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・創作篇―推理小説
三津木俊助・御子柴進の事件簿:鋼鉄魔人/まほうの金貨/のろいの王冠
→三津木は金田一シリーズにもちょぼちょぼ出てくる新聞記者。少年探偵シリーズでは自身も名探偵として名高い存在に。探偵小僧(このネーミングセンス…)こと御子柴少年を助手に、わるいやつらをつかまえるぞ!
良い大人(しかも名探偵と名高い)が怪人に裏をかかれてじだんだふんだり、ピストルの弾を弾き返すと判っているのに武器がピストルとか、情けない限り。
同じパタンである乱歩の怪人二十面相シリーズの方が魅力ある(?)ストーリィとキャラクタですね、何故なら乱歩は殺人が起きないから。小林少年の書き方も乱歩にお稚児趣味があったからか生き生きと可愛らしく書かれておる。挿絵もめちゃんこ美少年だしな。

鋼鉄魔人…アッ誤植発見!からだじゅう が さらだじゅう になっとる!

寄木細工の家
→遠足中の中学生たちが勝手な行動をして恐ろしい眼に遭う話。
自業自得じゃ一人位死んでも文句言えぬて。

げんとうどろぼう
→げんとう=幻燈。

地獄の花嫁
→綺堂の『青蛙堂鬼談』みたいに同士が集まって不思議話した時に書き留めておいた物の一遍、という設定。
引っ込み思案で一人で小説を読んでいるのが好きな「あたし」と美人で朗らかで活動的な珠緒。二人は正反対の性格だったが女学校では一番の親友だった。
卒業後、珠緒は許婚と結婚する事になり、あたしも手伝いで彼女の郷里へ行ったが、珠緒は別れて二月もしない間に痩せて顔色も悪くなっていた。色々問いただしたが口を割ろうとしない珠緒。だが、あたしは彼女の家で家政婦をしているお琴さんが原因ではないかと直感した。
そして結婚式当日、ウェディングドレスに着替えた珠緒が鏡の前に立っていると、そこに映し出されたのは珠緒と同じ花嫁衣裳を纏った骸骨の姿だった…
この話ケッコウ好きよ。

・創作篇―時代小説
智慧若捕物帳:雪だるま/とんびの行方/幽霊兄弟
→大岡越前の生まれ変わりと評判の町奉行・遠山左衛門の息子、智慧若こと千代若(15、6歳)と、彼の従者で12、3歳のちょン丸(本名は長丸だが誰もそう呼ばない設定)、いとこの小菊ちゃん(14歳。寺社奉行の娘)が主な登場人物。
雪だるま:大雪続きの江戸の辻に作られた夥しい数の雪だるまを壊して回る男の謎。こうも雪だるまが多いと死体が隠されていると思ってしまうが死者は出ないので安心して読めます。
とんびの行方:鳶に有難いお経を取られ自殺を図った小姓を助けた智慧若とちょン丸。半七の話では鷹が出てたね。
幽霊兄弟:季節外れの角兵衛獅子の兄弟を見かけた智慧若とちょン丸。自身番へ入っていった角兵衛獅子を追ったが、そこで兄弟は消えてしまう。

神変龍巻組
→もしも豊臣秀吉の孫・松国丸が生きていたらというイフの物語。国枝四郎系(ぶっとびすぎて通過点でページ使い過ぎて枚数制限に無理矢理収めた感の強いオチ)だと慄いたが、ちゃんといい感じに終わってるるる~。
八年前、自分の替え玉として殺された子どもを弔う為に隠れ家から出てきた松国丸。幕府側の侍に見付かり、徳川幕府に宣戦布告。それによって様々な思惑を持つ人物達に追われる事に…
ちょっとネタバレだけど…
実は生きていた真田幸村とその息子大助、猿飛佐助の忘れ形見の妖術使い・菊童。この三人と松国丸は一緒に暮らしていた。
海賊の女頭目、実は長曾我部盛親の娘が率いるのが龍巻組。部下に右近と左近、前髪の若者たくさん。このあたりが味方。
幕府を倒し、天下を取ろうと野心に燃える海賊の辰砂(しんしゃ)源兵衛。腹心の部下に天日坊と地雷太郎・人丸次郎の双子。この双子がお笑い担当。なかなか良い味出してる。
それから秀頼から信頼されていたにも関わらず、彼を裏切り徳川に寝返った小畑勘兵衛。
松国丸は捕まったり筏で流されたり金持ち同士の争いに巻き込まれたりまた流されたり忙しい。
何だか裏主役は真田幸村だと思った。

奇傑左一平―怪しき猿人吹矢の巻
→矢毒ちゅうたらヤドクガエルですねぇ。土人とゆってるからクラーレかも。
ドイルのあの話に似ている。

白狼浪人
→古事に倣って千羽の鶴を放ったが、誤って紅鶴と呼ばれる鶴っぽい鳥まで放してしまった家光(紅色してるのに何故間違って放したのか…よっぽどアレな人じゃないか)。
何とか見つけ出し、江戸までつれて来る途中で曲者によってまた逃がしてしまう。
その責任を一人で背負って切腹した侍の病弱な息子と、紅鶴が庭に下りてきたのを捕まえこっそり飼っていた父を件の曲者に殺された娘。この二人が親の敵を討つ話。
枚数制限の所為か、始終ばたばたしている感が否めない。

秘文貝殻陣
→医学を学ばせる為に長崎へ留学させた息子がキリシタンになって悪事に加担しているらしいと知った元岡っ引きの男。
まさかの(ネタバレ自粛)だよ好きだねぇ横溝。

まぼろし小町
→与力の屋敷に投げ込まれた人気絵師・鳥居清彦が描いた風流三小町の錦絵は、それぞれ唇、眼、鼻がくり抜かれていた。錦絵と共に「この謎を解いてみよ まぼろし小町」と署名された手紙が同封されていた。
まぼろし小町とは、風流三小町と共に発表されたモデル不明の美人画の通称。清彦は彼女に恋焦がれ、パトロン達と船で宴会をしている最中に、川へ自ら飛び込み死体も上がらなかった。
そして風流三小町のモデルの一人が殺害され唇を切り取られた。更に眼をくり抜かれたモデルの死体も発見され…
これは、被害者が可哀想。悪いのはあいつらである。ひどい。

蝶合戦
→昼夜問わず、無数の黄蝶と白蝶が飛び交うようになった。日ごとに数が増し、人々は戦の前触れだとか、駿河大納言の祟りだとか噂する。更に光る蝶まで現れるようになり、見物客が絶えなくなってしまった。
(※駿河大納言とは、徳川家光の弟・忠長の事で、家光よりも人望があった為難癖つけて自害させられた人物であるらしい。私歴史詳しくないもんで)
そんな中、蝶合戦とともに名物となっていたのが一人の狂女。頗るつきの美人だが、道行く人を捕まえては「金弥さま、なぜわたしを置いて行ったのです、父はどこにいるのです」と問い詰め、人違いに気付くとそのまま別の人を捕まえるのであった。
金弥に間違われた長七郎(忠長の息子と言われている架空の人物)は、狂女から間違えたお詫びにと、光る蝶のからくりを教えてられた。
狂人の戯言にしては筋が通っているので、長七郎は光る蝶を調べる事に…

犯人さがし捕物帳:お蝶殺し
→おお、これは人形佐七です、初めての佐七。
トリックはあの作品のあのトリックだので犯人すぐ判るよ。あのトリックを知らなくてもミステリのセオリーを知っていれば犯人の目星はつくよ。

・評論・随筆篇
探偵小説への飢餓/探偵小説と療養生活/『蝶々殺人事件』の映画化について/映画にしたい探偵小説/探偵小説の方向/獄門島顛末/めくら蛇におぢず―翻訳誌の思出/新しい探偵小説/探偵小説の構想/森下雨村の好意―私の処女出版/還暦感あり/推理小説万歳/推理小説を勉強中/探偵小説五十年
佐七誕生記/人形佐七捕物控/私の捕物帳縁起
『ドイル全集』訳者の言葉/御存じカー好み/怪奇幻想の作家三橋一夫氏に期待す/家庭必備の書/ガードナーを推す/「魔術師」について/エデン・フィルポッツのこと

渡辺温の話が出てくると切なくなるー…国枝史郎の小酒井不木ネタと同じ現象。
温の実兄・渡辺啓と同い年なんだね横溝さんって。他の人と合わせて三人で合同還暦会してもらったんだって。
因みに啓助氏は百歳まで生きられたそうな(1901-2002)。弟の分まで長生きされたのねー…おんんー…ウウ。

よこみぞ・せいし(1902-1981)
神戸市生まれ。本名は正史(まさし)
神戸二中卒業後、銀行勤務。1921年「恐ろしきエイプリル・フール」が『新青年』懸賞に入賞。
その年に大阪薬学専門学校入学、卒業後は家業の薬屋を営みながら執筆したものや翻訳を雑誌に投稿して過ごす。
乱歩の勧めで上京し、博文館入社。『新青年』の編集長に就任する。
戦後、『本陣殺人事件』で、日本家屋における密室殺人を完成させ(※それまでは、木と紙で出来た日本の家で密室を作るのは不可能とされていた)第1回日本探偵作家クラブ賞(後の日本推理作家協会賞)長編賞を受賞。
その後社会派ミステリの台頭で筆を折ったが、映画『犬神家の一族』で空前のブームとなり再び執筆。70歳を過ぎて4つの長編を上梓する。
勲三等瑞宝章受章。
81年12月28日、結腸ガンのため死去。
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寝ても覚めてもミステリが好き。最近はもっぱら「探偵小説」ブームで新しい作家さんを良く知らない。
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