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1920年発表。
・大公殿下の紅茶/父の不在中に、ボヘミア王朝の王位継承者であるモーリス大公が事故にあったと連絡を受け往診へ向かったレジナルド・フォーチュン医師は、屋敷近くの側溝に大公と体格が似ている男の死体を発見する。モーリス大公は、右後方から車に轢かれたと考えられたが、仰向けで倒れていたという。更に、胸にはハットピンが刺さっていた…
→巻き込まれ型フォーチュン氏最初の事件。ここで有力な警察関係者(CIDのローマス部長とその部下ベル警視)と知り合いになるのね。国際問題に発展しかねぬ事件であるが故、警察は手をこまねくが、無関係な男の死がフォーチュンの「正義」に火を付け凄い結末に…カーのバンコラン味があって、私は嫌いじゃあないよ。
・付き人は眠っていた/フォーチュンの患者である女優が殺され、現場には被害者の付き人が眠っていた。目覚めた彼女は女優の死体を見るや「わたしが殺した」と言って気を失ったという…
→状況証拠が揃い過ぎた殺人に、想像力の乏しい警察官は付き人を逮捕するが、そんな簡単な話じゃないワケで…レジ―は新たに弁護士のゴートンを仲間にした!
・気立てのいい娘/鉱山王が拳銃で撃たれ死亡した。死体の顔面は石のようなもので殴打され、右手親指は捻挫していた。容疑者として拘留されたのは、フォーチュンが以前勤めていた病院に勤務していた看護婦の婚約者だった…
→したたかァ…!!
・ある賭け/フォーチュンの旧友が突然やってきて助けを求めてきた。旧友は父と仲違いし家を出ており、後に妻となったイタリア人女性から父親と和解するよう勧められ手紙を出すと、父が彼の家へ訪ねてくるようになった。父親は彼の家を出てすぐの場所でイタリア製のナイフによって刺殺された為、旧友と妻に嫌疑が掛かっているのだった…
→読んでて、全然タイトルにある「賭け」が出てこんなァと思ったら…オリジナルタイトルのままで良かったのに。
・ホッテントッド・ヴィーナス/ローマスの妹が経営する女学校で不思議な事件が起きた。気が進まないまま学校を訪ねると、生徒の部屋が荒らされ生徒たちが写った多量の写真が盗まれたのだという。更に、最近入学した生徒の父親が様子を見に来た翌日、図書館に落ちていた校内へ持ち込み禁止の人形―ーホッテントッド・ヴィーナスに興味を持ったフォーチュンは事件の調査に乗り出す…
→ちょっと冒険色のある話。男女の仲ってのは他人からは推し量れんもんやね…
・几帳面な殺人/フォーチュンが休暇から戻ると、待っていたのは青白く困り果てた顔をしたローマスだった。数カ月前に発足した新内閣の、州ごとに炭坑を国営化するという計画の情報が関係者によって横流しされ、特定の石炭会社の株を買い漁る者たちが現れたのだという。その会社名を知っているのは財界から内閣入りした男とその秘書だけだった。翌日、秘書の預金口座匿名で三千ポンドが振り込まれた事が判明し、更に顔を滅茶苦茶に潰された男の死体が発見された…
→強烈すぎる犯人の動機…完璧な犯行の為にあらゆる犠牲を厭わない、悪魔的な情熱よ…

ところで、レジ―が度々「二、三個のマフィンと紅茶」を嗜むシーンがあるのでつい私もマフィン食べたくなって買っちゃったよ…
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久し振りに上野先生の本を読んだ。
昨年出版されたものだから、上野先生、90歳かァ…精力的だなァ…
情報のアップデートを怠っておったので、横浜市の監察医制度が廃止されていた事を知らなかった…お金の問題もあるけど、人手不足ってのも大きな要因ですな。
上野先生の本を読むと死について考えさせられる…病死、自死、事故死、他殺…正しく死の真相を見極めてくれる監察医あるいは検視官が増えないと、犯罪を見過ごす事になりかねないってのが怖いな…本当は、犯罪による死がなくなる事が一番良いのだけれども…
新聞、雑誌に自然や園芸のコラムを寄稿している著者の、身近なやべー植物(菌類含む)の本。
有毒植物はもちろん、食虫植物、寄生植物、悪臭を放つ植物、異常な繁殖力で他の生物を排除する植物、獰猛なアリを護身用に飼う植物などなど。
やべー外来植物を根絶やしにする為に天敵である外来生物を輸入しようって発想は怖いな…生態系壊して更にそれを壊す為にもっと壊すってゆう悪循環よ…

あと、有毒植物の植物園が海外にはあるんだね興味深い…入園には結構な覚悟を持って行かねばならなさそうだ…
・ジョン・ディクスン・カーを読んだ男/十二歳の時にジョン・ディクスン・カーを読んだエドガー・ゴールド。それから十年、すべてのカー作品を読んだ彼はいつかカーすらも困惑させる密室殺人をやってのける決意をする…
→完全犯罪を目論む犯人に、思いがけないアクシデントは付き物だが…これはヒドイ^^
・エラリー・クイーンを読んだ男/グッドウェル老人ホームの住人たちは私物を一つだけ持ち込む事が許されていた。アーサー・ミンディーが持ち込んだのは、エラリー・クイーンの本ひと揃いだった。アーサーは、エラリーのように謎を解明してみたいと思っていた。そこへ、住人の私物の盗難事件が起こり…
→犯行の裏には孤独と悲しみが。老人ホームって、死を待つ人々の住処ってイメージを持ってるんだけど、彼らの新たな温かい交流に思わずホロリとした。
・レックス・スタウトを読んだ女/巡回ショーの一員である「デブ女」のガードルード・ジェスリンは、座長の「デブ女がネロ・ウルフを読んでいたら面白いだろう」という思い付きでレックス・スタウトの本を読まされた。以来、彼女はネロ・ウルフ物の読破にかかり、行動もウルフを髣髴とさせるようになった。ある日、ガードが娘のように思っている蛇使いのリリが殺されると、彼女は犯罪現場の状況を聞き、一時間以内に一座の者を自分のテントに集めるよう指示する。ガードは、誰がリリを殺したのか話してやると言うのだが…
→安楽椅子探偵。
・アガサ・クリスティーを読んだ少年/ラーキンズ・コーナーズにやってきたおかしな若者たち――薬局で剃刀を購入した若者は髭を剃り始め、金物店ではバケツとモップを購入した若者が店内を掃除し始め、食料品店では商品を移動させる者とそれをもとの場所に戻す者――が現れた。警察官のマックスの執務室に若者たちに対する通報の電話がなり始めた頃、そこへ遊びに来ていたベルギーの交換留学生ジャック・デュモンドがマックスと共に店主たちの話を聞く事になった…
→ポワロにハマったボーイ、おかしな若者たちの計画を見破るの段。大人顔負け(彼は英語を流暢に話し高校上級レベルの勉強もこなす十歳の少年なのだ!)の推理力だけど、「めくらまし」を「めごまかし」と言っちゃうとかポワロの真似をして口髭をひねる仕草をするとか、可愛いね。
・コナン・ドイルを読んだ男/テレンス・ワトスンの元に大学時代の旧友から手紙が届いた。しかし差出人は大学で会っていたかもしれないが友人ではなかった。手紙は、某国の大使館にスパイとして侵入している者からの暗号になっており、暗号を解く鍵はシャーロック・ホームズが関係しているようだが…
→暗号を解く為に四人の男がひたすらホームズ本を読む話。暗号、全然意味判らんくて三回読んだ…そうゆう事かァ…
・G・K・チェスタトンを読んだ男/ポルノ写真を売買した罪の意識に耐えられず自殺したとされる男に塗油を施すのを拒否するゴガティー尊師を説得する為、ケニー神父は事件を調査する事になった。起源はたった一日だが、自殺ではない証拠が見付けられるのだろうか…
→おお…鮮やかな逆転…オチでドヤる姿が目に浮かぶ。
・ダシール・ハメットを読んだ男/公立図書館で書架係に再就職した老人・プリチャードは、ミステリ愛好家である事から図書館局の局長と探偵小説の初版コレクターに会う事になった。コレクターは、図書館内に『マルタの鷹』初版本を隠したと言い、一時間以内に見付ける事が出来たら希少なコレクション五百冊を寄贈すると持ち掛ける。プリチャードは局長の助手として隠し場所を示した暗号の解読に挑む事になった…
→この話好き。「エラリー~」の話もだけど、老いてあとは死を待つのみ、みたいな人の(オーバーな言い方だけど)能力が認知されて脚光を浴びる、的な展開ムネアツだよね…BBAだから感傷的になってんだろうか…
・ジョルジュ・シムノンを読んだ男/美術品を運送するバーニーとハロルド。「派手なカウボーイブーツ」が目印だというスコフィールドが待つ屋敷に荷物を運ぶが、ペンキが塗りかけの壁を見てバーニーは不審に思う…
→状況と人間観察で、起こった事を推測し解決に導くのは気持ちいいね。シムノン読んでみようかな…
・ジョン・クリーシーを読んだ少女/サッカーくじを当てた英国人がニューヨークのホテルで殺された。死の間際に「オル・フィッシン」と呟いたという。事件を担当するエミールは、容疑者を三人に絞り込むが、三人共「フィッシン」に関連がある為誰が犯人か判らずにいた。娘のマリリーにせがまれ事件の話をすると…
→ダイイングメッセージネタ。晩御飯中の会話なので母親が「殺人の話はやめて」「教育に悪い」と注意するが娘はノリノリ。しかもクリーシーの本で仕入れたイギリスの情報のみで事件を解決しちゃう。探偵になりたいって言いだしそうだなー。
・アイザック・アシモフを読んだ男たち/タイムズ・ヘラルドの記者ヴァーゼーは、ヴァリュー・トゥデー百貨店で行われている販促キャンペーン――〇から九十九までの五つの数字の組み合わせで開く金庫の扉を開ける事が出来た人間に中に入れておいた千ドル紙幣をプレゼントする――についての記事を書く為にやって来た。〈黒後家蜘蛛の会〉愛読者四人が集まるメリー・ティンカー亭にて金庫の正しいダイヤルの組み合わせを推理する事になり…
→本家同様、おいしいところは〈黒後家蜘蛛の会〉第五のメンバーが全部持っていって、更に楽しいオチがついててにやにやした。
・読まなかった男/モンティの家にフォードがコンクリートブロックを車で運んできた。暗室にしようと造らせた小部屋に、手違いで余計なドアを付けられた為、ブロックでドアを塞ごうというのだ。酒を飲みながら作業を始めたフォードに対し、モンティは彼が事故死させたヘレンの話を聞くのだった…
→ミステリを読んでいない男の話。
・ザレツキーの鎖/対立する二人を招いて、彼らが罵り合い殴り合う様を観察して楽しむのが趣味のグローシャーに呼び出されたマジシャンのレンと私立探偵のベドロー。レンは脱出マジック専門のマジシャンだが、窃盗犯の疑いがかけられている。ベドローはレンを執拗に追う警部補だったが、レンに関するある一件でしくじり職を失ったのだった。グローシャーは、レンに「ザレツキーの鎖」からの脱出を依頼し、ベドローにはレンが脱出に成功したのなら、どのように脱出したのかを解明するよう依頼する…
→ザレツキーの鎖とは、アントン・ザレツキーが最も得意としていた脱出マジックの事らしい。レンが脱出を試みる間、グローシャーとベドロー(と、使用人)は別室にいるが、その間に金庫の中身が盗まれてしまう。脱出に成功したレンが盗んだと思われたが、レンは脱出に失敗しその場から一歩も動いていないという状況(ネタバレ反転)いがみ合う二人だが、真実と正義を貫くベドローが真相に至り、レンが彼を助けて借りを返すとか、ムネアツ…少年漫画かよ…(反転終わり)読後感も良いし、好き。
・うそつき/病原体に対するワクチンなどの研究をする第二十七国立生物研究所の保安課長ワトキンズ少佐の元に文書係のオーガスティンがやって来て仕事から外して欲しいと訴えた。この数日の間におかしな事が続いて頭がおかしくなったのではないかと自身を疑っており、研究所に迷惑をかけたくないのだと言う。事の発端は、飼っていたカナリアの死――鍵を付けた鎖で縊り殺されたマーレ―の死だった…
→オーガスティンがとんでもない嘘を吐いているのか、それなら何のメリットがあって嘘を吐くのか…という疑惑から一転、ワトキンズ少佐が「何が起きたのか」「何が起こるのか」をじわじわ解明していく。
・プラット街イレギュラーズ/警察の干渉を受けるのを嫌うプラット街。ここでは住人たちが自ら法律の執行を行っていた為、犯罪とは無縁の街だった。ところが、質店で盗難未遂事件が起き、店主が警察に通報すると主張する。騒ぎを聞いて集まってきたジェイク、ファーバー、バルヴィーニ未亡人の三人は自分たちで事件を解決しようと提案する。「ベイカー・ストリート・イレギュラーズ」のように…
→いい話。

この短編集はオチがほっこりしたりホロリとする話ばかりなので安心して読めるね。マァ、私は「探偵気取りが足元を掬われ道化になるネタがある筈…!」と警戒しながら全編読んでしまった心の穢れたミスおたでしたが…
日本で多分唯一の法昆虫学者の著書。
自虐的なコメントも多くて面白く読める。ちゃんと真面目に法昆虫学の仕事内容も書かれてるし。
それにしても日本で初めて法昆虫学を取り入れた(?)岩手県警は凄いなぁ…

むかーし、『死体につく虫が犯人を告げる』ってゆうアメリカの法医昆虫学の本を読んだ時は「法医昆虫学ってめちゃんこ可能性がある学問じゃん…!」みたいな事感じたようだけど、あれは法医昆虫学先進国であるアメリカだからってのがあったみたい。データは確実に蓄積されているし、死体農場(人の死体を放置して季節や気候・環境によって死体の状態がどう移行するか、虫はどのタイミングでどんな種類のものが死体につくかの実験する場所)の範囲も広大だし何より献体する人が多いから研究進んでるんだろうなぁ…
それに比べると、日本は北と南で気温差があるし何よりそういった実験に対する嫌悪感があるからなかなか…献体する人も少ないだろうし(これは日本人の生死観にも関係するんだろうな…自宅の布団で死んで先祖代々の墓に入れられたい願望)
著者の研究とデータが無駄にならないよう、日本でも法昆虫学の認知度や有用性が広まると良いね。
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寝ても覚めてもミステリが好き。最近はもっぱら「探偵小説」ブームで新しい作家さんを良く知らない。
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