[創作篇]
・火の女神(セ・カカムイ):考古学者と助手は、アイヌの偶像・火の女神を譲り受ける為、ある集落を訪れる。しかし、火の女神は何者かに盗まれ…
→1871年以来、アイヌの風俗習慣を禁ずる布達があり、1923年にアイヌ出身の知里幸恵がまとめた『アイヌ神謡集』の序文からすると、「火の女神」が書かれた1939年にはアイヌの和人化政策がかなりすすんでいたと考えられるので、この作品に描かれたアイヌは存在しなかった可能性が高いらしい。
・馬鹿為の復讐:北星漁業の蟹工船に乗る馬鹿為は、難破した水産講習所の練習生が漁業監督のリンチに合い海に捨てられるのを目撃する。その後、無電が破壊され技師が遺書を残して失踪してしまう。更に事務長が不審死を遂げ…
→ご都合主義な流れだけど大団円で良い。
・旅行蜘蛛:苦行の為、廟堂に閉じ籠もっていた将軍が怪死する。更に貴陽都督とその第七夫人までもが謎の死を遂げ…
→こんな上手くいくのかしら。標的だってじっこしてる訳じゃあなかろうに。
・鴟梟(しきょう)の家:中国人家庭で起きた連続不審死。長男、次男、そして妹の家庭教師が命を落とした怪事は殺人なのではないかと疑う三男の孔令愷(コウレイガイ)。彼に大陸探偵として売り出し中の牧原一郎を紹介した西崎は、令愷と共に孔家へ訪れた…
→海野十三みあるトリックだ。牧原&西崎でシリーズ書けば良かったのにナァ。それにしてもあの二人に寛大な処置は出来んのではなかろうか…あの一件は絶対子どもごと抹殺する為積極的に協力してたと思うぞ…
・聖汗山(ウルゲ)の悲歌:私の甥・香坂淳一から送られた手紙――天山北路の偏狭での任務を終えた彼は、途中で知り合ったモンゴル人青年に勧められてラマ教大本山である聖汗山で行われる競馬に参加する事になった。道中親しくなったモンゴル人の娘は、生き別れた父である聖汗山の活仏に会う為に来たと言う…
→代表作とされる一遍。意外な人物の意外な正体(ややご都合主義か)や恋の意外な結末でちょっとほろ苦い終わり方。しかしマァ世相的に賛美される日本男児像って感じだな。
・彗星:日本人を母に持つ洪潔明(ホンチェンミン)は、抗日戦を忌避する為に空軍少壮士官から雑軍の一兵士に零落していた。米英を倒す時機を窺っていた洪だが、米空軍のアラン大尉からスパイの疑いをかけられ窮地に陥る…
→指紋からその人の性格を診断するやつ、面白いなー(科学的根拠の無い、当時の最先端科学の話は面白い。論とか)
・ブラーマの暁:反英運動を撲滅する為、英軍警備隊と警察が包囲する中、インド人のラウラ氏が時価二千ポンドの青色ダイヤと共に失踪してしまった。その後、菩提樹の梢に死体が発見される。地上五十フィート余りの高所に担ぎ上げられた死体の頭は七色の光が輝いていた…
→いやいや、死体の移動手間かけ過ぎじゃない??マァ、動機を考えるとそれ位しちゃうんかなぁ、撓田村事件のアレと同じ動機だよね。
・ヒマラヤを越えて
→ちょっと何書いてあるのか判らなかった。冒険小説とあるけどマァ時代的に間諜小説とかそうゆうやつ。
・阿頼度(あらいと)の漁夫:アライト島で鰊漁に従事する雄吉は、かつて漁業主として顔を利かせていた宗馬家の長男だった。家運挽回の為、一漁夫として出発したが…
→こうゆうニッポンダンジが求められてたんだろうなァってゆう話だわな。時代めぇ…
・真夏の犯罪:赤沢は仕事の邪魔をする片上審査課長を抹殺すべく、殺し屋を雇った…
→死体確認にのこのこ出掛けるとか、目撃されたらドウすんだ、アリバイ作ってろよォって思ったけど、意外な展開。どーりで手間のかかる殺害方法にした訳だ…
・サブの女難
・サブとハリケン
→「地下鉄サム」を元ネタにした、地下鉄専門のスリ・サブを主人公にした作品。隼お秀の方が面白いかな…
[付録篇]
以下は中村美与子と同一人物と思われる中村美与の作品。
・獅子の爪:サーカスの猛獣使いが高額の生命保険をかけた後に突然死してしまう…
→1927年発表。
*
・火祭:連続放火事件の四件目が起きた現場に現れた民謡歌手。不審に思った刑事は職務質問をするが、五件目の犯行予告が来た事で中断を余儀なくされる。果たして、彼が放火犯なのか…
→1935年発表。科学知識がないから発火装置についてはちんぷんかんぷん(死語)だが、火と異常性欲なら判る(臨床心理学部卒)。犯人は自殺したのかと思ったけど、なかなかタフだな…
・都市の錯覚
→1936年発表のエッセイ。というかメモのような。
なかむら・みよこ(?-?)
経歴不詳。
1939年、『新青年』に短篇懸賞当選作として「火の女神」が掲載される。戦後は「真夏の犯罪」「サブの女難」「サブとハリケン」を発表したが、その後沈黙。
・火の女神(セ・カカムイ):考古学者と助手は、アイヌの偶像・火の女神を譲り受ける為、ある集落を訪れる。しかし、火の女神は何者かに盗まれ…
→1871年以来、アイヌの風俗習慣を禁ずる布達があり、1923年にアイヌ出身の知里幸恵がまとめた『アイヌ神謡集』の序文からすると、「火の女神」が書かれた1939年にはアイヌの和人化政策がかなりすすんでいたと考えられるので、この作品に描かれたアイヌは存在しなかった可能性が高いらしい。
・馬鹿為の復讐:北星漁業の蟹工船に乗る馬鹿為は、難破した水産講習所の練習生が漁業監督のリンチに合い海に捨てられるのを目撃する。その後、無電が破壊され技師が遺書を残して失踪してしまう。更に事務長が不審死を遂げ…
→ご都合主義な流れだけど大団円で良い。
・旅行蜘蛛:苦行の為、廟堂に閉じ籠もっていた将軍が怪死する。更に貴陽都督とその第七夫人までもが謎の死を遂げ…
→こんな上手くいくのかしら。標的だってじっこしてる訳じゃあなかろうに。
・鴟梟(しきょう)の家:中国人家庭で起きた連続不審死。長男、次男、そして妹の家庭教師が命を落とした怪事は殺人なのではないかと疑う三男の孔令愷(コウレイガイ)。彼に大陸探偵として売り出し中の牧原一郎を紹介した西崎は、令愷と共に孔家へ訪れた…
→海野十三みあるトリックだ。牧原&西崎でシリーズ書けば良かったのにナァ。それにしてもあの二人に寛大な処置は出来んのではなかろうか…あの一件は絶対子どもごと抹殺する為積極的に協力してたと思うぞ…
・聖汗山(ウルゲ)の悲歌:私の甥・香坂淳一から送られた手紙――天山北路の偏狭での任務を終えた彼は、途中で知り合ったモンゴル人青年に勧められてラマ教大本山である聖汗山で行われる競馬に参加する事になった。道中親しくなったモンゴル人の娘は、生き別れた父である聖汗山の活仏に会う為に来たと言う…
→代表作とされる一遍。意外な人物の意外な正体(ややご都合主義か)や恋の意外な結末でちょっとほろ苦い終わり方。しかしマァ世相的に賛美される日本男児像って感じだな。
・彗星:日本人を母に持つ洪潔明(ホンチェンミン)は、抗日戦を忌避する為に空軍少壮士官から雑軍の一兵士に零落していた。米英を倒す時機を窺っていた洪だが、米空軍のアラン大尉からスパイの疑いをかけられ窮地に陥る…
→指紋からその人の性格を診断するやつ、面白いなー(科学的根拠の無い、当時の最先端科学の話は面白い。論とか)
・ブラーマの暁:反英運動を撲滅する為、英軍警備隊と警察が包囲する中、インド人のラウラ氏が時価二千ポンドの青色ダイヤと共に失踪してしまった。その後、菩提樹の梢に死体が発見される。地上五十フィート余りの高所に担ぎ上げられた死体の頭は七色の光が輝いていた…
→いやいや、死体の移動手間かけ過ぎじゃない??マァ、動機を考えるとそれ位しちゃうんかなぁ、撓田村事件のアレと同じ動機だよね。
・ヒマラヤを越えて
→ちょっと何書いてあるのか判らなかった。冒険小説とあるけどマァ時代的に間諜小説とかそうゆうやつ。
・阿頼度(あらいと)の漁夫:アライト島で鰊漁に従事する雄吉は、かつて漁業主として顔を利かせていた宗馬家の長男だった。家運挽回の為、一漁夫として出発したが…
→こうゆうニッポンダンジが求められてたんだろうなァってゆう話だわな。時代めぇ…
・真夏の犯罪:赤沢は仕事の邪魔をする片上審査課長を抹殺すべく、殺し屋を雇った…
→死体確認にのこのこ出掛けるとか、目撃されたらドウすんだ、アリバイ作ってろよォって思ったけど、意外な展開。どーりで手間のかかる殺害方法にした訳だ…
・サブの女難
・サブとハリケン
→「地下鉄サム」を元ネタにした、地下鉄専門のスリ・サブを主人公にした作品。隼お秀の方が面白いかな…
[付録篇]
以下は中村美与子と同一人物と思われる中村美与の作品。
・獅子の爪:サーカスの猛獣使いが高額の生命保険をかけた後に突然死してしまう…
→1927年発表。
*
・火祭:連続放火事件の四件目が起きた現場に現れた民謡歌手。不審に思った刑事は職務質問をするが、五件目の犯行予告が来た事で中断を余儀なくされる。果たして、彼が放火犯なのか…
→1935年発表。科学知識がないから発火装置についてはちんぷんかんぷん(死語)だが、火と異常性欲なら判る(臨床心理学部卒)。犯人は自殺したのかと思ったけど、なかなかタフだな…
・都市の錯覚
→1936年発表のエッセイ。というかメモのような。
なかむら・みよこ(?-?)
経歴不詳。
1939年、『新青年』に短篇懸賞当選作として「火の女神」が掲載される。戦後は「真夏の犯罪」「サブの女難」「サブとハリケン」を発表したが、その後沈黙。
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[創作篇]
犯罪研究家の黄木(おぎ)陽平シリーズ。「M君」と呼ばれる推理小説家が語り手。
・青い服の男:雨宿りに入ったフルーツ・パーラーにいた女が、ある事件の関係者に似ていた事から語られた、土井家で起きた殺人事件の話…
→不可解な状況にウオー!!と興奮したが、机上の空論感の強いトリックでがっかりした…でも、話としては面白いんだよなァ…推理小説に対して私がものすごく寛容になったんだなァと思う。昔だったら多分この一作を読んで即本閉じてた。
・死線の花:生物学者の丘田(おかだ)精吉は、明日戦場へ旅立つ予定だった。私は、彼が品種改良した朝顔の種子を渡され、花が咲いたら写真を送ってくれと頼まれる。その後、精吉の弟・憲二が未亡人殺しの容疑者として引致されてしまい…
→ラストの情景が哀しくも美しいよね…散る前に写真、届くといいね…
・第三の眼:元県議の後妻の怪死事件で容疑者として報道されていたのは、私の知り合いの青年だった。旅行帰りだった黄木と私は、彼の容疑を晴らす為S町で列車を降りたのだった…
→一枝までヒステリックなのメンドクセー…
・最後の烙印:黄木が犯人に敗北した事件――大勢の客がいるサロンで起きた毒殺事件。女給の話から、三年前に殺人を犯し逃走中の男が犯人だと判ったが、行方が全く掴めない。三週間後、被害者がかつて某国のスパイ嫌疑者である事が判明し…
→ふたごのべんりなりようほう。
・燻製シラノ:黄木の事務所が入っているSYビルの持ち主からの依頼――彼が経営する診療所で異母妹が何者かの悪戯で火傷を負った。医長が調べたところ、外科部の看護師が犯人らしい。彼女に診療所をやめるよう勧めると、医長とは対立関係にある外科主任に冤罪を訴えたという。仕事で九州へ行かねばならぬ黄木の代わりに、私が診療所へ調査しに行く事になってしまい…
→派閥メンドクセー…。でもマァある意味ハッピィエンド。
・孤島綺談:突然黄木から御蔵島へ海鳥見学に誘われた私。実のところ、闇ブローカーから海鳥見学へ行く義兄の甥たちを監視していて欲しいという依頼を受けた為の旅行だった。御蔵島へ向う船には鳥類研究家を名乗る男も乗船したが…
→戦後第一作。人物造詣がアカラサマ過ぎるけど、意外な展開で殺人を防げて良かったのでは??
・蜘蛛:心臓麻痺で亡くなった八代氏は、死ぬ間際に「くも、くも」と呟いたという。蜘蛛を病的に嫌っていた八代氏だったが、彼が亡くなった部屋には蜘蛛はおろか、巣すらなかった。亡くなった時に一緒にいた甥が八代氏の急死に関わっているのではないかとの疑惑がある為、八代氏の友人である北島医師が黄木に調査を頼みに来た…
→かなしい…
・幻想殺人事件 プロローグ/真夏の惨劇/怪人西へ行く/完全犯罪:黄木の事務所へ二ヶ月ほど助手として働いていた蔵人(くらんど)潜介の実家で起きた事件。黄木が解決したが、それは典型的な完全犯罪だったという…
→第一回探偵作家クラブ賞の長編候補作で横溝の『本陣殺人事件』『蝶々殺人事件』角田喜久雄の『高木家の惨劇』と共に選出されたんだって~~~。私にはちょっとしんどかったかな…長編向きの作家じゃないと思った。気になったのは(以下ネタバレ反転)15歳も離れた兄に変装って、流石にばれるんじゃあないの…??そりゃ、戸来刑事は潜介くんを知らないけどさぁ、今まで執拗に追いまわしてた男と区別つかないかなあ…15歳だよ?!潜介船乗りになって日焼けで肌年齢老けてるかも知らんけど、15歳だよ!?(反転終わり)解せん…
・灰色の犯罪:友人である雑誌編集長から依頼を受け、性格分析学者の有光博士と対談する事になった黄木。初対面を果たした黄木は、有光博士が毒殺されつつある事に気付き…
→知性に生きる男と、本能で生きる女の戦い…
・誰も知らない
→「第三の眼」の改稿で、この後黄木シリーズの執筆がないから黄木ラスト作。改稿前よりスマートな印象だし、こちらの方が(以下ネタバレ反転)被害者が発作を起こすきっかけに説得力がある。前者は単なる他人の空似だからね…(反転終わり)
[随筆篇]
たわごと(1)/たわごと(2)/暦、新らたなれど/乙女は羞らう山吹の花/アンケート
「たわごと(1)」は、幻想殺人事件について、作中のM君に語らせている作者の言葉のようなもの。
もりとも・ひさし(1903-1984)
東京都生まれ。本名・順造。
歯科医師免許取得後開業。
1939年、『名作』に「青い服の男」が掲載されてデビュー。中短篇の黄木陽平シリーズを発表してきたが、時局の変遷に伴い冒険小説や時代小説に移行。
46年「孤島綺談」で黄木陽平を復活させる。他に高沼哲医学士&唐津千吉刑事シリーズや「影ある男」シリーズを発表するが、53年「靄の中」以降執筆が途絶える。
84年死去。
犯罪研究家の黄木(おぎ)陽平シリーズ。「M君」と呼ばれる推理小説家が語り手。
・青い服の男:雨宿りに入ったフルーツ・パーラーにいた女が、ある事件の関係者に似ていた事から語られた、土井家で起きた殺人事件の話…
→不可解な状況にウオー!!と興奮したが、机上の空論感の強いトリックでがっかりした…でも、話としては面白いんだよなァ…推理小説に対して私がものすごく寛容になったんだなァと思う。昔だったら多分この一作を読んで即本閉じてた。
・死線の花:生物学者の丘田(おかだ)精吉は、明日戦場へ旅立つ予定だった。私は、彼が品種改良した朝顔の種子を渡され、花が咲いたら写真を送ってくれと頼まれる。その後、精吉の弟・憲二が未亡人殺しの容疑者として引致されてしまい…
→ラストの情景が哀しくも美しいよね…散る前に写真、届くといいね…
・第三の眼:元県議の後妻の怪死事件で容疑者として報道されていたのは、私の知り合いの青年だった。旅行帰りだった黄木と私は、彼の容疑を晴らす為S町で列車を降りたのだった…
→一枝までヒステリックなのメンドクセー…
・最後の烙印:黄木が犯人に敗北した事件――大勢の客がいるサロンで起きた毒殺事件。女給の話から、三年前に殺人を犯し逃走中の男が犯人だと判ったが、行方が全く掴めない。三週間後、被害者がかつて某国のスパイ嫌疑者である事が判明し…
→ふたごのべんりなりようほう。
・燻製シラノ:黄木の事務所が入っているSYビルの持ち主からの依頼――彼が経営する診療所で異母妹が何者かの悪戯で火傷を負った。医長が調べたところ、外科部の看護師が犯人らしい。彼女に診療所をやめるよう勧めると、医長とは対立関係にある外科主任に冤罪を訴えたという。仕事で九州へ行かねばならぬ黄木の代わりに、私が診療所へ調査しに行く事になってしまい…
→派閥メンドクセー…。でもマァある意味ハッピィエンド。
・孤島綺談:突然黄木から御蔵島へ海鳥見学に誘われた私。実のところ、闇ブローカーから海鳥見学へ行く義兄の甥たちを監視していて欲しいという依頼を受けた為の旅行だった。御蔵島へ向う船には鳥類研究家を名乗る男も乗船したが…
→戦後第一作。人物造詣がアカラサマ過ぎるけど、意外な展開で殺人を防げて良かったのでは??
・蜘蛛:心臓麻痺で亡くなった八代氏は、死ぬ間際に「くも、くも」と呟いたという。蜘蛛を病的に嫌っていた八代氏だったが、彼が亡くなった部屋には蜘蛛はおろか、巣すらなかった。亡くなった時に一緒にいた甥が八代氏の急死に関わっているのではないかとの疑惑がある為、八代氏の友人である北島医師が黄木に調査を頼みに来た…
→かなしい…
・幻想殺人事件 プロローグ/真夏の惨劇/怪人西へ行く/完全犯罪:黄木の事務所へ二ヶ月ほど助手として働いていた蔵人(くらんど)潜介の実家で起きた事件。黄木が解決したが、それは典型的な完全犯罪だったという…
→第一回探偵作家クラブ賞の長編候補作で横溝の『本陣殺人事件』『蝶々殺人事件』角田喜久雄の『高木家の惨劇』と共に選出されたんだって~~~。私にはちょっとしんどかったかな…長編向きの作家じゃないと思った。気になったのは(以下ネタバレ反転)15歳も離れた兄に変装って、流石にばれるんじゃあないの…??そりゃ、戸来刑事は潜介くんを知らないけどさぁ、今まで執拗に追いまわしてた男と区別つかないかなあ…15歳だよ?!潜介船乗りになって日焼けで肌年齢老けてるかも知らんけど、15歳だよ!?(反転終わり)解せん…
・灰色の犯罪:友人である雑誌編集長から依頼を受け、性格分析学者の有光博士と対談する事になった黄木。初対面を果たした黄木は、有光博士が毒殺されつつある事に気付き…
→知性に生きる男と、本能で生きる女の戦い…
・誰も知らない
→「第三の眼」の改稿で、この後黄木シリーズの執筆がないから黄木ラスト作。改稿前よりスマートな印象だし、こちらの方が(以下ネタバレ反転)被害者が発作を起こすきっかけに説得力がある。前者は単なる他人の空似だからね…(反転終わり)
[随筆篇]
たわごと(1)/たわごと(2)/暦、新らたなれど/乙女は羞らう山吹の花/アンケート
「たわごと(1)」は、幻想殺人事件について、作中のM君に語らせている作者の言葉のようなもの。
もりとも・ひさし(1903-1984)
東京都生まれ。本名・順造。
歯科医師免許取得後開業。
1939年、『名作』に「青い服の男」が掲載されてデビュー。中短篇の黄木陽平シリーズを発表してきたが、時局の変遷に伴い冒険小説や時代小説に移行。
46年「孤島綺談」で黄木陽平を復活させる。他に高沼哲医学士&唐津千吉刑事シリーズや「影ある男」シリーズを発表するが、53年「靄の中」以降執筆が途絶える。
84年死去。
人生初の鮎哲…二段組…
【第一部】
・白の恐怖:友人の鮎川君から私の手記を出版しないかと誘いを受けた。民事弁護士の私が係わる事になった白樺荘の事件を発表しろと言うのだ――高毛礼一(こうもれい・はじめ)氏が残した遺産を会った事のない五人の甥姪たちに分配する為、真冬の軽井沢に集まる事になった。甥姪の内、一人は戦死していた為、四人で五千万円を分ける事になったが、高毛礼家の女中と私の助手が殺害されたとの知らせがあり…
→1984年桃源社より発刊。鮎哲長編で唯一の文庫未収録作品。とても読み易かった。鮎哲は時刻表トリックが中心だと思ってたから(数字の羅列を見ると眠くなるタイプ)火サスの鬼貫警部シリーズで満足してたけど、何でもっと早く読んでなかったんだ…!
(いきなりネタバレ反転)死体発見時、丸茂君の顔を確認出来る人はいなかった筈なので、きっと替え玉だ…!と思ってたのに、アッチが入れ替わっていたのか…!眼の付け所は良かったのに(自賛)悔しい!(良い笑顔)あと、遺産の分配に関しては私も不満を覚えたので(もらえないのに…)、動機についても気付けた筈なのに…!(反転終わり)
【第二部】夜の演出
・探偵絵物語 最後の接吻/退屈なエマ子/アドバルーン殺人事件/舞踏会の盗賊/出獄第一歩/処刑の広場/激闘の島/ヨットの野獣/無人艇タラント号/九時〇七分の恐怖/湖泥のギャング/エミの復讐
→鮎哲愛好家が単行本未収録作品だけを集めて刊行した私家版。藤巻一郎、猿丸二郎、畷三郎、五反田四郎名義のローテーションで、牧村史郎という人のイラスト入り。復讐譚あり、ユーモアあり。ところで、眠らせたオッサンを女性一人で運ぶのは困難なのでは…?人目にもつくしだし…みんなグルなの?
*
・寒椿→(ネタバレ反転)色ネタには気をつけろって!ミスおたなら!なぜ!気付かなかった!!悔しい!!(反転終わり)
・黒い雌蕊→この男むかつくね…
・草が茂った頃に→ショートショート
・殺し屋ジョオ
・青いネッカチーフ→犯人当てクイズ。あからさま過ぎるヒント、いるのか…?
・お年玉を探しましょう→昭和34年1月1日に放送されたラジオドラマ。ハッピーエンド。
【第三部】海彦山彦
・海彦山彦:品行不良な双子の弟・山彦が殺されたと、兄の海彦から電話を受けた警部。山彦を恨んでいたのは女優の山吹マリ子とバーの用心棒・児島半助の二人だが…
→犯人当てクイズ。だから何でこんなあからさまな伏線とヒントを…
・遺書:伯父である音楽評論家の殺害を殺し屋に依頼した甥。殺し屋は評論家に遺書を書かせ射殺し自殺に偽装したが、報酬を受け取る場所で逮捕されてしまう…
・殺し屋の悲劇:夫の殺害を依頼され、散歩ルートで待ち伏せする殺し屋。しかしターゲットは現れず、別の男を殺した容疑で逮捕されてしまった…
・ガーゼのハンカチ:うっかり殺してしまった女の死亡時刻を偽装する事でアリバイを作った男。完全犯罪の筈が、あっさり逮捕されてしまった理由とは…
・酒場にて:Mホテルのバーで雑誌社の女性記者と待ち合わせをしているわたし。彼女は一向に来る気配がなかった。隣の席に座っていた女性が、このホテルで起きた事件について語り出した…
【第四部】
・白樺荘事件
→『白の恐怖』を改稿した未完の遺作。桃源社が三百枚位で一冊として刊行した全集用の書き下ろしだったので、登場人物も少なめで軽井沢へ行くまでも短かった分、がっつり追加されている。甥姪は九人に増えてるし、軽井沢に集まる前に事件が起きてるし(未完なので、このへんの事件が事故か他殺か死を偽装したものなのかは不明)、ついでに遺産も大幅アップ!一人五十億ですってよ!いくらだよ!?
『白の恐怖』では、佐々(さっさ)弁護士の手記だったけど、全国各地に散らばっている甥姪を探し出してきた探偵視点に変更されている(因みに、登場する弁護士も探偵も『白の恐怖』とは別人になっている)。酒と女が大好きな、女房に逃げられた貧乏探偵だよ。高毛礼一族も小森一族に名前を改められ、岡山出身となっている。そして探偵は金田一の小説を思い浮かべる(のだが、後の章では本格は読まずハードボイルドしか読まないと言っている)。
あと、『白の恐怖』では嫌な奴としょうもない奴しかいなかった甥姪は、それぞれ個性的かつどこか憎めないキャラクタに変更されている(一人だけ、嫌な奴枠の甥がいるが…)。なので殺されてしまうとショックだし、探偵が犯人を憎く思う気持ちが判るので、改稿前より人間的な面で魅力がアップしていると思う。『白の恐怖』も魅力的だけど、やはり登場人物(特に甥姪)に感情移入出来ない点がちょっとドライなものにしてると思う。小酒井不木の短篇的な。
ただ、推敲前なので設定が前章と変わっていたりする箇所もある。探偵料が五千万から一千万に減ってるのが一番気になった…
マァ、作者がどのように執筆していくかってのが判る点が良いよね。
【第五部】
・地底の王国
・恐龍を追って
→ノンフィクション。青井久利名義
あゆかわ・てつや(1919-2002)
東京都生まれ。本名・中川透。別名・那珂川透、薔薇小路棘麿、青井久利、中河通、宇田川蘭子ほか多数あり。
小学三年生の時、父親の仕事の関係で大連へ移り住む。戦後上京し、GHQ勤務のかたわら雑誌に投稿。1950年、『宝石』100万円懸賞の長篇部門に『ペトロフ事件』(中川透名義)が第一席で入選しデビュー。56年、講談社の『書下ろし長篇探偵小説全集』第13巻に、『黒いトランク』(鮎川哲也名義)を応募し、当選。
60年、『憎悪の化石』と『黒い白鳥』で、第13回日本探偵作家クラブ賞受賞。
90年、東京創元社主催の長編推理小説新人賞である鮎川哲也賞が創設される。アンソロジーの編纂を通して、戦前の作家・作品を発掘したり、新人作家の発掘に尽力した。
2001年、本格推理小説への多大な貢献を評価され、第1回本格ミステリ大賞特別賞受賞。
02年死去。没後、第6回日本ミステリー文学大賞受賞。
【第一部】
・白の恐怖:友人の鮎川君から私の手記を出版しないかと誘いを受けた。民事弁護士の私が係わる事になった白樺荘の事件を発表しろと言うのだ――高毛礼一(こうもれい・はじめ)氏が残した遺産を会った事のない五人の甥姪たちに分配する為、真冬の軽井沢に集まる事になった。甥姪の内、一人は戦死していた為、四人で五千万円を分ける事になったが、高毛礼家の女中と私の助手が殺害されたとの知らせがあり…
→1984年桃源社より発刊。鮎哲長編で唯一の文庫未収録作品。とても読み易かった。鮎哲は時刻表トリックが中心だと思ってたから(数字の羅列を見ると眠くなるタイプ)火サスの鬼貫警部シリーズで満足してたけど、何でもっと早く読んでなかったんだ…!
(いきなりネタバレ反転)死体発見時、丸茂君の顔を確認出来る人はいなかった筈なので、きっと替え玉だ…!と思ってたのに、アッチが入れ替わっていたのか…!眼の付け所は良かったのに(自賛)悔しい!(良い笑顔)あと、遺産の分配に関しては私も不満を覚えたので(もらえないのに…)、動機についても気付けた筈なのに…!(反転終わり)
【第二部】夜の演出
・探偵絵物語 最後の接吻/退屈なエマ子/アドバルーン殺人事件/舞踏会の盗賊/出獄第一歩/処刑の広場/激闘の島/ヨットの野獣/無人艇タラント号/九時〇七分の恐怖/湖泥のギャング/エミの復讐
→鮎哲愛好家が単行本未収録作品だけを集めて刊行した私家版。藤巻一郎、猿丸二郎、畷三郎、五反田四郎名義のローテーションで、牧村史郎という人のイラスト入り。復讐譚あり、ユーモアあり。ところで、眠らせたオッサンを女性一人で運ぶのは困難なのでは…?人目にもつくしだし…みんなグルなの?
*
・寒椿→(ネタバレ反転)色ネタには気をつけろって!ミスおたなら!なぜ!気付かなかった!!悔しい!!(反転終わり)
・黒い雌蕊→この男むかつくね…
・草が茂った頃に→ショートショート
・殺し屋ジョオ
・青いネッカチーフ→犯人当てクイズ。あからさま過ぎるヒント、いるのか…?
・お年玉を探しましょう→昭和34年1月1日に放送されたラジオドラマ。ハッピーエンド。
【第三部】海彦山彦
・海彦山彦:品行不良な双子の弟・山彦が殺されたと、兄の海彦から電話を受けた警部。山彦を恨んでいたのは女優の山吹マリ子とバーの用心棒・児島半助の二人だが…
→犯人当てクイズ。だから何でこんなあからさまな伏線とヒントを…
・遺書:伯父である音楽評論家の殺害を殺し屋に依頼した甥。殺し屋は評論家に遺書を書かせ射殺し自殺に偽装したが、報酬を受け取る場所で逮捕されてしまう…
・殺し屋の悲劇:夫の殺害を依頼され、散歩ルートで待ち伏せする殺し屋。しかしターゲットは現れず、別の男を殺した容疑で逮捕されてしまった…
・ガーゼのハンカチ:うっかり殺してしまった女の死亡時刻を偽装する事でアリバイを作った男。完全犯罪の筈が、あっさり逮捕されてしまった理由とは…
・酒場にて:Mホテルのバーで雑誌社の女性記者と待ち合わせをしているわたし。彼女は一向に来る気配がなかった。隣の席に座っていた女性が、このホテルで起きた事件について語り出した…
【第四部】
・白樺荘事件
→『白の恐怖』を改稿した未完の遺作。桃源社が三百枚位で一冊として刊行した全集用の書き下ろしだったので、登場人物も少なめで軽井沢へ行くまでも短かった分、がっつり追加されている。甥姪は九人に増えてるし、軽井沢に集まる前に事件が起きてるし(未完なので、このへんの事件が事故か他殺か死を偽装したものなのかは不明)、ついでに遺産も大幅アップ!一人五十億ですってよ!いくらだよ!?
『白の恐怖』では、佐々(さっさ)弁護士の手記だったけど、全国各地に散らばっている甥姪を探し出してきた探偵視点に変更されている(因みに、登場する弁護士も探偵も『白の恐怖』とは別人になっている)。酒と女が大好きな、女房に逃げられた貧乏探偵だよ。高毛礼一族も小森一族に名前を改められ、岡山出身となっている。そして探偵は金田一の小説を思い浮かべる(のだが、後の章では本格は読まずハードボイルドしか読まないと言っている)。
あと、『白の恐怖』では嫌な奴としょうもない奴しかいなかった甥姪は、それぞれ個性的かつどこか憎めないキャラクタに変更されている(一人だけ、嫌な奴枠の甥がいるが…)。なので殺されてしまうとショックだし、探偵が犯人を憎く思う気持ちが判るので、改稿前より人間的な面で魅力がアップしていると思う。『白の恐怖』も魅力的だけど、やはり登場人物(特に甥姪)に感情移入出来ない点がちょっとドライなものにしてると思う。小酒井不木の短篇的な。
ただ、推敲前なので設定が前章と変わっていたりする箇所もある。探偵料が五千万から一千万に減ってるのが一番気になった…
マァ、作者がどのように執筆していくかってのが判る点が良いよね。
【第五部】
・地底の王国
・恐龍を追って
→ノンフィクション。青井久利名義
あゆかわ・てつや(1919-2002)
東京都生まれ。本名・中川透。別名・那珂川透、薔薇小路棘麿、青井久利、中河通、宇田川蘭子ほか多数あり。
小学三年生の時、父親の仕事の関係で大連へ移り住む。戦後上京し、GHQ勤務のかたわら雑誌に投稿。1950年、『宝石』100万円懸賞の長篇部門に『ペトロフ事件』(中川透名義)が第一席で入選しデビュー。56年、講談社の『書下ろし長篇探偵小説全集』第13巻に、『黒いトランク』(鮎川哲也名義)を応募し、当選。
60年、『憎悪の化石』と『黒い白鳥』で、第13回日本探偵作家クラブ賞受賞。
90年、東京創元社主催の長編推理小説新人賞である鮎川哲也賞が創設される。アンソロジーの編纂を通して、戦前の作家・作品を発掘したり、新人作家の発掘に尽力した。
2001年、本格推理小説への多大な貢献を評価され、第1回本格ミステリ大賞特別賞受賞。
02年死去。没後、第6回日本ミステリー文学大賞受賞。
1942年発表。
快活な金持ちのフランクと、嫌われ者のジョージ兄弟の住む館・レイヴンズムーアの週末パーティに招かれたディクソン夫妻。フランクとは二、三度仕事で会っただけ、他のパーティ参加者とは初対面という奇妙な集まりだった。
翌朝、マリリー・ディクソンはジョージが部屋で殺されているのを発見するが、パーティが終わるまで誰にも知らせないようにしようと決意する。そして、ジョージに弱味を握られているパーティ参加者は、それぞれその証拠品を探しにジョージの部屋に忍び込が、皆、彼の死を秘密にする…
リーダビリティが高いし、人物視点が切り替わる毎に参加者たちの秘密が明るみになってゆくのでぐいぐい読めます。面白かった。
ただ、視点の切り替えがちょっと判り難い部分もあって、今わたしは誰の心を読んでいるんだ…と迷った。でもマァみんな人間だからね、ジル・マゴーンは突然の動物視点入れてきてたからね、それに比べれば判り難さなど…
ネタバレに関わる感想は以下に↓↓
快活な金持ちのフランクと、嫌われ者のジョージ兄弟の住む館・レイヴンズムーアの週末パーティに招かれたディクソン夫妻。フランクとは二、三度仕事で会っただけ、他のパーティ参加者とは初対面という奇妙な集まりだった。
翌朝、マリリー・ディクソンはジョージが部屋で殺されているのを発見するが、パーティが終わるまで誰にも知らせないようにしようと決意する。そして、ジョージに弱味を握られているパーティ参加者は、それぞれその証拠品を探しにジョージの部屋に忍び込が、皆、彼の死を秘密にする…
リーダビリティが高いし、人物視点が切り替わる毎に参加者たちの秘密が明るみになってゆくのでぐいぐい読めます。面白かった。
ただ、視点の切り替えがちょっと判り難い部分もあって、今わたしは誰の心を読んでいるんだ…と迷った。でもマァみんな人間だからね、ジル・マゴーンは突然の動物視点入れてきてたからね、それに比べれば判り難さなど…
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