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[創作篇]
・ロオランサンの女の事件/友人N・Kが従姉だと紹介したU子夫人は、マリー・ロオランサンが好んで描く狐に似た奇妙な顔の女のようだった。その彼女が何者かに扼殺された。私はN・Kの仕業ではないかと疑い…
→1930年発表。東一郎名義。N・Kが中性的な顔立ちだからって女装に気付かんボンヤリさんな主人公の推測だからあんまり当てにならなさそう。
・鼻→1954年発表。豆腐屋の盗難事件から足が付いたある犯罪の話。十九歳で盲目となった花輪正一が、視覚以外の情報を元に事件を推測していく素人探偵シリーズ。作者が盲学校の教師をしていたからか「みえない」にも種類があるとか盲人にもカンが鋭い人とそうでもない人がいるとか盲人の描き方にリアリティがある。
・顔/盲学校で教師をしている正一が帰宅すると、一通のスミ字(=点字ではない、印刷や書かれた文字のこと)の手紙が届いていた。差出人に心当たりはないが、妻に読んでもらうと、どうやら旧友・桑木からの手紙らしい。生花の師匠をしていた彼は、ある日行方不明になったのだった…
→1954年発表。初登場時の妻は眼鏡でも矯正できない程の弱視、という設定だが、次からは普通の視力を持っている設定になっている。
・耳/銭湯で旧友の須藤と十年ぶりに再会した正一。その日のうちに須藤の家を訪ねて泊まる事になった。夜も遅くなって、名刺以外の手掛かりは残さない、通称「名刺泥棒」の話が出た。犯人らしい男を須藤の知り合いの渡辺巡査が目撃したというのがこの近くらしい。翌週、正一は須藤に渡辺巡査の所に連れていくよう求めたのだった…
→1954年発表。視覚情報が無い為に先入観で誤った推測をしてしまった話。でも結果オーライ。
・指/署名の無いスミ字の手紙を受け取った正一。妻に読んでもらうと、少し前に入院していた時に同室だったという者からだった。入院中に正一が語った三年前の事件に関しての告白文らしい。三年前の事件とは、正一が借りていた家の一階に住む若い夫婦の赤ん坊が惨殺された未解決の事件のことで…
→1954年発表。正常な視力を持つ妻登場回。赤ちゃんは獣に殺されたらしいが、どうやって室内に入ったか、という話。
・声/藤棚へ集まった人々の話を聞く事を楽しみとしていた時分の頃、二人の男が話すのを聞いた正一は、彼らの声に聞き覚えがあるような気がした。三年前、映画館のトイレで若い女性が殺された事件があったのだが、その時に聞いた声だった。眼の見えない正一は二人を尾行する事も出来ず途方に暮れるが…
→1955年発表。
・二又道(ふたまたみち)→1955年発表。正一ではない盲目の人が子どもだった頃の話。一人で川遊びに出掛けたら迷子になって近くの農家らしい家に助けを求めたら聞きなれない機械の音を聞いた私。帰宅後巡査をしている伯父にその話をすると、翌日案内するように言われたが…
・不整形/頼まれて按摩として連れて行かれた正一。患者を揉んでいると、小児麻痺をやった事があり、左手の指が三本しかないと判った。かつて長崎に住んでいたという綿貫の三本指の感触が、二十年前正一が長崎で暮らしていた時に世話になった客が殺された事件のことを思い出させた。いつもなら迷わず客の元へ辿り着けるのだが、想定外の事が度重なり道を誤ってしまった所を三本指で足を引き摺った男に助けられた。客の家へ辿り着くと、家主は瀕死の状態にあり「ビッコの三本指は…」と言うと息絶えた。その時の三本指の男は綿貫だったのだろうか…
→1955年発表。真相は、藪の中…
・落胤の恐怖→1955年発表。これは盲人が出てこない話。女漁りしている間に子どもが出来ているかもしらんという話から浮気性の妻と別れて独身生活を続ける男が、ひょっとして前妻との間に子が出来ていたかもしらん、そしてその子が犯罪を犯し自分を父だと告げたら…と不安に見舞われる話。
・悪の系譜/震災で両親と戸籍を失った殿村西一郎の処女詩集出版記念パーティーに現れた西一郎と名乗った男が、『悪の系譜』の作者について皆が知らない事を申し上げようと語りだした…
→1955年発表。詐欺を行い他人の名を乗っ取った男も悪だけど、その為に召集され死線を彷徨い更に失明しちゃうし、男のなりすましを調べ上げて彼の家に不法侵入して日記を盗み読んだりした本物の殿村も充分ヤベー奴だからな…悪とは…
・北を向いている顔/盲人の金杉老人に呼ばれて泊まりに来た、同じく盲人の玉井。その夜、盲人の家ばかり狙う強盗が押し入り老人の金を盗んでいった。二ケ月後、玉井の知らせで犯人が逮捕されたが、見えない彼がどうやって犯人を識別できたのか…
→1955年発表。盲学校の教師をしていたから知れた視えない世界の多様性を取り入れた話。
・五万円の小切手/正一の盲人の友人・相川の甥が、相川が客死したと知らせに来た。生前、相川は家に隠した五万円の小切手を見付ける事が出来たら甥にやると言っていたが、今も見付からないという。正一は甥に頼まれ小切手を探しに行く。その夜仕事で出張し、五日後に帰ると相川の家で火事騒ぎがあったという…
→1956年発表。正一は、探偵小説好きだが決して探偵ではない、という話。
・それを見ていた女→1956年発表。向かいの家を見つめていた女の話。被害者への同情心はこれっぽちも湧かない。
・レンズの蔭の殺人→1957年発表。失明とカメラと探偵譚。
・犯人(ホシ)は声を残した→1958年発表。祭の夜、若い男が殺害された。目撃者はいなかったが、男女の言い争う声がしたとの証言があるが…
・魔の大烏賊→1959年発表。東一郎名義だが別人の作品かもしれないとの事。船上のホラー系。
・宝石→1961年発表。宝石専門の掏摸を追いかけた刑事が身体検査をしても盗まれた宝石は見つからず、後日その宝石と掏摸の死体が発見された。掏摸は宝石をどこに隠していたのか、という話。
・三人は逃亡した→1961年発表。強盗三人がどうやって逃げ切ったのか。暢気な時代だなぁ…
・盲目夫婦の死→1962年発表。毒キノコを食べて死んだ盲人夫婦。知らぬが仏だった話。
・蛇→1962年発表。三十年ぶりに再会した実業家と画家。実業家が出会った蛇を飼う女の話…からのユーモア。
・死体ゆずります/新聞に掲載された「死体ゆずります」の三行広告。C医大の学生が面白がって連絡をすると、翌日、大学に死体が運び込まれていて…
→1962年発表。メンドウな死体の片付け方講座。
・走狗/盲人が犬の散歩のバイトをする話。どうも胡散臭いと仲間に言われて恩師である花輪正一に相談へ行くと、正一は警察に頼まれて犯罪に関わっている盲人を探しているという…
→1976年、遺稿として発表された作品。

[随筆篇]
盲人その日その日――盲学校教師のノート――/カンの話――盲学校教師のノート――/探偵映画プラスアルファ――「黒い画集」を観て/アンケート
父の物語 書くこと一筋の人生だった!  日野多香子・・・娘(児童文学者)による賛十の思い出エッセイ。

よしの・さんじゅう(1903-1973)
東京都生まれ。本名・永田東一郎(とういちろう)。
父親の仕事の関係で大阪で育つ。早稲田大学商学部卒業。森永製菓の経理部へ就職するが、健康上の理由で二年後に退社。東一郎(あずま・いちろう)名義で純文学作品を発表。
1930年『新青年』に「ロオランサンの女の事件」を東一郎名義で発表。『彼の小説の世界』『出発』を上梓。
戦後は疎開先の山形県で高校教師を務め、東京に戻ると盲学校の教師となり、その後の半生を盲人教育に捧げた。
54年、木々高太郎の推薦で『探偵実話』に「鼻」が掲載される。以降吉野賛十名義で作品を発表。
62年「死体ゆずります」で創作の筆が途絶えた。73年死去。
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家督相続人のみが代々受け継いできた秘密の儀式の復活を思いついたクウィリン家の長男ロジャー。儀式は、殺人が起き幽霊が出ると噂される部屋で行われていた。
兄の身を心配するピーターは、ロジャーの友人キャッスル警部に警護を求めるが、仕事で呼び戻されてしまう。警部が自分の代わりにと差し向けたのは、友人でありしろうと探偵でもあるアルジー・ローレンスだった。
アルジーは幽霊騒ぎに乗じてロジャーに恨みを持つ者が何かしでかすのではと考え、地元の巡査部長ハーディングに協力を求めた。屋外からは巡査部長、室内からはアルジーとピーターが見張っていたにも関わらず、ロジャーは密室で刺殺されてしまう。部屋に入った者も出て行った者もおらず、窓の下のぬかるんだ花壇の土には足跡すら残っていなかった。かつてこの部屋で息子を殺し、自らも発作で死に幽霊となったトーマス老の仕業なのか…

→1953年発表。ミスおたの密室研究家が書いた探偵小説。両親の遺産を継いで働かなくても生活できる青年が、趣味で探偵をしてるとゆうので羨ましくって「探偵=犯人」にならんかと念じながら読んでたんだけど、意外なあの人が…そんなぁ…
探偵が犯人に成り得る動機=ロジャーの婚約者に横恋慕したため ってとこまで想定してたんだけどなぁ!婚約者が死んで探偵とハッピーエンドになるかと思いきや、真逆この結末になるとは…安易なオチになると思っていたのに意外…
面白かった!
・赤島砂上(あかしまさじょう)/西日本裸体主義者(ヌーディスト)クラブ会長で高校時代の友人・富沢に勧められ妻と共に会員となった箱崎。三十人余りの会員たちは電気もガスもない赤島に上陸し、全裸で過ごしていた。しかし、会員しか上陸できない赤島に、服を着た男が現れ、会員の一人である冬子を誘拐しようとし…
→1980年発表。チェスタトン的。
・球形の楽園/乗物恐怖症の男が特別緊急避難所として作らせた球形のカプセルシェルター。その中で男は死んでいた。背中を刃物で切られ、顔面を殴られていたが、中には被害者しか居らず、凶器も発見されなかった…
→1981年発表。現場が現場だからこのトリックが出来るのだね。
・歯痛(はいた)の思い出/抜歯の為、行方不明の宝石商の捜査から外された井伊刑事。大学附属病院の受付で一緒になった亜と上岡と共に診察を受けていると、抜かれた金歯を病院がネコババしたと喚く男が現れ…
→1981年発表。あいうえおかきくけこ…
・双頭の蛸/「週刊人間」編集部に送られてきた、双頭の蛸を目撃したという少年の話を聞く為に北海道へ発った亀沢。友人の小村井と共に最寄り駅の小学校へ寄ると銃声が聞こえ、小村井のリュックに穴が開いていた。銃を撃ったのは蛸を目撃した少年で、校長の話によると、彼は学校内の問題児であり、投書も信用できないと言う。しかし記事を書く為に東京からダイバーを呼んで調査を始めたところ、ダイバーの一人が銃で撃たれ死亡した…
→1982年発表。銃の位置から亜と共に行動していた草藤氏が容疑者として連行されてしまう。彼を救う為、珍しく亜が積極的に動いてる!
・飯鉢山(いいばちやま)山腹/コノドントの化石採取の為、飯鉢山の旧道を訪れた中学校教師の田岡。同行した田岡の妻と生徒の小永井、そしてカメラマンの亜。旧道の手前での撮影が終わる頃、乗用車が猛スピードで通り過ぎて行った。その後旧道の奥へ向かうと、谷底に車が転落しており、旧道の奥で崖崩れが起きていた。警察の調べで、車に乗っていた男は殺されてから車ごと谷に投げ込まれたという…
→1983年発表。
・赤の讃歌/美術評論家の阿佐は、赤を基調とした絵で注目され、今や絶大な人気を誇るようになった鏑鬼正一郎の伯父夫婦へのインタビューの為、編集員の旭名と共に赤臼山へやってきた。クロスズメバチに襲われていた生物学者の朝日と亜も同行し鏑鬼の伯父――浅日向家を訪問し、鏑鬼の話を聞いた。翌朝、真赤な朝焼けを見た亜は、鏑鬼正一郎についてある考えが浮かんだという…
→1983年発表。阿佐が感じた鏑鬼の絵に対する違和感の答えが。赤で有名になった男の本当の姿がかなしい…
・火事酒屋/火事を見るのが大好きな酒屋の銀蔵。妻の美毬は夫が火事見たさに放火でもしないかと心配していた。友人との食事会の帰り道で店の自転車が走り抜け、黒い乗用車が乱暴な運転で自転車と同じ方向に走り去って行ったのを見た美毬は後を追う事にした。見失って戻ろうとしたところで銀蔵が現れた。聞くと、酒の注文の電話があったので届けに行ったが、客は電話などしていないと言う。その時近くで火の手があがり、銀蔵は嬉々として現場に向かってしまった。一騒動あった後、火事の起こった家では出火前に死亡した死体が発見され、放火の疑いもあるとして銀蔵が連行されてしまい…
→1984年発表。このシリーズは、人間心理をついたやたら賢い犯人が多いなァと思った。消防署長の最後の一言は落語っぽくて面白い。
・亜愛一郎の逃亡/背が高く優男風の殺人犯が逃亡中だと聞かされたホテルニューグランド宮後の有江夫婦。大雪でキャンセルかと思われた二人の客――ミミズ研究家の東野と亜――がホテルに来たが、どうも様子がおかしい。翌日、二人が留守中に三角形の顔をした小柄な老婦人が現れ、亜はいないかと尋ねた。東野から誰かが訪ねてきても居ないと答えるよう頼まれていた主人が居ないと答えると、老婦人は外務省へ電話し、警察の出動を要請した。戻ってきた二人は離れに閉じこもったが、先程の老婦人が巡査をつれて離れに行くと、二人の姿は消えていて…
→1984年発表。亜と、毎回姿を現していた三角形の顔をした老婦人の正体が明かされ、今まで登場した人たちも再登場して楽しい幕切れに。
宇宙旅行都市計画の一環として、惑星コルキスへ向けて乗組員一万三十四名を乗せ旅を続ける宇宙船<アルゴ>。船内の全ての機能を管理する人口知能イアソンは、ある秘密を知った天文物理学者を殺害する。最近離婚して憂鬱状態だった事から、自殺として処理されたが、元夫のアーロン・ロスマンは自分が自殺の原因とされた事に怒りを覚え、彼女の死の真相を探ろうとする。アーロンを危険視したイアソンは、あらゆる手段で彼女の死が自殺であったと受け入れさせようとするが…

→1990年発表SFミステリ。しかも感情を持ったAIの叙述である。とんでもない「信用できない語り手」だよおお!
与えられる全てのデータも、生きるか死ぬかもAIが牛耳っているという恐ろしい状況(乗組員はアーロンを除いて皆イアソンを盲目的に信用している)の中、自身の行動パタンまで監視されているのにどうやってイアソンの「犯行」を見破るのか…
イアソンを通じてアーロンの人生(これがまた闇深過ぎるのよ)や自己中心的な思考を持っている事が浮き彫りになっていて、どっちに感情移入すれば良いのか判らんくなる…
引退した実業家のリカード氏の元へやって来た若くして発明家として財を成したウェザミル。彼の恋人・シーリアが同居している薔薇荘の主人で宝石蒐集家のドウレー夫人を殺害し失踪したという。恋人の無実を信じるウェザミルは、休暇でイギリスに来ているパリ警視庁の名探偵アノーに捜査に加わって欲しいと頼む為、彼の友人であるリカードを訪ねたのだった。凶器の紐を購入したのも庭に残された靴跡も、全てがシーリアの犯行であると物語っている中、アノーは違和感を覚える…

→1910年発表。アノーがけっこう、そこそこ嫌な性格だなぁと思いながら読んだ。リカード氏はホームズでいうところのワトスン役なんだけど、良い感じに虚栄心が強くて一生懸命アノーを出し抜こうとする(けど、大体アノーに見破られている)中年のおっさん。この人の存在が、犯人の被害者への憎悪と悪意に満ちた後半のしんどさを和らげている気がする…癒しのおっさん…
面白かったから『矢の家』も読もうと思う。
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寝ても覚めてもミステリが好き。最近はもっぱら「探偵小説」ブームで新しい作家さんを良く知らない。
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