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小説家ロナルド・ストラットンの屋敷で行われた奇妙な仮装パーティ――参加者は有名な殺人者またはその被害者の仮装をし、屋敷の屋上には絞首台が設置され、三体の男女の藁人形が吊るされていた――に参加したロジャー・シェリンガムは、ロナルドの義妹イーナが皆に嫌われている事を知る。彼女は注目されたいが為に騒ぎを起こしては強過ぎる自己顕示欲を満たしているようだった。パーティを白けさせたイーナは屋敷から追い出されてしまう。その後、屋上の絞首台にぶら下がった彼女の死体が発見される。自殺と思われたが、シェリンガムは殺人の決定的証拠を発見する…


1933年発表。バークリー作品なので、大分穿った読み方したんだけど、その上を行っていた…!
以下ネタバレにつき畳みます



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[創作篇]
・鯉沼家の悲劇/五年ぶりに母の生家である鯉沼家を訪れた春樹。鯉沼家は、先祖が平家の落人であったと伝えられており、逃れてきたこの地に里を造り上げたという伝説のある旧家だった。しかし祖父の代から衰微の道を辿っていた。祖父は謎の死を遂げ、伯父は十年前に失踪した。母の姉の加津緒は死んだ婚約者の為に独身を貫き、それに義理立て独身を誓った二人の妹・澤野と綾女。そして、祖父の妾の子として姉と妹にいじめられ続けたお末(伯父と母だけは彼女の味方だった)。伯父が失踪した後に家出したお末が蝶一郎という美しい子どもを連れて十年ぶりに鯉沼家へ帰って来てから、澤野と綾女の仲は険悪になり…
→1949年発表。犬神家のような設定だけど、めちゃんこドロついてて読むのしんどかったよお!一般常識が通用しない鯉沼家の色に染まったようで本質には気付いていない春樹の行動は本当に苛つくよ!お前は馬鹿か!て位鈍い。こんな語り手じゃあ事件は解決しまい…と思ったところで都合良く旧友の清也登場!こいつは里の人たちより鯉沼家への偏見がない分事件の真相が見え易いとして父である吉村医師が送り込んだ男なんだけど、その割には春樹より鯉沼家の本質を見抜いているし、ホームズもびっくりな位動機を推測しよる。この家に子を育てた経験のある人(お末さんは除く)が一人でもいれば蝶一郎は死なずにすんだし、悲劇を食い止められただろうに…(ただし鯉沼家ルールによって三人の妹の死は免れなかっただろうが)格下の家に嫁ぐなら死ね!とか言う加津緒伯母さんは強烈なキャラだけど、春樹視点の描写を読むと嫌いになれない不思議な女性。一番ヤバい人だけど、一番まともな人に見える。ほんと不思議。
・八人目の男/金を奪う為旅の六部を殺したと噂される屋敷の一家。六部は七代祟ると言って息絶えたと言われ、妙子兄妹が七代目にあたる。妙子の縁談が四度続けて破談し、その後の三度は死人まで出てしまった。そして遠方から八人目の男がやって来て…
→1949年発表。妹と兄の書簡で綴られた作品。旧家で続けて起きた悲劇の真相は、容易く見抜ける訳だけど、その動機が想像を絶する。よくこんなネタが浮かぶな!
・柿の木/柿の木から落ちて頭をぶつけたせいで馬鹿になった――母親からそう言われ、事ある毎に馬鹿と罵られ折檻を受けるサダ。幼い弟妹たちも母の歓心を得るためにサダを馬鹿にしいじめていた。十六歳になったサダは町へ奉公に行く事になり、奉公先の若い夫婦の赤ん坊面倒を見る事になった。そこではサダを馬鹿と言う者はおらず、赤ん坊の世話をする事で幸福を感じていた。しかし奥さんが出産入院し、夫が見舞いに来なくなるとサダに八つ当たりするようになってから、サダは次第に不安になりはじめ…
→1949年発表。デビュー作に心理描写とか足したもの。すんごくしんどい話だよ!!!!兎に角母親がむかつく。母親の真似をしてサダをいじめるガキ共もむかつく。そして何より、サダを庇いながらも「サダをいじめるな」と母親や子どもらに強く言わない父親がむかつく。母親から酷い仕打ちを長年受け続けたサダの心情を全く考える事無く母親が怪我して動けんから手伝いに二三日帰って来いとか平気で言ってくるとかこいつまじで殴ってやりたい。すっごい悪人はいないのに(母親は大分悪人だけどヒステリーなだけという感じ)、全員無自覚な悪意をサダに突き付けてどんどんサダを追い詰めていく。ほんと読むのつらい。つらい。
・記憶/感情が高ぶると、遠くから鈍い地響きのような物音を聞き、忘我の世界に陥る由美。その間の事は一切記憶になかった。十年後、祖父と言い争った際、その発作に見舞われ、気が付くと由美は庭に倒れていた。家へ戻ると祖父は首を絞められて死んでいた。記憶がない間に、由美は祖父を殺してしまったのか…
→発表年不明。夢遊病みたいな発作に悩まされるヒロインが、唯一の肉親である祖父を殺したと自首し、それに疑問を持った恋人が真犯人を探す話。記憶に関する話も興味深い。
・伴天連(バテレ)物語
→発表年不明。史実ではないけれど、逆賊?として一族を処刑された秀次の遺児が見つかり、洗礼を受けさせて世間から隠そうとする話。結局、淀君に気付かれ連れ去られてしまい、遺児と共に洗礼を受けた忠心深い男が死を覚悟して淀の御殿に向かった。二人の魂の為に礼祷するルイス・フロイスであった。
・岩谷選書版「あとがき」
・柿の木(シュピオ版)
→1938年発表、紅生姜子名義。これが元のやつ。短いけどしんどい。つらい。
・斑(ぶち)の消えた犬/隣の家に引っ越してきた五つの頼子が、左後ろ足に包帯を巻いた白い仔犬を道子ときね子に見せに来た。尋常二年生の兄が拾ってきたという仔犬は、最初黒い斑があったが、洗ったら消えてしまったという。後日、新聞の案内広告欄にその仔犬の所在を尋ねる広告が二つ出ていた。一方は「白黒の斑、左後ろ足に傷」とあり、もう一方は「純白」の犬を探しているのだが、道子は後者の方が五日前から広告を出していることをつきとめ、こちらが本当の飼い主だと推理した…
→1939年発表。迷い犬の話からダイヤ泥棒、そして殺人事件へと発展していく。
・満州だより
→1940年発表。兄と妹の書簡体。満州にいる兄の会社で起きた事件を、日本にいる母が解決する。村子作品にしては珍しく良い母親が登場しているなァ。
・若き正義
→1949年発表。若い巡査が事件の真相に気付き、苦悩する話。切ない。
・黒い影/幼い頃の交通事故で運命が一転した三千子と奈津子。明るかった三千子は足を失った事でひねくれ、姉に尽くす事で罪を償おうとする奈津子だったが…
→1949年発表。母親の一言の所為で、姉妹がお互いに憎み合うようになってしまったと思うと、ほんと、母親が憎たらしい。この作品の他にも母親が娘の人生を呪縛し不幸になっていく話が多いので、村子と母親の間になんかの確執があったんかしらと邪推してしまう。あと、父親の存在が希薄なのも気になるところ。
・木犀香る家/金木犀の気がある吉岡家に住む早苗。母が死に、弟が肺病になり父が発狂し、兄が戦死した事で家から離れる事を拒む早苗に結婚を申し込み続ける真崎。しかし真崎が訪れた事で、次第に吉村家の均衡が崩れ…
→1950年発表。早苗が旧家に囚われさえしなければ悲劇は起こらなかったのに…早苗の態度はほんと苛立つ…
・匂ひのある夢/目撃者は容赦なく殺すという極悪非道な強盗に入られたが、父が額を切られただけで殺されずに済んだ君子と光子。その後、強盗は自殺死体として発見され盗まれた物も戻ってきたが、その強盗と同じ手口で犯罪を犯す者が現れるようになる。一方、怪我をして以来父は別人のようになってしまい…
→1950年発表。
・赤煉瓦の家
→1950年発表。部隊は戦後の大連。怪談特集に載せられたという。悲しい話。
・薔薇の処女(おとめ)
→1950年発表。大好きな姉を嫌いな男に取られたくないという純粋すぎる弟を心理的に操る家庭教師。実験室の機械を扱うように冷静な態度で姉弟と共に睡眠薬を呷るが、彼にも見抜けなかった盲点が。

[随筆篇]
ハガキ回答/宿命――わが小型自叙伝/生きた人間を/奇妙な恋文――大坪砂男様に

みやの・むらこ(1917-1990)
新潟県生まれ。本名・津野コウ。別名・林紅子、紅生姜子(くれお・きょうこ)、宮野叢子。
実践女専(実践女子大学)国文科中退。
1938年、『シュピオ』に「柿の木」を発表しデビューするが、掲載されたのは終刊号だった。「文学少女」を読んで以来のファンである木々高太郎に師事する。
戦時中は家族と共に大連で暮らあい、戦後、日本に引き揚げてから本格的な執筆活動を開始し、47年、一週間で「鯉沼家の悲劇」を書き上げる。
用紙事情が良くなった49年、『宝石』に乱歩・木々両氏の推薦と共に「鯉沼家の悲劇」が一挙掲載される。90年死去。
職を失いキングス・ベンチ・ウォークに佇んでいたジャーヴィスは旧友のソーンダイクと六年ぶりに再会した。夕方、ソーンダイクの自宅で旧交を深めていると、そこへ弁護士と依頼人のルーベン・ホーンビィが訪ねてきた。ルーベンは、伯父が預かっていたダイヤモンドを盗んだとして起訴されたが、無実を訴えた。
しかし、彼の弁護士は有罪を確信しており、罪を認めて法廷の慈悲に縋るよう説得しようとしていた。何故ならルーベンには有罪の証拠――ダイヤモンドをしまった金庫の合鍵を作るチャンスがあり、更に決定的な証拠として、金庫にダイヤモンドと共に入れていたメモ帳についた極めて鮮明な血染めの拇指紋が彼のものと完全に一致していたのだった…


1907年発表。
ソーンダイクシリーズ記念すべき一作目。指紋が有罪の証拠物件として万能だと過信されている事を懸念し、その風潮に警告すべく書かれたもの。
登場人物が少なく、ルーベンが無罪でなきゃ話にならんしだし、真犯人はバレバレである。しかしジャーヴィスの叶わぬ恋と諦めつつもジュリエットに惹かれ焦がれる描写やソーンダイクが命を狙われる鬼気迫るシーン、ポルトンが活き活きと描かれる実験風景など、興味をひかれるシーンが次々と現れるのでぐいぐい読めてしまう。
ジュリエットを安心させる為とはいえ、ジャーヴィスが捜査状況を話してしまっている(とは言ってもソーンダイクは何も語らないので、「信じろ!大丈夫!」的な事しか言ってないが)のには相当やきもきさせられた…お前が「ソーンダイクはルーベンの無実を証明する」と伝えた事で焦った真犯人がソーンダイクを殺そうとするんだよ!気付けよジャーヴィイイイス!!と何度思った事か…しかし、これがあったからジャーヴィスはソーンダイクにとって最上の協力者の一人として成長できたんだ…と思うと仕方ない事なのか。
1920年発表。
・大公殿下の紅茶/父の不在中に、ボヘミア王朝の王位継承者であるモーリス大公が事故にあったと連絡を受け往診へ向かったレジナルド・フォーチュン医師は、屋敷近くの側溝に大公と体格が似ている男の死体を発見する。モーリス大公は、右後方から車に轢かれたと考えられたが、仰向けで倒れていたという。更に、胸にはハットピンが刺さっていた…
→巻き込まれ型フォーチュン氏最初の事件。ここで有力な警察関係者(CIDのローマス部長とその部下ベル警視)と知り合いになるのね。国際問題に発展しかねぬ事件であるが故、警察は手をこまねくが、無関係な男の死がフォーチュンの「正義」に火を付け凄い結末に…カーのバンコラン味があって、私は嫌いじゃあないよ。
・付き人は眠っていた/フォーチュンの患者である女優が殺され、現場には被害者の付き人が眠っていた。目覚めた彼女は女優の死体を見るや「わたしが殺した」と言って気を失ったという…
→状況証拠が揃い過ぎた殺人に、想像力の乏しい警察官は付き人を逮捕するが、そんな簡単な話じゃないワケで…レジ―は新たに弁護士のゴートンを仲間にした!
・気立てのいい娘/鉱山王が拳銃で撃たれ死亡した。死体の顔面は石のようなもので殴打され、右手親指は捻挫していた。容疑者として拘留されたのは、フォーチュンが以前勤めていた病院に勤務していた看護婦の婚約者だった…
→したたかァ…!!
・ある賭け/フォーチュンの旧友が突然やってきて助けを求めてきた。旧友は父と仲違いし家を出ており、後に妻となったイタリア人女性から父親と和解するよう勧められ手紙を出すと、父が彼の家へ訪ねてくるようになった。父親は彼の家を出てすぐの場所でイタリア製のナイフによって刺殺された為、旧友と妻に嫌疑が掛かっているのだった…
→読んでて、全然タイトルにある「賭け」が出てこんなァと思ったら…オリジナルタイトルのままで良かったのに。
・ホッテントッド・ヴィーナス/ローマスの妹が経営する女学校で不思議な事件が起きた。気が進まないまま学校を訪ねると、生徒の部屋が荒らされ生徒たちが写った多量の写真が盗まれたのだという。更に、最近入学した生徒の父親が様子を見に来た翌日、図書館に落ちていた校内へ持ち込み禁止の人形―ーホッテントッド・ヴィーナスに興味を持ったフォーチュンは事件の調査に乗り出す…
→ちょっと冒険色のある話。男女の仲ってのは他人からは推し量れんもんやね…
・几帳面な殺人/フォーチュンが休暇から戻ると、待っていたのは青白く困り果てた顔をしたローマスだった。数カ月前に発足した新内閣の、州ごとに炭坑を国営化するという計画の情報が関係者によって横流しされ、特定の石炭会社の株を買い漁る者たちが現れたのだという。その会社名を知っているのは財界から内閣入りした男とその秘書だけだった。翌日、秘書の預金口座匿名で三千ポンドが振り込まれた事が判明し、更に顔を滅茶苦茶に潰された男の死体が発見された…
→強烈すぎる犯人の動機…完璧な犯行の為にあらゆる犠牲を厭わない、悪魔的な情熱よ…

ところで、レジ―が度々「二、三個のマフィンと紅茶」を嗜むシーンがあるのでつい私もマフィン食べたくなって買っちゃったよ…
久し振りに上野先生の本を読んだ。
昨年出版されたものだから、上野先生、90歳かァ…精力的だなァ…
情報のアップデートを怠っておったので、横浜市の監察医制度が廃止されていた事を知らなかった…お金の問題もあるけど、人手不足ってのも大きな要因ですな。
上野先生の本を読むと死について考えさせられる…病死、自死、事故死、他殺…正しく死の真相を見極めてくれる監察医あるいは検視官が増えないと、犯罪を見過ごす事になりかねないってのが怖いな…本当は、犯罪による死がなくなる事が一番良いのだけれども…
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寝ても覚めてもミステリが好き。最近はもっぱら「探偵小説」ブームで新しい作家さんを良く知らない。
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