[創作篇]
瀬折研吉(せおりけんきち)・風呂出亜久子(ふろいであくこ)の事件簿
・見えない足跡:アトリエで殺された彫刻家。しかしアトリエに続く道には第一発見者の女中の往復した足跡しかなく…
→ことさら色について強調されてたから色盲とかが絡んでくるのかと思ってたけど…綾辻ミステリで鍛えられた深読みじゃったか。しかし登場するミスおたの巡査が一番つまらなさそうな作品から読むって記述した後に「狩久から読もう」って流れ^^因みに二番目に読むのは研吉のだって狩さん自虐が過ぎる好き^^
・呼ぶと逃げる犬:密室で殺された教授は、書斎のスイッチを入れると隣室の電灯が点き、金庫の中には紙屑が入れられ紙屑籠の中に現金が入っているという変わった家に住んでいた。そして、飼っている犬は追い払うと寄って来て、呼ぶと逃げる犬だった…
→タイトルが良いよね。しかし亜久子の推理の前提はひどい。
・たんぽぽ物語:殺された弁護士のポケットには『Xの悲劇』を忍ばせ片手にタンポポを掴んでいたことから、「タンポポ夫人」と渾名されるサロンのマダムが容疑者として疑われていた。彼女に懸想する天野の伯父は、ミステリマニアである甥の浩介とそのマニア仲間の西村・エラ子・瀬折に彼女の無実を証明して欲しいと依頼する。素人探偵たちはそれぞれ役割分担して情報を集めて…
→研吉大学時代の話。登場の仕方がアレだったから犯人の目星はスグ付いたけど、たんぽぽの意味それか~~!
・虎よ、虎よ、爛爛と――一〇一番目の密室:どんな猛獣も女性も服従させる事ができるアルフォンゾ橘だったが、探偵小説家の江川蘭子だけは例外だった。アルフォンゾが〈内側からは開けられない家〉に蘭子と共に虎を閉じ込めたちょうどその頃、蘭子のヌードを撮影しているカメラマン・砂村が蘭子の所有する毒矢によって殺害され…
→前半の官能小説感からイッキに容疑者が閉じ込められている〈逆密室〉!リドルストーリィめいた結末、か~ら~の~ユーモアなオチ!多分狩さんの魅力が余す事無く詰め込まれた作品だと思う。
*
・落石:映画《落石》の主演を得る為に右腕を轢断させた女優・華村杏子は、全撮影が終了したその場で吊橋から飛び降り自殺した。妹・葉子はその吊橋があるR河原近くに引越してきて、姉の血を浴びた大石を庭に運び《杏子》と名付けた。ある日桑木医師の元に葉子から《杏子》が倒れて足を挟まれたと連絡があった。翌日、R河原で華村姉妹の敵でもある男の死体が発見され…
→デビュー作。この話好き。
・氷山:服毒自殺を遂げた探偵小説家・多摩村卓也の、書斎机上から発見された日記…そこには彼の妻と彼女に懸想する青年の毒死に関する記述があった…
→事件が起きた状況としては横溝の「百日紅の下にて」に似てる。自殺者の日記、三冊もあって…くどいというか…傍点も読者の注意を引きすぎてそこに仕掛けがあると丸判りでちょっと…
・ひまつぶし:未亡人・弓子は退屈していた。妹は友人とスキーへ行き、家政婦も年末の休暇で不在である今夜、亡夫に似た喬が訪ねてくるのを待っていたが、現れたのは夜盗だった…
→ハッピーエンド。この後、弓子は「貝弓子」となって創作翻訳を発表することとなるんだとか。狩久はどこまでも現実と虚構の境界を曖昧にしていくスタイルだな。
・すとりっぷと・まい・しん:三十七歳で未亡人となった叔母を密かに愛する私は、彼女へ相続される筈であった遺産を掠め取った彼女の兄を殺害する事にした。病気で動けぬ私が考えた、殺害方法とは…
→すとりっぷと・まい・しん=Stripped, My Sin(我が罪あばかれたり)の意だそうで、作中に登場するストレプトマイシンという薬の音に近づけたタイトルらしいが、乱歩ら評者からは不評だった模様…あのトリックが成立するとは考えられないとか最後の一行は不要とか言われたみたいだけど、それを補う位前半は好評だったらしい。
・山女魚(やまめ):有坂夫妻の家に招待された探偵小説家の韮山は、十年程前にこの地で起きた密室事件――鍵の掛かった風呂場から消失し、配水管が流れ込んでいる美女ガ淵で死体となって発見された――の話をする…
→アッ、こうゆうオチなのね^^
・佐渡冗話:佐渡行きの船上で殺人事件が起きた。被害者はハンサム・ジョーと呼ばれる新潟駅専門の掏りだった…
→前前前世じゃない方の「君の名は」の連載を中断してまで佐渡新報に掲載されていた作品。佐渡行きの船に乗った他人達の微妙に絡み合った関係が浮かび上がってくるまでは「これ、探偵小説じゃないのかも…」と思ったけど、刑事が出てきたあたりから一人ひとりの挙動が意味ありげに書かれ出してぐいぐい読まされた。作中の佐渡新報にも狩久「佐渡冗話」が掲載されていて、乗客の一人が「狩久夫人」を名乗ったり(どんでんがえしがあるのだけど)狩流ユーモアも面白かった。
・恋囚:砂村氏の息子の家庭教師に推薦された大学生の鷹本は、砂村夫人の美しさに惹かれた。夫人は二十年程前、砂村氏の友人と駆落ちし子供を儲けたが、彼は学友との登山行で遭難死してしまった。同行の一人に砂村氏もいた為、夫人は恋人を殺したのは夫ではないかと疑っていた。そして狭心症を患い余命僅かとなった砂村氏は、密室状態の自室で服毒死して…
→他の作品から溢れるユーモアの欠片もない作品!登場人物の出自は諸判りだけど(短篇だしね…)、まさかあんな結末を用意するとは…絶対、復讐のネタにすると思ってたのに…フロイト的や…
・訣別――第二のラヴ・レター:探偵小説家・狩久の元を訪れたのはかつての恋人・比崎えま子だった。彼女は彼が書いた「落石」を読んで自分に宛てた暗号だと気付き彼に会いに来たと言う…
→「落石」「ひまつぶし」を特定の人物に向けたメッセージとして発表した、という作品。これを書く前提でデビュー作を書いたのか、こうゆう仕掛けを書きたくて後からこじつけたのかは判らないけど、なんかすげえ…
・共犯者:栗原に犯されたまゆりは脅迫されて関係を続けていた。しかし栗原の親友・池本と出会い愛し合うようになった二人…栗原との関係を打ち明け、栗原との関係を絶ち池本と結婚する事になったまゆりだが、栗原の執拗な脅迫は続き、ついに彼を殺す決心をする。しかし栗原はまゆりが殺す前に密室で背中を刺されて死んでいた…
→慌しい密室だな…だが、嫌いじゃあない。そんで他作品にもちょいちょい出てくる杉本警部はどの作品内でも道化役なのね…
[随筆篇]
女神の下着/《すとりっぷと・まい・しん》について/料理の上手な妻/微小作家の弁/匿された本質/酷暑冗言/ゆきずりの巨人/楽しき哉! 探偵小説
かり・きゅう(1922-1977)
東京都育ち(新潟県生まれ?)。本名・市橋久智(ひさあき)。別名・貝弓子。
46年、慶應義塾大学工学部電気学科卒業、結核を発症し療養生活を送る。
51年、『宝石』の短篇懸賞に「落石」「氷山」を応募し「落石」が優秀作5編の内に選ばれデビュー。貝弓子名義で創作翻訳も執筆。「関西鬼クラブ」東京支部を主宰。
62年、テレビ局の仕事が忙しくなり休筆するが75年に「追放」で再デビュー。初の長編『不必要な犯罪』などを刊行するが、77年肺癌で死去。
瀬折研吉(せおりけんきち)・風呂出亜久子(ふろいであくこ)の事件簿
・見えない足跡:アトリエで殺された彫刻家。しかしアトリエに続く道には第一発見者の女中の往復した足跡しかなく…
→ことさら色について強調されてたから色盲とかが絡んでくるのかと思ってたけど…綾辻ミステリで鍛えられた深読みじゃったか。しかし登場するミスおたの巡査が一番つまらなさそうな作品から読むって記述した後に「狩久から読もう」って流れ^^因みに二番目に読むのは研吉のだって狩さん自虐が過ぎる好き^^
・呼ぶと逃げる犬:密室で殺された教授は、書斎のスイッチを入れると隣室の電灯が点き、金庫の中には紙屑が入れられ紙屑籠の中に現金が入っているという変わった家に住んでいた。そして、飼っている犬は追い払うと寄って来て、呼ぶと逃げる犬だった…
→タイトルが良いよね。しかし亜久子の推理の前提はひどい。
・たんぽぽ物語:殺された弁護士のポケットには『Xの悲劇』を忍ばせ片手にタンポポを掴んでいたことから、「タンポポ夫人」と渾名されるサロンのマダムが容疑者として疑われていた。彼女に懸想する天野の伯父は、ミステリマニアである甥の浩介とそのマニア仲間の西村・エラ子・瀬折に彼女の無実を証明して欲しいと依頼する。素人探偵たちはそれぞれ役割分担して情報を集めて…
→研吉大学時代の話。登場の仕方がアレだったから犯人の目星はスグ付いたけど、たんぽぽの意味それか~~!
・虎よ、虎よ、爛爛と――一〇一番目の密室:どんな猛獣も女性も服従させる事ができるアルフォンゾ橘だったが、探偵小説家の江川蘭子だけは例外だった。アルフォンゾが〈内側からは開けられない家〉に蘭子と共に虎を閉じ込めたちょうどその頃、蘭子のヌードを撮影しているカメラマン・砂村が蘭子の所有する毒矢によって殺害され…
→前半の官能小説感からイッキに容疑者が閉じ込められている〈逆密室〉!リドルストーリィめいた結末、か~ら~の~ユーモアなオチ!多分狩さんの魅力が余す事無く詰め込まれた作品だと思う。
*
・落石:映画《落石》の主演を得る為に右腕を轢断させた女優・華村杏子は、全撮影が終了したその場で吊橋から飛び降り自殺した。妹・葉子はその吊橋があるR河原近くに引越してきて、姉の血を浴びた大石を庭に運び《杏子》と名付けた。ある日桑木医師の元に葉子から《杏子》が倒れて足を挟まれたと連絡があった。翌日、R河原で華村姉妹の敵でもある男の死体が発見され…
→デビュー作。この話好き。
・氷山:服毒自殺を遂げた探偵小説家・多摩村卓也の、書斎机上から発見された日記…そこには彼の妻と彼女に懸想する青年の毒死に関する記述があった…
→事件が起きた状況としては横溝の「百日紅の下にて」に似てる。自殺者の日記、三冊もあって…くどいというか…傍点も読者の注意を引きすぎてそこに仕掛けがあると丸判りでちょっと…
・ひまつぶし:未亡人・弓子は退屈していた。妹は友人とスキーへ行き、家政婦も年末の休暇で不在である今夜、亡夫に似た喬が訪ねてくるのを待っていたが、現れたのは夜盗だった…
→ハッピーエンド。この後、弓子は「貝弓子」となって創作翻訳を発表することとなるんだとか。狩久はどこまでも現実と虚構の境界を曖昧にしていくスタイルだな。
・すとりっぷと・まい・しん:三十七歳で未亡人となった叔母を密かに愛する私は、彼女へ相続される筈であった遺産を掠め取った彼女の兄を殺害する事にした。病気で動けぬ私が考えた、殺害方法とは…
→すとりっぷと・まい・しん=Stripped, My Sin(我が罪あばかれたり)の意だそうで、作中に登場するストレプトマイシンという薬の音に近づけたタイトルらしいが、乱歩ら評者からは不評だった模様…あのトリックが成立するとは考えられないとか最後の一行は不要とか言われたみたいだけど、それを補う位前半は好評だったらしい。
・山女魚(やまめ):有坂夫妻の家に招待された探偵小説家の韮山は、十年程前にこの地で起きた密室事件――鍵の掛かった風呂場から消失し、配水管が流れ込んでいる美女ガ淵で死体となって発見された――の話をする…
→アッ、こうゆうオチなのね^^
・佐渡冗話:佐渡行きの船上で殺人事件が起きた。被害者はハンサム・ジョーと呼ばれる新潟駅専門の掏りだった…
→前前前世じゃない方の「君の名は」の連載を中断してまで佐渡新報に掲載されていた作品。佐渡行きの船に乗った他人達の微妙に絡み合った関係が浮かび上がってくるまでは「これ、探偵小説じゃないのかも…」と思ったけど、刑事が出てきたあたりから一人ひとりの挙動が意味ありげに書かれ出してぐいぐい読まされた。作中の佐渡新報にも狩久「佐渡冗話」が掲載されていて、乗客の一人が「狩久夫人」を名乗ったり(どんでんがえしがあるのだけど)狩流ユーモアも面白かった。
・恋囚:砂村氏の息子の家庭教師に推薦された大学生の鷹本は、砂村夫人の美しさに惹かれた。夫人は二十年程前、砂村氏の友人と駆落ちし子供を儲けたが、彼は学友との登山行で遭難死してしまった。同行の一人に砂村氏もいた為、夫人は恋人を殺したのは夫ではないかと疑っていた。そして狭心症を患い余命僅かとなった砂村氏は、密室状態の自室で服毒死して…
→他の作品から溢れるユーモアの欠片もない作品!登場人物の出自は諸判りだけど(短篇だしね…)、まさかあんな結末を用意するとは…絶対、復讐のネタにすると思ってたのに…フロイト的や…
・訣別――第二のラヴ・レター:探偵小説家・狩久の元を訪れたのはかつての恋人・比崎えま子だった。彼女は彼が書いた「落石」を読んで自分に宛てた暗号だと気付き彼に会いに来たと言う…
→「落石」「ひまつぶし」を特定の人物に向けたメッセージとして発表した、という作品。これを書く前提でデビュー作を書いたのか、こうゆう仕掛けを書きたくて後からこじつけたのかは判らないけど、なんかすげえ…
・共犯者:栗原に犯されたまゆりは脅迫されて関係を続けていた。しかし栗原の親友・池本と出会い愛し合うようになった二人…栗原との関係を打ち明け、栗原との関係を絶ち池本と結婚する事になったまゆりだが、栗原の執拗な脅迫は続き、ついに彼を殺す決心をする。しかし栗原はまゆりが殺す前に密室で背中を刺されて死んでいた…
→慌しい密室だな…だが、嫌いじゃあない。そんで他作品にもちょいちょい出てくる杉本警部はどの作品内でも道化役なのね…
[随筆篇]
女神の下着/《すとりっぷと・まい・しん》について/料理の上手な妻/微小作家の弁/匿された本質/酷暑冗言/ゆきずりの巨人/楽しき哉! 探偵小説
かり・きゅう(1922-1977)
東京都育ち(新潟県生まれ?)。本名・市橋久智(ひさあき)。別名・貝弓子。
46年、慶應義塾大学工学部電気学科卒業、結核を発症し療養生活を送る。
51年、『宝石』の短篇懸賞に「落石」「氷山」を応募し「落石」が優秀作5編の内に選ばれデビュー。貝弓子名義で創作翻訳も執筆。「関西鬼クラブ」東京支部を主宰。
62年、テレビ局の仕事が忙しくなり休筆するが75年に「追放」で再デビュー。初の長編『不必要な犯罪』などを刊行するが、77年肺癌で死去。
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大分前に読んだので感想は割愛・・・「争う四巨頭」が好きかな~、ほのぼのじじいにほっこりした^^
・藁の猫:丘本の友人・粥谷東巨(かゆやとうきょ)は徹底した写実性と完璧を求める芸術的姿勢を持っていた。しかし回顧展に展示された作品には六本指の少女や重力を無視した水など、ちぐはぐなものが描かれた絵があるのに気が付いた亜。徹底した写実性からかけ離れたモチーフが描かれ出したのは東巨の代表作で、モデルとなった女優が自殺して以降の作品だった。亜は丘本からモデルになった女優の新色(にいろ)藤子、内縁の妻・小山葺子、そして東巨が自殺した事を聞き…
・砂我(すなが)家の消失:室野が乗った列車は土砂崩れで止まってしまった。乗客の一人・谷尾が近道を知っているというので亜と共に着いて行く事にしたが、谷尾は壊れた磁石と幼少期の記憶を頼りに山を越えようとしていた為遭難してしまう。漸く見付けた人家に泊めてもらえたが、黴臭いその部屋の窓は釘が打ちつけてあった。好奇心から釘を抜いて外を見ると合掌造りの家があるだけだった。目覚めた後で窓の外を見ると、家は跡形も無く消えていた。土地に伝わる子守唄――一夜にして消えた、砂蛾家のように…
・珠洲子(すずこ)の装い:飛行機事故で亡くなってから人気に火がついた「りんこ」こと加茂珠洲子。彼女の死を惜しみ、映画「珠洲子の絶唱」主演女優を決めるオーディションが開催される。最終選考に残った参加者は皆「りんこ」役を得る為にりんこの髪型やしぐさ、歌い方を真似る中、九番目に登場した参加者だけはりんこに似たところが全くなくて…
・意外な遺骸:警察官に憧れる桜井料二が警官のフリをしてパトロールしていると、野犬が群がっているのに気付いた。犬を追い払うと「たぬきの岩さん」こと綿貫の他殺体があった。死体は腹部と銃で撃たれた上、煮られて、焼かれて木の葉を被せられていた。撮影でその場に居合わせた亜は、童謡「あんたがたどこさ」の見立てではないかと言う。桜井は知り合いの刑事にそれを伝えるが、狸を撃ったのは猟師――りょうじ――である事から、逆に容疑者の一人ではないかと村人に見られてしまう。桜井は自分で犯人を見つけようと躍起になるが…
・ねじれた帽子:サービスエリアから出てきた紳士は、真新しい、仕立ての良い服装をしているのに黒い帽子は変にだぶだぶで形が似合っていなかった。その帽子が風に飛ばされたのを亜は追いかけたが、紳士は頭を抑えたまま車に乗り込み走り去っていった。世話焼きの大竹は帽子を持って戻ってきた亜を連れて紳士の後を追うが…
・争う四巨頭:警官を定年退職した鈴木に刑事時代に起きた事件をエッセイにしないかと雑誌社から依頼が来た。その話は立ち消えになってしまったが、現役時代の一番大きな事件(『亜愛一郎の転倒』収録「黒い霧」)の詳細を書く為、亜に手紙を出していた。律儀にも亜が鈴木家を訪れた日に元県知事・田中の孫娘がやってきた。彼女は、祖父と三人の友人が何か良からぬ事を企んでいるのではないかと鈴木に相談する…
・三郎町路上:蜘蛛学者の響子が亜と乗り込んだタクシーで死体が発見されたと警察から連絡が入った。三郎町で客を降ろした後、次に乗った客が座席の下に男の死体を見付けたという。しかもその死体は三郎町で降ろした客だった。事件に興味を持った響子は、亜を助手に従えて現場へと向った…
・病人に刃物:入院中の磯明編集長を見舞いに行った亜。病院の屋上へ散歩に行くと、一週間前に退院した男がいた。彼は磯明と同室だったので、磯明の姿を見付けるとこちらに向おうとした。ところがリハビリ中の患者にぶつかり倒れてしまった。磯明が駆け寄ると男の腹部は血に染まっていた。男は死んでしまったが、周りに誰もいなかった事・男を刺した凶器が磯明の小刀であった事から、磯明が助けるふりをして男を刺したと刑事に疑われ…
・藁の猫:丘本の友人・粥谷東巨(かゆやとうきょ)は徹底した写実性と完璧を求める芸術的姿勢を持っていた。しかし回顧展に展示された作品には六本指の少女や重力を無視した水など、ちぐはぐなものが描かれた絵があるのに気が付いた亜。徹底した写実性からかけ離れたモチーフが描かれ出したのは東巨の代表作で、モデルとなった女優が自殺して以降の作品だった。亜は丘本からモデルになった女優の新色(にいろ)藤子、内縁の妻・小山葺子、そして東巨が自殺した事を聞き…
・砂我(すなが)家の消失:室野が乗った列車は土砂崩れで止まってしまった。乗客の一人・谷尾が近道を知っているというので亜と共に着いて行く事にしたが、谷尾は壊れた磁石と幼少期の記憶を頼りに山を越えようとしていた為遭難してしまう。漸く見付けた人家に泊めてもらえたが、黴臭いその部屋の窓は釘が打ちつけてあった。好奇心から釘を抜いて外を見ると合掌造りの家があるだけだった。目覚めた後で窓の外を見ると、家は跡形も無く消えていた。土地に伝わる子守唄――一夜にして消えた、砂蛾家のように…
・珠洲子(すずこ)の装い:飛行機事故で亡くなってから人気に火がついた「りんこ」こと加茂珠洲子。彼女の死を惜しみ、映画「珠洲子の絶唱」主演女優を決めるオーディションが開催される。最終選考に残った参加者は皆「りんこ」役を得る為にりんこの髪型やしぐさ、歌い方を真似る中、九番目に登場した参加者だけはりんこに似たところが全くなくて…
・意外な遺骸:警察官に憧れる桜井料二が警官のフリをしてパトロールしていると、野犬が群がっているのに気付いた。犬を追い払うと「たぬきの岩さん」こと綿貫の他殺体があった。死体は腹部と銃で撃たれた上、煮られて、焼かれて木の葉を被せられていた。撮影でその場に居合わせた亜は、童謡「あんたがたどこさ」の見立てではないかと言う。桜井は知り合いの刑事にそれを伝えるが、狸を撃ったのは猟師――りょうじ――である事から、逆に容疑者の一人ではないかと村人に見られてしまう。桜井は自分で犯人を見つけようと躍起になるが…
・ねじれた帽子:サービスエリアから出てきた紳士は、真新しい、仕立ての良い服装をしているのに黒い帽子は変にだぶだぶで形が似合っていなかった。その帽子が風に飛ばされたのを亜は追いかけたが、紳士は頭を抑えたまま車に乗り込み走り去っていった。世話焼きの大竹は帽子を持って戻ってきた亜を連れて紳士の後を追うが…
・争う四巨頭:警官を定年退職した鈴木に刑事時代に起きた事件をエッセイにしないかと雑誌社から依頼が来た。その話は立ち消えになってしまったが、現役時代の一番大きな事件(『亜愛一郎の転倒』収録「黒い霧」)の詳細を書く為、亜に手紙を出していた。律儀にも亜が鈴木家を訪れた日に元県知事・田中の孫娘がやってきた。彼女は、祖父と三人の友人が何か良からぬ事を企んでいるのではないかと鈴木に相談する…
・三郎町路上:蜘蛛学者の響子が亜と乗り込んだタクシーで死体が発見されたと警察から連絡が入った。三郎町で客を降ろした後、次に乗った客が座席の下に男の死体を見付けたという。しかもその死体は三郎町で降ろした客だった。事件に興味を持った響子は、亜を助手に従えて現場へと向った…
・病人に刃物:入院中の磯明編集長を見舞いに行った亜。病院の屋上へ散歩に行くと、一週間前に退院した男がいた。彼は磯明と同室だったので、磯明の姿を見付けるとこちらに向おうとした。ところがリハビリ中の患者にぶつかり倒れてしまった。磯明が駆け寄ると男の腹部は血に染まっていた。男は死んでしまったが、周りに誰もいなかった事・男を刺した凶器が磯明の小刀であった事から、磯明が助けるふりをして男を刺したと刑事に疑われ…
稀代のシャーロッキアン編訳によるシャーロック・ホームズのパロディ&パスティーシュ集。
第Ⅰ部 王道篇
・一等車の秘密/ロナルド・A・ノックス
・ワトスン博士の友人/E・C・ベントリー
・おばけオオカミ事件/アントニー・バウチャー
・ポー・ピープのヒツジ失踪事件/アントニー・バークリー
※ポー・ピープとは、マザーグースに出てくる羊飼いの少女の名前。らしい。当時バークリーがお気に入りだった「○○が○○を書いたら」シリーズのひとつ。
・シャーロックの強奪/A・A・ミルン
・真説シャーロック・ホームズの生還/ロード・ワトスン(E・F・ベンスン&ユースタス・H・マイルズ)
・第二の収穫/ロバート・バー
ノックスのは評価が高いそうです、確かにトリックとかしっかりしてる。他は割とホームズの超人的推理力を茶化してギャグにしている感じ。
第Ⅱ部 もどき篇
・南洋スープ会社事件/ロス・マクドナルド
※デビュー前の16歳の時に書いた作品!
・ステイトリー・ホームズの冒険/アーサー・ポージス:ホームズの元にやって来たのはヘンリ・メルヴェール卿!密室殺人!被害者はミス・マープル!
・ステイトリー・ホームズの新冒険/同上:再び依頼者はH・M卿。密室で殺されたのはフレンチ警部…!他にも名前だけ登場の名探偵がいっぱい!
・ステイトリー・ホームズと金属箱事件/同上
・まだらの手/ピーター・トッド
・四十四のサイン/同上
これらの作品はバカミス系だったりドタバタだったりおもしろおかしい系です。ポージスのステイトリー三部作はバカトリックだけど、実現不可能ではギリギリない…ような…名探偵イッパイ出ててお得感あるし好きです。
第Ⅲ部 語られざる事件篇
・疲労した船長の事件/アラン・ウィルスン
・調教された鵜の事件/オーガスト・ダーレス
・コンク・シングルトン偽造事件/ギャヴィン・ブレンド
・トスカ枢機卿事件/S・C・ロバーツ
正典(※ドイルが書いた作品群)で触れられていたけど作品になっていない事件を書いたもの。すごく良く出来てると思った。けど、偽造事件は何がドウなのかちょっと判らなかった…
第Ⅳ部 対決篇
・シャーロック・ホームズ対デュパン/アーサー・チャップマン
・シャーロック・ホームズ対勇将ジェラール/作者不詳
・シャーロック・ホームズ対007/ドナルド・スタンリー
ホームズが他作品の登場人物と対峙する、ダブルパロディってゆうの?そうゆうやつ。
第Ⅴ部 異色篇
・犯罪者捕獲法奇譚/キャロリン・ウェルズ
・小惑星の力学/ロバート・ブロック
※小惑星の力学:モリアーティ教授が書いた論文のタイトル
・サセックスの白日夢/ベイジル・ラスボーン
※ホームズを演じた俳優が書いたもの!
・シャーロック・ホームズなんか恐くない/ビル・プロンジーン:現在(※1968年)に現れたシャーロック・ホームズ…!オチが読めちゃったけど、こうゆうのもアリなんだなーって。
第Ⅰ部 王道篇
・一等車の秘密/ロナルド・A・ノックス
・ワトスン博士の友人/E・C・ベントリー
・おばけオオカミ事件/アントニー・バウチャー
・ポー・ピープのヒツジ失踪事件/アントニー・バークリー
※ポー・ピープとは、マザーグースに出てくる羊飼いの少女の名前。らしい。当時バークリーがお気に入りだった「○○が○○を書いたら」シリーズのひとつ。
・シャーロックの強奪/A・A・ミルン
・真説シャーロック・ホームズの生還/ロード・ワトスン(E・F・ベンスン&ユースタス・H・マイルズ)
・第二の収穫/ロバート・バー
ノックスのは評価が高いそうです、確かにトリックとかしっかりしてる。他は割とホームズの超人的推理力を茶化してギャグにしている感じ。
第Ⅱ部 もどき篇
・南洋スープ会社事件/ロス・マクドナルド
※デビュー前の16歳の時に書いた作品!
・ステイトリー・ホームズの冒険/アーサー・ポージス:ホームズの元にやって来たのはヘンリ・メルヴェール卿!密室殺人!被害者はミス・マープル!
・ステイトリー・ホームズの新冒険/同上:再び依頼者はH・M卿。密室で殺されたのはフレンチ警部…!他にも名前だけ登場の名探偵がいっぱい!
・ステイトリー・ホームズと金属箱事件/同上
・まだらの手/ピーター・トッド
・四十四のサイン/同上
これらの作品はバカミス系だったりドタバタだったりおもしろおかしい系です。ポージスのステイトリー三部作はバカトリックだけど、実現不可能ではギリギリない…ような…名探偵イッパイ出ててお得感あるし好きです。
第Ⅲ部 語られざる事件篇
・疲労した船長の事件/アラン・ウィルスン
・調教された鵜の事件/オーガスト・ダーレス
・コンク・シングルトン偽造事件/ギャヴィン・ブレンド
・トスカ枢機卿事件/S・C・ロバーツ
正典(※ドイルが書いた作品群)で触れられていたけど作品になっていない事件を書いたもの。すごく良く出来てると思った。けど、偽造事件は何がドウなのかちょっと判らなかった…
第Ⅳ部 対決篇
・シャーロック・ホームズ対デュパン/アーサー・チャップマン
・シャーロック・ホームズ対勇将ジェラール/作者不詳
・シャーロック・ホームズ対007/ドナルド・スタンリー
ホームズが他作品の登場人物と対峙する、ダブルパロディってゆうの?そうゆうやつ。
第Ⅴ部 異色篇
・犯罪者捕獲法奇譚/キャロリン・ウェルズ
・小惑星の力学/ロバート・ブロック
※小惑星の力学:モリアーティ教授が書いた論文のタイトル
・サセックスの白日夢/ベイジル・ラスボーン
※ホームズを演じた俳優が書いたもの!
・シャーロック・ホームズなんか恐くない/ビル・プロンジーン:現在(※1968年)に現れたシャーロック・ホームズ…!オチが読めちゃったけど、こうゆうのもアリなんだなーって。
江戸川乱歩/灰神楽、毒草
梶井基次郎/桜の樹の下には
田中貢太郎/位牌田、死体を喫う学生、地獄の使、雑木林の中、葬式の行列、天井からぶらさがる足、花の咲く比、屋根の上の黒猫
「葬式の行列」は、牧逸馬の「或る殺人事件」と似てるけど、亜種って感じのやつであった(まだ探している)。→その後、見つけました!西尾正の「八月の狂気」であった。すっきりした~。
テオフィル・ゴーティエ/クラリモンド(岡本綺堂訳)
国枝史郎/日本探偵小説界寸評
野村胡堂/銭形平次捕物控 244凧の糸目
夢野久作/S岬西洋婦人絞殺事件、近眼芸妓と迷宮事件
平山蘆江/怪談
〈論創ミステリ叢書〉補遺
中村美与子/猟奇地界、吉田御殿、裸行進曲、女体地獄、極楽の門
西尾正/情痴温泉、地獄のドン・ファン
「地獄の~」は、探偵小説選Ⅱで「地獄の妖婦」として載っていたものと内容が同じっぽい(手元にないから読み比べ出来てない)。ただ、妖婦の方は「多分西尾の作品」と解説にあったので、その後西尾の筆と確認されたドン・ファンが見付かったようであります。知らんけど。
梶井基次郎/桜の樹の下には
田中貢太郎/位牌田、死体を喫う学生、地獄の使、雑木林の中、葬式の行列、天井からぶらさがる足、花の咲く比、屋根の上の黒猫
「葬式の行列」は、牧逸馬の「或る殺人事件」と似てるけど、亜種って感じのやつであった(まだ探している)。→その後、見つけました!西尾正の「八月の狂気」であった。すっきりした~。
テオフィル・ゴーティエ/クラリモンド(岡本綺堂訳)
国枝史郎/日本探偵小説界寸評
野村胡堂/銭形平次捕物控 244凧の糸目
夢野久作/S岬西洋婦人絞殺事件、近眼芸妓と迷宮事件
平山蘆江/怪談
〈論創ミステリ叢書〉補遺
中村美与子/猟奇地界、吉田御殿、裸行進曲、女体地獄、極楽の門
西尾正/情痴温泉、地獄のドン・ファン
「地獄の~」は、探偵小説選Ⅱで「地獄の妖婦」として載っていたものと内容が同じっぽい(手元にないから読み比べ出来てない)。ただ、妖婦の方は「多分西尾の作品」と解説にあったので、その後西尾の筆と確認されたドン・ファンが見付かったようであります。知らんけど。