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[創作篇]

・金口の巻煙草:一高の学生・木野さんは深夜にならないと勉強出来ない性質だった。木野さんが布団に寝そべり本を開いていると、同室の順さんが帰ってきた。順さんは、銅山工夫として売り飛ばされた十五歳の少年を救うべく、木野さんのマントとお金を貸して欲しいと頼んだのだった…
→デビュー作。

・三時間の悪魔:猪狩周六は、元来温和(おとな)しくて非常な謙遜家で無口で内気でハニカミ屋で、学生時代には聖人という渾名で呼ばれたくらいの律義者である。その彼が会社の金を盗んでやろうというのは、昼間見た光景にあった…
→身の丈に合わない行動はしてはいけない。

・嘘つきアパート:栄子は二人の結婚を認めてもらえるよう親兄弟を説得する為郷里へ帰る恋人の為に愛人の真木からお金を借りた。恋人が出発してからアパートへ帰ると、真木が来ていて、隣に住んでいた夫婦が「ここのアパートは、嘘つきばかりいる」と言って出て行ったと言う。その夜、栄子の部屋に賊が押し入り彼女は頭を殴られた。目を覚ますと、真木は殺されていて…
→栄子に全然共感出来んから苛つきながら読む…てゆーか騙されてるってモロ判りじゃんかー、マァ恋人一筋みたいな事ゆっといてしれっと愛人泊めるよう女だからな…

・鉄の舌:高校受験を失敗し、四度目の試験を受ける悌一。今度は出来の良い弟も試験を受けるので失敗は許されない。しかし、
→読めんかった諦めた。

・悪女:高見澤夫婦の下で働く女中・伊勢は非常によく働き主人からの信頼も篤かったが、夫婦になにか不幸な事がおこって二人が困ったり悲しんだり苦しがったりするところを見たいと思う変態的なところがあった。ある日、夫人と二人で留守を守っていると強盗が押し入ってきて…
→本質を見抜けなかった人々の悲劇的喜劇。

・親友:私が差配する長屋に住む遠山と毛呂は性格が全然違うが親友同士だった。しかし遠山は毛呂を殺害する方法ばかりを考えており、将棋をさしながら今日も私に毛呂を殺すにはどうしたらよいかなどと言い出すのだった…
→これは犯人が判り過ぎるし動機も明確。(以下ネタバレ反転)というか、まだ物心付いてないからって一番下の子がいる中自殺出来るとは到底思えない。我が子を愛しているなら自殺を躊躇う要因となり得るし、例え父親の血の中で遊んでいた記憶が残っていなくても(精神的)成長に何らかの影響を及ぼしかねない。本人ではなく心無い第三者がその事実を漏らさないとは限らない。でもまぁ、嫁に逃げられた事で憎悪の対象を子どもらに投影していたのかもしれないが…(反転終わり)。最後の最後はまぁハッピィエンドとも言えなくはない…のか…??

・欠伸する悪魔:病院にやってきた比留根(ひるね)市助は、家で妻が殺されているから院長に来て欲しいと言い出した。妻が殺されたというのにひどく落ち着きやたら欠伸をする比留根に疑いがかかり逮捕されたが積極的な動機は見付からなかった。一審で有罪、二審で無罪になったが、上告され大審院で太田原検事が係検事をする事になった。大審院で有罪になった比留根は無実の訴えと太田原検事への恨みを綴った遺書を残し自殺した…
→宇陀児の作品傾向の所為で太田原家に襲い掛かる悲劇を想像して恐る恐る読み進めてしまったー!あと、比留根の性格を考慮すると自殺するとは考えられなくて引っかかる…(ネタバレ反転)そもそも、秘密を握られてよく七年も行動に移さなかったなと…嫁の方も何故七年も一緒に生活してたんだ…共にいようが別れようが殺されるリスクは同じの筈。殺人を犯した事実よりも愛情の方が勝っていたというのか…理解に苦しむ(反転終わり)。

・祖母:由子刀自の喜寿の祝いをするに当たって、刀自からの要望は 一、祝いの席へは子供達とその孫達のみ参加すること 二、浅草の料亭「花広」でやること 三、偽名を使って予約すること という不可思議なものだった…
→「日常の謎」に近いものを感じる。でも、これ結構好き。オチが書かれた時代を物語っている。

・宇宙船の情熱:鉄郎があたしを残して死んでしまった…亡骸を手放したくないあたしは、鉄郎の死を秘密にすることにした…
→エスエフ系ミステリ。ガンマ線がドウコウとかよく判らん単語が飛び交うけど楽しく(?)読める。うーんさらっと伏線張ってあったのかー…


[随筆篇]

処女作の思出/探偵読本(巻一 第二課)/〈「魔人」論争〉探偵小説はこれからだ 甲賀三郎  探偵小説の型を破れ 大下宇陀児/ジャガ芋の弁/〈馬の角論争〉探偵小説の話 甲賀三郎  探偵小説の批評について 大下宇陀児  ショート・ストーリイの芸術味 甲賀三郎/探偵小説不自然論/ルパンと探偵小説的よさ(探偵小説問答)/鉄骨のはなし/処女作の思ひ出/作中人物/後記(『推理小説叢書2/鉄の舌』)/探偵小説の目やす/個性と探偵小説/自分を追想する―馬の角の回想/論なき理論
論争系の随筆は読むには読むけどあまり内容を理解していない(文学の定義を判っていない事も原因かと…あと、文学を大して高等なものだと思ってないのもあるのかもしれない)けど、甲賀・大下論争は、つまり、「日常の謎」系統はミステリに入るか否かってゆう議論なのかなと感じたのだけど…ドウなんじゃろ??
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「ベナレスへの道」で劇的な退場をしたヘンリー・ポジオリ教授が何の説明もなくしらっと再登場。ポジオリシリーズを気に入っていたエラリー・クイーンが新作を依頼して復活させたんだって。
・パンパタールの真珠:マルガリータ島の町・パンパタールで出会った真珠に対する執着が強いゲレマン夫人。彼女の夫が勤める真珠養殖場から真珠が一粒盗まれてしまい…
→1929年発表。心理学と心霊学をごっちゃにする夫人の思い込みが凄い。犯人を庇ってんのか黒幕なのか判然としないままだけど、あの執着ぶりからすると黒幕であっても可笑しくはないかと…

・つきまとう影:オハイオ州立大学犯罪心理学講師を免職されてしまったポジオリ。その原因は、彼が関わった事件を経て発表された論文だった――。かつて助手を務めていたある奇術師から命を狙われていると訴えるモーダック。姿を見せない奇術師だが、モーダックの周辺では様々な事が起こり、ついには死者が出てしまい…
→1930年発表。こんなん、何で気付かへんのやーーー!とやきもきしながら読む。因みに、科学と宗教の問題は、当時アメリカで一番アツい話題だったそうな。

・チン・リーの復活:エヴァグレーズ製材所の所長宅に招待されたポジオリ。朝食の席で、製材所の厨房で働く中国人のチン・リーが埠頭で殺されているとの知らせを受けた。現場に駆けつけたが、そこには死体は無く、調理場に行くと死んだ筈のチン・リーが現れて…
→1932年発表。チェスタトン的。

・銃弾:フロリダ州の雑貨店で鼻つまみ者の男が射殺された。容疑者の一人・スルーフットの母親から依頼を受け現場へやってきたポジオリだが、陪審員たちはスルーフットが犯人だと決め付けていた。陪審員の誰かが、お人好しのスルーフットを金で雇って撃たせたと皆考えていたのだ…
→1932年発表。黒人差別がすごいぞ。そうゆう時代に社会的弱者も手を差し伸べるポジオリ。でもやっぱ判決は差別がすごいぞ。

・海外電報:マイアミの税関から海外電報を解読できないという電話を受け、スタノップ号へやってきたポジオリ。船室番号36-Bの乗客がダイヤモンドを密輸しているという電報らしいが、意味が判らない単語も混じっているという。乗客の手荷物検査に立ち会うポジオリだが、その乗客に見覚えがあり…
→1932年発表。「亡命者たち」に登場した元独裁者再登場!

・ピンクの柱廊:父親が助けを求める夢を見た、という娘。父親は深夜にスピードボードで出て行ったきり行方不明になっていた…
→1933年発表。土地買ってお金持ちになってバブル崩壊して生活が一転しちゃったパパの話…

・プライベート・ジャングル:タンパから南へ向う列車で新婚夫婦と同席になったポジオリ。新妻は、夫の祖父が海賊だったという噂に心を痛めており、ポジオリに祖父が海賊ではなかった事を証明して欲しいと頼む。ところが、夫は彼女が命を狙われているとポジオリにこっそり伝えた。新妻の従兄もまた、彼女の夫が彼女の命を狙っていると言う…
→1933年発表。出入り口を見張られた部屋にいた人物にどうやって毒を飲ませたか…という問題。

・尾行:神経過敏症と鬱病の治療にやってきた銀行員から尾行されているという相談を受け、彼のアパートにやってきたポジオリ。銀行員は幼馴染の女性が不幸な結婚をして療養所に入れられている事を知り、タクシーで連れ出すが、車を離れた隙に居なくなってしまったというが、ポジオリは銀行員の話に嘘が混じっていると推理する…
→1934年発表。銀行員との会話(と、召喚状)からある犯罪を暴く精神科医のポジオリ氏(今回は肩書きが「(犯罪)心理学者」ではなくなっている)。他のポジオリより賢そうだ!この短篇集の中では一番面白いと思います。

・新聞:姿を消したサンチェス博士を追うポジオリと関税検査官。探偵志願のタクシー運転手と共に潜伏先のホテルへ向うが、既に逃亡したあとだった。部屋に残された手掛かりから浮かび上がった女性の経営するもぐりの酒場へ乗り込んだ三人だが、麻薬の隠し場所が判らなければ逮捕は出来ない。サンチェスもその場にいるのに手が出せない状況でポジオリは…
→1935年発表。「海外電報」の続編。推理小説愛好家で探偵志望の運転手がいい味だしてる。
北大路魯山人/織部という陶器

ギ・ド・モーパッサン/墓(秋田滋訳)、糸くず(国木田独歩訳)

ビョルンステェルネ・ビョルンソン/鷲の巣(宮原晃一郎訳)

平林初之輔/ルヴエルの『夜鳥』、二人の盲人、角田喜久雄「肉」

宮武外骨(みやたけがいこつ)/骨董品化した古珍書

江戸川乱歩/人でなしの恋
グラン・ギニョール:ルイーズとの結婚を間近に控えたサリニー公爵のもとにルイーズの元夫から殺人予告状が届く。結婚式を終えた夜、サリニー公爵は首を切断されて殺されてしまう…
→『夜歩く』の元になった中編。サブタイトル「十部構成のミステリー パリ警察長官ムッシュー・アンリ・バンコラン演出による舞台公演」。バンコランが予審判事じゃない…!『夜歩く』にはなかった心理実験で犯人を追い詰める…!うおおお…!活字になった作品で最初に「読者への挑戦状」が付けられたものなんだってー。EQが最初じゃあなかったんだねー。

悪魔の銃:アンストラザとその友人・ノエルはシベリア西部にノエルの父親を探しに行った。そこで見た、不気味な出来事…
→怪奇譚。

薄闇の女神:戦争に敗れナポレオンはエルバ島に流されブルボン家に支配されたフランス。フランス軍の騎士・レティフはスペインでロドリゴという騎士に出会う。彼から美しい女剣士を紹介されたレティフは、彼女と決闘する事になってしまい…
→歴史ロマンス。女いやなやつだなー…

ハーレム・スカーレム:クラブきっての大ぼら吹きのアイヴズが語った冒険譚…
→カレッジ時代の作品を書き直したショートショート。短いながらも見事などんでん返し^^



地上最高のゲーム:カーによるミステリに関するエッセイ。『エラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジン』に半分だけ掲載されたものの完全版!カーのミステリ愛が詰まってるー!!
[創作篇]

・女優の失踪:知り合いの女優が誘拐されてしまった。彼女が誘拐されたのは、隼がそれまでいた劇団を辞めて新しい劇団に入るよう進めた一月後の事だった…


・ボーナス狂繰曲:1933年、日本が戦争へと向っている頃、隼は男装して公園の枯れ草の上に寝転んでいた。そこへ一組の男女がやってきて、女の父親が経営する会社に勤める男が明日配られる予定のボーナスが盗まれた話を始める。男は社長にボーナスを取り返したら娘との結婚を承諾してくれと迫ったが、やってきた刑事に侮辱され追い出されてしまったと言う。それを聞いた隼は…

・当世やくざ渡世:隼の妹である為に就職を断られてばかりいる千代子。「私立探偵の助手になりたい」と言う千代子に、隼は「探偵助手募集」の張り紙を見たと教える。探偵助手の職を得た千代子の元に、早速人探しの依頼が舞い込んできた…

・白旗重三郎が凄がった話:三人の男を手玉にとるもの凄い女の話。
→隼による前田良白「回想録」に出ている話。というふれこみだが、どうやら与太らしい。

・隼銃後の巻:乾児の由公の元に召集状が届いた。掏摸から足を洗い真面目に働いていた由公だが、事ある毎に高山刑事がやってくるので職場では白い目で見られており、見送りには昔の仲間しか来ないと言う。翌日、由公を見送る為外出した隼だが、高山刑事に付きまとわれ…
→隼シリーズ最終話。お調子者の由公が戦争に行ってしまうの悲しくなるね…高山刑事の粋なはからい…そして隼らしい最後。

以下三作品はノンシリーズ。

・盗まれた首飾:かるた会の最中に片瀬伯爵令嬢・綾子の首飾りが盗まれた。警察が調べたが首飾りは発見されず、翌日も伯爵家総出で首飾りを探した。綾子が期待せず台所の紙屑籠をひっくり返すと、新聞紙などと共に桃色のレターペーパーを発見して…
→少女雑誌に掲載されたので、少女探偵。これに出てくる兼吉とお君って、やっぱ隼組の二人だよね^^

・当世(モダン)内助読本:サラリーマン、社長の愛人と仲良くなって馘首になるかもしれないの巻。
→サラリーマン社会のユーモアミステリ。

・或る成功者の告白:落ちぶれた男爵家の一粒種がいかに成功者と呼ばれるようになったのか。
→片山秀名義。

〈梅由兵衛(うめのよしべえ)捕物噺〉
1955年、突如発表された捕物シリーズ。深川材木屋の主人・由兵衛と贔屓の仲町芸者の梅吉、黒江町の親分こと喜久三

・ゆきうさぎ:ある大名が所有する珊瑚珠が紛失した。奥方は伽を勤めた女に遣ったのだろうと問いただすが、殿様は盗賊が入ったと言う。本当は盗賊など入ってはいないのだが、殿様には奥方に言えない秘密があり…
→大名わるいやつだなぁ^^というか毎晩夜伽必要って奥方にもばれているのに春画は持っているのばれちゃいけないのか…ふしぎ…

・恩讎(おんしゅう)畜生道:十六の時勘当された長男が十年ぶりに帰ってきた。その間に一家は父親を喪い、店も潰れて母親は目が見えなくなっていた。八つ下の妹・お君が針仕事をして家計を支えている状況だった。戻った長男は亡くなった父の友人・由兵衛の元で働くようになり…
→「母親の目が見えない」時点で話の流れは読めてしまうけど、良いオチだった。人情物。

・由兵衛黒星:喜久三がライバル視している丈五郎が、江戸を騒がせている強盗を捕まえた。捕まった強盗は、梅吉の同業・初次の兄だった。その日初次は不思議な客から呼び出され…
→おお、どんでんがえし(?)

・恐妻家御中:屑六と同じ長屋に住む与太郎は掻っ払いであるらしいが義賊である事から人気者だった。ぼんやりものの屑六は妻から「与太郎の弟子になれ」と言われ与太郎の仕事振りを観察する事になるが…
→大団円。しかし案外屑六がいい奴で好感が持てる。いや、自分の旦那だったら絶対嫌だけど。

・心中片割月:由兵衛が親類同様に付き合っている庄兵衛の次男が死んだという知らせを受けた。事故死のようだが、持たせた二十両が見付かっていなかった。そこへ現れた喜久三によると、首を絞められて殺されており、また、最近従来の人から腕づくで略奪する泥棒の一団があるという…
→百本杭に落ちた時の死体の格好??それはさておき、死体無き死ってのはアレしかないのでマァ、ねぇ…

・新版鸚鵡石:人気役者が殺害された。強盗の仕業と思われたが、手柄を挙げたい喜久三は役者宅へ聞き込みに向った。家人六人は無罪と判り、容疑者は人気を取られた師匠と妻を寝取られたと世間で噂される検校の二人に絞られた…
→はじめにタイトルに意味あるんやで…という注意書きがあって、確かにタイトルは良いけど、やっぱ現在ではたいしたトリックじゃないから勿体無い感じする。

・相馬の檜山:由兵衛の伯父から相馬の地所に家を建てたいと依頼を受けた棟梁。相馬へ戻るのは二三日後で暇潰しに賭場へ案内させた伯父だったが、五百両も負けてしまった。実は、棟梁は賭場の者とぐるになっていかさま博打で客から金を巻き上げていたのだったが…
→ふふふ…隼の姐さんを髣髴とさせるネタです。

[随筆篇]

愚談/丹那盆地の断層/探偵作家と殺人――考へるだけでも凄いわ/処女作の思ひ出/当世百戦術――簡易貯金術/マイクロフォン/アンケート
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寝ても覚めてもミステリが好き。最近はもっぱら「探偵小説」ブームで新しい作家さんを良く知らない。
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