。

・神々の笑ひ:実業家の野々宮さんはけちな事で有名だった。今日も電車賃を払わずに降りる方法を考えながら野々宮さんは乗車していたのだった。乗客客が減った頃、野々宮さんの向かいに座った男女の内緒話が聞こえてきたが、盗んだ首飾りをどう処分するかの相談らしく…
→SAGI!!

・死三題:鉋屑/ある作家の死/一つの死
→なんか翻案みたいな話だなー。

・百日紅:長い海外生活から帰ってきたSさん。Sさんが何処の国にいたのか、何をしていたのかは誰も知らなかったが、金持ちであった。借家の隣に茶室を建てている。背戸口には百日紅を植えようと思う…
→Sさんがどっちだったのかとか、挿話は作中作だったのかとか、結局何なのかはっきりしない感じが良いね。こうゆうもやっとした終わりは好き。

・ジンから出た話:バーで知り合いになった外国人と久し振りに再会し、結婚した事を伝えると「まだ奥さんを殺したくなりませんか」と尋ねられた。何故そんなことを聞くのかと問うと、上海での出来事を語りだした…
→この流れ、いつまで続くんだ…と思いながら読んだ。良かった延々と続かなくて…

・助五郎余罪:助五郎は慶応生まれの江戸っ児で、怖い団体にも二つ三つ属している。銭湯で老人と若者が、笛の名人がいきなり投げ飛ばされ怪我をしたという話をするのを聞いた助五郎は若者から詳しい話を聞きだして…
→青空文庫にて既読。

・民さんの恋:民さんは頭がいやに大きくて身体がばかに小さい十七の男だった。民さんが六年前から奉公している床屋の親方が芸者の咽喉許を剃っている時に手を滑らせて殺してしまった…
→か、かんぜんはんざい…ッ

・山口君の場合:山口文二郎は銀行の出納係である。彼は仕事が嫌でやたらにお金がほしかった。そのうち体調を崩してしまったので医者に診てもらうと、病名を言わずに転地をすすめられた。暗示を受けやすい山口君は余命幾ばくも無いと勝手に解釈し、銀行から一万円を横領し病気保養の為I温泉へやって来た。しかし体調はどんどん回復してしまい、罪の意識に苛まれた山口君はついに自殺を決意するが…
→どこまでも運のないやつ…

・東京G街怪事件:医学博士堀泰三の元に、G街四丁目の交叉点を横切ろうとしていきなり卒倒したという男が運ばれてきたが、彼は既に死亡していた。博士は死人の口内や口辺の汚物を調べるとシアン化カリウムによる毒死と断言した。死人には自殺する動機もなく、一緒にいた友人が殺したのだろうか…
→トリックも犯人もすぐ判るやつ。しかしこれはトリック云々より探偵役である博士の行動の違和感というか…不信感というか…信用出来ない語り手タイプの作品に通じる読後感ある。

・砂:R県N町の警察署に旅館の番頭が女の宿泊客が昨晩から戻らないと訴えに来た。その時、派出所からS別邸の裏の砂浜から女の手が出ていると電話があり…
→牧逸馬の話は、犯人を当てるとか、そうゆうのを楽しみながら読むタイプじゃないんだね。そうゆうのもいいよね。

・爪:押し込み強盗の佐太郎は、相棒の仙二郎の爪が女より綺麗過ぎるのが不満だった。押し込むときに顔を隠していても手を記憶されてはそこから足がつくと言って仙二郎を叱った。その晩押し入った質屋の番頭は仙二郎の手を凝視していて…
→爪(というか手)に対するコンプレックスが自己を正当化する為に極端になり過ぎてるってゆう、そうゆうの書くのうまいなって思う(誰目線なんだ)

・赤んぼと半鐘:瀕死の子どもを見てもらおうと小児科専門の都築病院へやって来た晋吉。だが医師は汽車の時間だからと取り合ってくれない。絶望した晋吉は自宅に向ったが、家の様子がおかしい。普段は来ない近所の人々が集まって泣く妻を慰めている。子どもが死んだと確信した晋吉はかたきうちの為都築病院へ引き返し…
→ううっ…

・舞馬(ぶま):峰吉の二番目の妻・お八重が一緒になって三年目に子どもが出来た。最初の妻との間にも子がなかったので、養子とも居候ともつかない茂助という十九の男が居た為、世間ではお八重の腹の子の父親は茂助だと噂した。その噂が当人たちの耳にも入ったが、誰も否定も肯定もしなかった。そのうち、お八重が峰吉の関心を買う為か、風評にそそのかされたように峰吉の眼をかすめて茂助と親しくしているように見せ出しはじめ…
→青空文庫にて既読。芥川の「藪の中」みたいな話だなぁ。

・一九二七年度の挿話:小宮夫妻が私、岸村と支那料理を食べに行った帰りに立ち寄った古道具屋でスンツウクというロシアの箱を購入した。スンツウクが届いてから小宮家では不思議な子供が現れるようになって…
→愉快な夫婦。

・十二時半:芝山美喜子は「夜の湖」を思わせる女だった。しかし本当の彼女は内に火のような鋭さを蔵していて、こうと思ったらどんなことでも平気で即座にやってのける――それが本当の美喜子だった。結婚を反対する伯父に対し、あることを決行すると恋人の民夫に伝える。美喜子の性格を知っている民夫は不安を覚えるが、翌日、伯父が殺され容疑者として美喜子が拘引されたとの知らせが…
→(ネタバレ反転)ミステリあるある〈犯行時刻を証言するやつは犯人か犯人を庇ってる〉。(反転終わり)更に「証拠が無いなら自滅させれば良いじゃない」ってのが…恋は盲目じゃな。

・ヤトラカン・サミ博士の椅子――A Hindoo Phantasy――:ヤトラカン・サミ博士は観光客の手相を見るのが好きだった。特に若い西洋の婦人の手相から性生活を言い当てて赤面させることに異常な興奮を感じていた。そして彼が座る椅子車にはある秘密があった…
→青空文庫にて既読。

・基盤池事件顛末:昭和四年十月二十一日、通称基盤池で首も四肢も無い女の惨死体が発見された…
→実話風。これ一番好きかも。刑事というより岡っ引きに近い気質の老刑事が風水で被害者の年齢を予測して(しかも偶々当たってる)殆ど勘みたいな捜査で被害者の身元及び犯人に迫っていくってのが推理小説に逆行してて面白い。んで、同時進行でちゃんと科学的根拠と地道な捜査によって犯人を逮捕するのも良い。謎の金歯とか、犯行に関係ないものも重要物証として捜査されてくのも現実的だなと。しかし最後の最後でホラーっぽく〆るとこがまた。好き。

・真夜中の煙草:舶来百物語――或る殺人事件/舶来百物語――恐怖の窓/競馬の怪談/西洋怪異談――夏祭草照月(くさにてるつき)/西洋怪異談――白い家/西洋怪異談――境界線
→「恐怖の窓」はサキ「開いた窓」、「競馬の怪談」はH・ホーン「老人」の翻訳。「或る殺人事件」に似た短篇を読んだ事ある筈なんだけど誰の作品かタイトルすら思い出せずずっともやついておる。

・七時〇三分:宮本武蔵こと宮本得之助は競馬狂だったが、最近は負けが続いていた。明日のレースで大儲けしようと意気込みながら酒場へ向う宮本に、謎の老人が「明日の夕刊を買わないか」と話しかけてきた…
→「競馬の怪談」を書き直したもの。文体は〈めりけんじゃっぷ〉ものを書いていた頃の谷譲二っぽいらしい。執筆途中で急逝した為最後は筋を聞いていた和田芳恵という人が書き足したそうな。

[評論・随筆篇]
米国の作家三四/米国作家の作に現るる探偵/乱橋戯談/椿荘閑話/山門雨稿/言ひ草/女青鬚事件(ウーマン・ブルウビヤアド)――三十五人の愛人を殺害した妬婦――/実話の書方/振り返る小怪/マイクロフォン/アンケート

まき・いつま(1900-1935)
新潟県生まれ。本名・長谷川海太郎。別名・谷譲二、林不忘。
一歳の時一家で函館へ移住。ストライキの首謀者とされ卒業試験で落第処分とされた為函館中学を退校。上京し明治大学専門部法科入学。
卒業後、1920年オハイオ州のオベリン大学入学。同年退学し、様々な職種をしながら全米を放浪。この時の経験を谷譲二名義で執筆(「めりけんじゃっぷ」もの)。林不忘名義で「釘抜藤吉捕物覚書」「丹下左善」シリーズ、牧逸馬名義で犯罪実話ものを執筆。
35年、鎌倉の自宅にて急逝。当時新聞連載の他、七つの連載を抱えていた。
1963年発表。
端午の節句を祝う蒲陽の町で行われた競渡(きょうと)の最中、艇の選手が倒れた。自然死に見えたが毒殺されたと判り、狄判事はふるまい酒に毒を盛られたとみて内偵へ出る。そこで若い女性に用心棒として雇われ、地元の人間が「白夫人」の伝説を恐れて近寄らない商陸林にある廃屋まで送る事になったが、彼女は廃屋で殺されてしまった。彼女の夫・の話によると、かつて宮廷から消え失せた皇帝の真珠を買う為に夫人自ら使いを買って出たのだと言う…

蒲陽へ来て一年程経った頃の話で、馬栄、喬泰、陶侃が休暇をとっていて不在中の事件。洪警部が活躍してるけど、老体なんだから働き過ぎないでよお!と心配してしまう。『江南の鐘』では死に掛けてたし。
割と早い段階で犯人は嗜虐癖のある狂人だと判明してて、この「狂人」の犯人像として判事が「普段はその凶暴な欲望を抑圧して~」とプロファイリングしてるのが現在の犯罪心理学に通ずるところあって良かった。単なる気ちがいの犯行と片付けないところが良い。
怪奇現象と信じられていた 家崩壊のきっかけとなった出来事もきちんと解明されてるところとか、気まぐれで拾った亀の使い道とか。
最後の最後で判事による被害者への思い込みが解消して大団円なんじゃなかろうか。モヤっとした終わり方(狄判事の政治の理想と現実との乖離とか)が多い中、比較的ハッピーエンドの部類かと。
そんでモンゴル相撲の女力士・良(リャン)さん強過ぎ…
2006年発表の、1935年の英国が舞台の作品。
クリスマスを祝う為に大佐の屋敷へ集まった友人達。しかし遅れてきた大佐の娘が連れてきた“招かれざる客”の所為で休暇は台無しになってしまった。そしてクリスマスの翌朝、その客は密室状態の屋根裏部屋で殺された。吹雪で屋敷に閉じ込められ警察とも連絡がとれない中、執事の提案で数マイル離れた隣人・元警部のトラブショウを呼ぶことになり…



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