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[創作篇]
・三十九号室の女/弁護士になったが新聞記者になりたい須藤千代二。東京駅にいると、東京ホテルから電話がかかってきたと呼び出される。電話に出ると知らない女の断末魔が聞こえ…
→弁護士と新聞記者がコンビを組んでホテルで起きた殺人事件の謎を追う。『森下雨村探偵小説選』収録作品より断然読み易かった。作品については、(以下ネタバレ反転)元凶のバカ息子に何のお咎めも無いのが解せん。清川もさー、半田氏に恩があるのかも知らんがモウ没落して金も無い家なんだから見切り付けて出ていけば良いのに。バカ息子が手を付けた女の始末に奔走したり殺人の証拠隠滅に関わらされたり、割が合わんデショ。兎に角バカ息子がへらへら金持ち女と新居で新婚生活してんのが気に食わん…不幸になれ…!!(反転終わり)
・四ツの指輪/三千円の指輪が盗まれたと、駆け出しの探偵・松江の元を訪れた山川氏。山川氏が帰った後に山川夫人や娘がやって来て、本物の指輪と二つの模造品を預けていったが、鑑定の結果、三つとも模造品である事が判明し…
・博士の消失/探偵M君の話――深夜急患を診察しに出て行ったまま帰ってこない博士。夫人が急患の出た家に連絡すると、博士は来ていないばかりか、急患すら居ないと告げられM探偵の元へ訪れたのだった…
→「犯人は先生で、探偵は生徒」と言うM探偵の話。夫人を「婦人にしては珍しく冷静な頭脳をもった女」と称しているが、結局気が動転してて犯人の声と博士の声を聞き違えたってオチ。「女は馬鹿」ってゆう当時の主流か…結局雨村もただの人か…
・耳隠しの女/洋画家に心中を迫られ揉み合っているうちに相手を刺してしまった令嬢。誰も見ていないのを幸いに、その場を逃げたが、「耳隠しの仙子」という悪人が一部始終を目撃しており、仲間の男と共に強請りを企てて…
・幽霊盗賊(どろぼう)
→乱歩の怪人二十面相みたいな奴が出てくる話。白昼堂々盗みを働き映画の撮影と偽ってお巡りさんを騙して逃げる・職人に化けて厳重な警戒網を掻い潜る(チェスタトン得意の「見えない人」トリック)等、どっちが先かは知らんが「怪人二十面相シリーズのお約束」を踏襲してるのが面白くないよねぇ…つか、少年少女向けってこうゆうパタン使い過ぎが過ぎる。不木も書いてた気がする。こーゆうパタンの使いまわしが探偵小説を一段下の小説ジャンルに捉えられていた一要因なのでは??
・深夜の冒険
→小坂博士の書いた科学探偵に憧れる少年が、盗賊に出し抜かれた三刑事にかわって盗賊の隠れ家を突き止める話。お礼を贈ると言う刑事たちに少年がねだったものがオチになってて良いね。
・三ツの証拠/かつて鬼刑事として悪党から恐れられた祖父を持つ直木東一郎君が解決した最初の事件の話――東一郎君が床屋で髪を切ってもらっていると、出先から帰宅した床屋の店主が金庫にしまっておいた金が盗まれたと騒ぎ出し…
→最後におじいさんが床屋の休日を指摘しているあたり、元鬼刑事の面目躍如ってかんじで好き。
・喜卦谷(きけや)君に訊け/喜卦谷君は社長の命令で、なし園へ代金を現金で支払う為に新潟へ向かった。なし園の老人は酷く旧弊な人物で、銀行を信用せず自宅のどこかに現金を隠しているらしい。偶然老人が金を隠している現場を見てしまった喜卦谷君はその金を盗んでしまう。帰ってからも罪の意識に苛まれる彼だった…
→バレて身の破滅かと思いきや…しかしマァ、ろくでもない女に引っかかったな本性判って結果オーライじゃない??
・黒衣の女
→金井の根性を試す為に矢口を死なすとか(遺族には金渡して解決しようとする。人情とかないのか!)、そもそもたかが女一人に皆踊らされ過ぎでは??金井自身も死にかけてるしね??つーか万里子は探偵でもなんでもないのにギャングと対等に渡り合ってんの何で…??色々ご都合主義過ぎて三流小説じみてると思う。
・四本指の男
→「幽霊盗賊」と同じく、勇敢な少年がスカウトされて悪に立ち向かう話。
・珍客/十年前に届いた手紙を見付けた久保田氏。それは幼友達からの「職を失い生活に困っている。仕事を紹介してくれないか」という内容のものだった。久保田氏は新聞に尋ね人の広告を出したが一向に連絡がない。諦めかけた頃、ついに彼――相沢藤吉が久保田氏の元を訪ねてきて…
→大体アレがソレなパタンだなって読んでたけど、共通の昔話がある点が疑問だった…成程そーゆう事かぁ…そしてじんわり来るオチが付いてて読後感が良い。

[評論・随筆篇]
シャグラン・ブリッヂのあそび方/探偵新作家現はる/探偵犯罪考/探偵小説の見方/悪戯者
「シャグラン~」は、甲賀三郎が考案したトランプの遊び方を解説したやつ。全然判らん。因みに「シャグラン」はフランス語で「煩悶」「憂愁」とかゆう意味だそーな(名付け親はフランス語に詳しい平林初之輔らしい)。「探偵犯罪考」は仏・英の元祖名探偵実話と犯罪実話。
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2000年発行だからちょっと古い情報だけど、久し振りにノンフィクション読んだ。
有名な有毒植物からあんま知らない有毒植物まで。
筆者が実際に食べてみた話から、殺人に使用された毒、古代から処刑に使われた毒、宗教の儀式として使われた神聖な毒、など。時代や使用する人種によって良薬にも毒薬にも使われてきた毒のお話。

以下本文に登場する有毒植物と症状の個人的メモ
羽志主水(はし・もんど/1884-1957)
長野県生まれ。本名・松橋紋三。
東京帝国大学医科卒業後、山形の病院に勤めるが、八、九年後東京で開業。1925年『新青年』に「蠅の肢」が掲載されデビューするが、四編で創作の筆を断つ。57年死去。

・蠅の肢(あし):独逸のソーンダイク博士と謳われているエルンスト博士の元に陸軍の機密部から、理学研究をする青年の殺人未遂事件の捜査の依頼され…
→25年発表。医事雑誌に出そうかと小酒井不木に見せたところ、『新青年』に掲載されたという。ドイツ人のキーフェル(=松の意)氏作・羽志主水(=橋紋三のもじり)翻訳という体裁で発表したかったけど、「日本、不衛生だよね」ってオチだったのでヤメさせられたって。

・監獄部屋:北海道で鉄道敷設その他の肉体労働を強いられている約三千人の男たち。虐待・暴力・殺人が日常茶飯事の「監獄部屋」と呼ばれる現場に、政府の役人が巡検に来る事になり、過酷な労働現場を訴えようと彼らは期待する…
→26年発表。社会派という事で、当時もの凄くもてはやされ羽志の代表作と認知されている作品。ご子息の話では、父親は芝居に通ずるどんでん返しを狙った作品なので、何故こんなに評価されてるのかわからん、との事。もの凄く救いの無い話だよ…

・越後獅子:火事の焼跡から半焦げの女性の遺体が見付かるが、頸に手拭がきつく巻き付いていた。喧嘩が絶えなかった夫が容疑者として拘引されたが、ラジオを聞きに行っていたとアリバイを主張して…
→26年発表。ラジオがアリバイに利用されるんだけど、書き方がイマイチなんで、某海外ミステリの某トリック的な使われ方なのかと誤読してしまう…しかもラジオで流れたという長唄の歌詞(?)の順序が間違っていたらしい。終わらせ方も良く判らん(そもそも長唄とか知らんから、オチをドウ解釈すれば良いのかが判らない)。

・天佑(センナンセンス)
→29年発表。うむ、判らん。
 ※日本が米国に喧嘩売った時代のピリピリしてる時に鉄不足で苦しんでいたら日本に巨大隕石(鉄がイッパイ含まれている)落ちてきてラッキーばんざいってゆう話です。



処女作について/雁釣り/唯灸(ただきゅう)/涙香の思出/マイクロフォン

・・・・・・

水上呂理(みなかみ・ろり/1896-1989)
福島県生まれ。本名・石川陸一郎。
少年時代を神保町で過ごし、中学は福島へ通う。明治大学法科入学、学費を稼ぐ為、東京日日新聞社の夜間編集部に勤務。1928年『新青年』に「精神分析」が掲載されデビュー。翻訳の仕事と新聞社が忙しく沈黙するが33年創作を再開。だが木々高太郎の登場で筆を断つ。89年死去。

・精神分析:精神病を専攻して大学の助手をしている青柳の親友・翠川の元に持ち込まれた見合いは、悉く不思議な現象によって失敗していた。見合い写真が紛失したり、相手に送った戸籍にいつの間にか朱線が引かれていたり…ついには翠川を慕う小間使いの自殺未遂まで起こって…
→28年発表。結構面白かった。マァ、フロイトの精神分析は型通りの解釈だけど…

・蹠(あしうら)の衝動:「土踏まずを地べたに押し付けたい」衝動によって精神衰弱を患っている門脇医学士が検事の元を訪れた。彼は先日起きた小説家による同居人殺害事件について重大な証言をしに来たのであった…
→33年発表。

・犬の芸当:サーカス団の団長・青田が拳銃を下顎部から撃たれて死亡した。その部屋には、青田に良く懐いたサーカスの人気犬・ジャックが不安定な姿勢でチンチンをしていた。団員の証言で、容疑者として飯能が拘留されたが、彼は青田自身が誤って自分を撃ったのだと無実を主張し…
→33年発表。これジャック目線で読むとほんと切ない…

・麻痺性癡呆症患者の犯罪工作:「心神喪失者の行為は罪を問われない」という刑法第三十九条を逆手に取り、精神異常者になって子殺しを行った田沼の手記が見付かった。そこには暗示によって狂人となり養子の逸子を殺す計画が書かれていたが、実際に殺されたのは実子の真平だった。彼は本当に狂人になってしまったのだろうか…
→34年発表。

・驚き盤:失踪した同僚・中原を探す為、飯坂温泉にやって来た鷲見(すみ)。中原は金持ちの男と共にやって来たが、喧嘩をして中原は先に帰ったという。その後、中原は発見されたが酸性の有機質毒による中毒で死んでしまっていた…
→34年発表。

・石は語らず:今では別々の化学会社に務める元同僚の荒谷と杉森に、ポリプロピレン技術導入交渉の為、ミラノに派遣される会社を賭け碁によって決めようと持ちかけた元上司の進藤。碁に勝った荒谷の会社が派遣されたが、仮契約書にサインをする日、杉森の会社の交渉団が現れて…
→76年発表。



処女作の思ひ出/お問合せ/燃えない焔

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星田三平(ほしだ・さんぺい/1913-1963)
愛媛県生まれ。本名・飯尾傳(つとう)。
旧制松山中学在学中の17歳頃に「ヱル・ベチヨオ」の原型となる作品を書く。1930年『新青年』に「せんとらる地球市建設記録」が掲載されデビュー。横浜の友人宅に寄宿して制作に励んだが、半年程して帰郷。地元の新聞社に勤めながら創作を続けたが戦災により焼失。63年死去。

・せんとらる地球市建設記録:函館を出航した船が、犬吠岬の沖で難破してしまい漂流する私・星田と友人の佐山、そして佐山が助けた幼女の「ナン子」。十日後、千葉県に漂着した私達が眼にしたのは、人が死に絶えた町だった…
→30年発表。日本におけるSFの父・海野十三がSF探偵小説を発表するよりも前に出てきたSF探偵小説。漂流している間に人が死に絶え(後に山に殺人犯を探しに行っていた巡査四人と出会う)てしまった日本。何故死んでしまったのか、何が起きたのか…。謎を深めようと配されたであろう人物の回収が出来ていない点は気になるけど、なかなか面白かった。

・探偵殺害事件:M高等学校文科学生の僕と、同級生で『探偵屋』と渾名される涼(すずむ)が乗った夜行列車の一等室で、男が銃殺され容疑者は列車から飛び降りた。外は嵐であるのに、被害者の座っていた側の車窓は上部三分の一ほど開いていた。間もなく、被害者はある事件の調査の為に雇われた探偵だと判り…
→31年発表。

・落下傘嬢(パラシュートガール)殺害事件:日本落下傘研究協会のパラシュートガール・道代は、飛行機から飛び降りたが、開傘索が切断されていた為パラシュートが開かず転落死した。道代と共に飛び降りた将子、道代に振られた中村、二等飛行士の岡田、協会主任のH―氏、そして道代の婚約者・永井。索を切ったと思われる爪切り鋏には「N」と記されていた…
→31年発表。

・ヱル・ベチヨオ:「きみょう屋敷」と呼ばれる邸宅の脇を散歩するのが日課になっている竜さんは、ひょんな事からその家の娘と知り合った。彼女の父親は、ある日を境に別人のようになってしまったという。父親は、命を狙われていると思っているようで、特に七月から九月までが恐怖や警戒が強くなるらしい。『エル・ベチョオ』が恐れの根源のようだが、『エル・ベチョオ』とは何なのか…
→32年発表。

・米国(アメリカ)の戦慄:刑務所に服役中のアル・カポネがシカゴにいるらしい――そんな噂がシカゴの街に拡がった。シカゴ警視庁は、噂の根原をつきとめる為、ある男に電報を送った。翌日、ニューヨークからやって来たのは貴族出の素人探偵フィロ・ヴァンス(と、記録者ヴァン・ダイン)だった…
→33年発表。と、とんでもないオチだ…怒られるタイプのやつやで…

・もだん・しんごう:昨春のボクシング大会でライバルの岡澤に敗れた尾谷は、今年こそと烈しい練習ぶりを見せ、マネージャーもファン達も、今年の大会は彼が優勝するだろうと思っていた。しかし三回戦で当たった岡澤に再び敗れてしまったのだが、それには訳があったのだ…
→33年発表。もだん・しんごうとはジェスチャーゲームの事らしい。

・偽視界:峯川は新進の理学者である。彼は神経組織の研究の為、一人の女を買い取った。峯川は視神経を流れるものに似た電流を頭脳に通じる事で資格中枢を刺激して視覚を起こす――その場にないものを「見ている」と認識させる――実験を、自身と買い取った女に行っていた…
→34年発表。

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米田三星(よねだ・さんせい/1905-2000頃)
奈良県生まれ。本名・庄三郎。
大阪帝国大学医学部在学中の1930年に書いた「生きてゐる皮膚」が31年『新青年』に掲載されデビュー。医学ミステリを発表するが、木々高太郎のデビューによって創作意欲を失う。37年、日中戦争が勃発し召集され、軍医として各地を転戦するが病を得て帰国。48年から内科医として開業。1999年か2000年に死去。

・生きてゐる皮膚:大村博士との間に色々な噂を立てられた女流作家・川口淳子が私の受け持ちの患者になった。彼女の右乳の上から右腋窩まで出来た腫瘍――それは表皮癌だった。その細胞を顕微鏡で見た彼女は「皮膚が生きている…皮膚の呪い…」と言って気を失ってしまった。後日腫瘍を切除する手術に挑んだ彼女だが、体力が持たずに亡くなってしまった。彼女が口走った「皮膚の呪い」とは…
→31年発表。ドイルの恐怖小説とか横溝の短編を思い起こさせる…ところで、この時代の医学を学んだミスおたは皆小酒井不木を読んで「私も書いてみようφ(..)」てノリが良いね、こうやって高学歴な人がミステリ書くことによってミステリの地位向上に貢献したと思うと不木は偉大だ…

・蜘蛛:心友を殺したとして独房に入れられた男。男は被害者の妻に横恋慕し、彼への殺意を日記に認めていたし、殺害現場にいた唯一の人物であった。しかし自分は本当に彼を殺したのだろうか…自問自答する男…
→31年発表。動機も状況も男の犯行である事が明白だけど、そこには姦計が…それにしてもタイトルの蜘蛛とは…?と思っていたらそこでかーーー!!

・告げ口心臓:A君の父が、僕がカルシウム注射を打った直後に突然死んでしまった。その死について、僕は恐ろしい事実を知っている。十九年前、皮膚科専門の病院で働いていたある看護婦の運命について語らねばならぬ…
→31年発表。このタイトル、ポーの作品だと思ってた、というかポーにも「告げ口心臓」て作品あるよね…?『ポー 最後の五日間』でモチーフにした事件があった記憶。

・血劇:血液型研究をしている村主君の元へ訪れた男は、妻の不貞を疑い、妻と二人の息子の血液鑑定を依頼してきた…
→32年発表。ショートショート。



児を産む死人/森下雨村さんと私
・秀ッペ フォックス・マーチ:久し振りに上野へやって来たお秀は、新規オープンしていた美容院に入ってみた。特別料金を払って店主に施術を受けたが、技量は他の者と変わらない上にセクハラまで受けたお秀は、腹いせに店主の財布を奪ってやった。店を出た所で子どもを踏みそうになり、抱き上げて謝っていると店主が追ってきたので逃げ出すも、大井川刑事に捕まってしまう。しかし、ポケットを検めると掏り盗った筈の財布はなくなっていて…
→30年発表。

・清風荘の事件:美智子の兄・神井海軍大尉が、世界一周の途中日本へ立ち寄った飛行客船の乗組員を清風荘に招待した日、大尉が作成した設計図が盗まれた。犯人は兄妹とも仲の良い啓吉という漁師の青年だとして警察が行方を捜索していた…
→30年発表。未完の『月光の曲』前日譚。美智子さんは『月光の曲』中盤(未完なので、発表分的には終盤)で誘拐されちゃう子だね。



・梅由兵衛捕物噺
 義賊与太郎/徳利の別れ/つきもの船/奉行泣かせ/提灯と釣鐘/女難の功名/初雪残足跡(ハツユキニノコルアシアト)/若様やくざ/怪談涼み船/空巣ねらひ/秋の夜ぞら/咲いた桜に/金貨三枚目/一寸一風呂

・渋団扇
 渋団扇 一/志ぶうちは 二/渋うちわ 三
→芸妓・梅香との愛の記録が主。戦争色が強まっていく中、不謹慎かと思いつつ芸妓に会いたくて会いに行ったり、召集されていく若い仲間がいたりして、切ない感じもするけど、だいたい下ネタ。



・付録
→「スター失踪」(※『久山秀子探偵小説選Ⅱ』収録の「女優の失踪」)の登場人物メモとプロット。
[創作篇]
〈はと(蒙に鳥)ノ探偵譚〉
はとのという17歳の少年探偵(のち青年探偵)シリーズ。当時巡査だった伴岡氏から聞いた、という形式で発表された(が、シリーズ後半は出てこなくなってる)
・箪笥の中の囚人(めしうど):突然操作課長を隠退した伴岡氏に聞いた、香西家の箪笥から縛られた男が出てきた事件。
→33年発表。はとのが解決した最初の事件。はとの中三。

・花爆弾:非常防空大演習中に花火師の家で花火が上がり家事になる。導火線が見付かった事から、家主が火災保険目当てに放火したと疑われるが…
→33年発表。同級生・吉村登場。柔道二段。いいキャラしてる。

・空中踊子:広告気球が死体をぶら下げて浮いているのが発見される。前夜、被害者と一緒に居るところを目撃された吉村が容疑者として捕まってしまい…
→34年発表。はとの吉村、名古屋で高校生してる!何で名古屋なんだろ…

・寝顔:兄の教会に寄宿する私の元にはとのが訪れる。教会の門前に置かれた「ねがい箱」に投函された匿名の少女からの手紙にはとのは興味を持ち…
→35年発表。高校を卒業し東京へ戻ったはとのが、手紙だけを手掛かりに少女の身に起きた事やら居場所やらを突き止めてゆくよ。眼もいいし嗅覚も優れているはとの…吉村も伴岡巡査も居ないのが残念><

・双眼鏡(めがね)で聴く
→36年発表。ネタバレが過ぎるタイトル。軍部で起きたスパイ事件。はとのシリーズラスト。最後に吉村か伴岡どちらか出て欲しかったよね。



・第二十九番目の父:大臣官邸や伯爵家等の名士や高官の屋敷の玄関先で「父に会わせてください」と怒鳴る男の記事が出ていたが、この男は私の友人だった。偶然再会した彼は新聞に書かれていたような精神異常者ではなかった…
→32年発表。名士から強請り取った金で暮す計介が自殺した事で、恐喝されていた名士たちによる口封じかと思いきや。

・鮫人(こうじん)の掟:海底を調査していた潜水士が幽霊を見たと言い出す。一笑に付した署員だったが、一緒に潜っていた潜水士が血を流して死んでいた事で騒ぎとなる。検死した竹田医師は殺人と判定したが信じてもらえず、客の堤に相談する…
→32年発表。堤といえば、「探偵開業」にも出てたけど、これは別の人っぽい。寧ろ引越してった方の堤さんかもしれん。知らんけど。

・鍋:たった一枚の五十銭銀貨によって不幸になったという青年の話…
→33年発表。まさに闇鍋…

・樽開かず――謎物語を好みたまふひとびとへ――:樽の家に住む老哲学者が大公に呼ばれて城へ行ったきり戻ってこない。唯一の弟子・ポトムススは賄賂を使って衛兵や見張りの話を聞くと、師は牢に入れられてしまったらしい。植物が育つ土が無く、かつ部外者が絶対に入れない場所に薔薇の花があった謎を解けなかったからだというが、老師に解けぬ謎はないと疑わないポトムススは、何故老師が嘘をついたのかを推理する…
→34年発表。ギリシャ時代が舞台の歴史ミステリ。これ面白い。しかしポトムススは人が良いね…甘いっつうか…悪の大公が口封じしない訳ないじゃん…

・叮寧左門:自殺しようとした男を助けた同心・坂東左門。男はある浪人父娘が「不審あり」として捕まってしまった事を告げる。父娘は、軍資金を集めると言って商家に押し入り生首を見せて金を脅し取る強盗一味の嫌疑をかけられていたのだ…
→34年発表、荒木十三郎名義。思い込みを利用した心理トリックや…

・二十一番街の客
→46年発表、女銭外二名義。日本にも私立探偵いて良いジャン!俺がなってやんよ!というノリで母に金を出させて事務所を借り美人秘書まで雇った詮作君。探偵開業の数日後、ついに初めての客が来る。客を見てホームズばりの身元推理をぶちかまして美人秘書をびっくりさせる話。ユーモアミステリ!

・印度手品:インド滞在中に起きた事。中国人の案内人がもてなそうとするが、私は綺麗な観光地より地元の薄汚い通りの方に惹かれるので、案内人は不満そう。私は、「白昼殺人」という手品を何度も見るが、ある時に見た手品が、本当の殺人事件になってしまい…
→47年発表、女銭外二名義。

[評論・随筆篇]
やけ敬の話――山下利三郎氏へのお答へその他――/大下宇陀児/フレチヤーの大・オップンハイムの強さ/才気過人/支那の探偵小説/近藤勇の刀/大下宇陀児を語る/ポワロ読後/広瀬中佐の前/支那探偵案「仙城奇案」/盲人の蛇に等し/面白い話/探偵小説の面白さと面白くなさ/アンケート
「やけ敬~」は、「赤鱏のはらわた」を読んだ山下から「岡山で同じような話聞いたよ」って言われてその反論(「ぱくりじゃねーし」と)。「フレチヤー~」は森下雨村論。「才気過人」は水谷準論。
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寝ても覚めてもミステリが好き。最近はもっぱら「探偵小説」ブームで新しい作家さんを良く知らない。
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