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[創作篇]
瀬折研吉(せおりけんきち)・風呂出亜久子(ふろいであくこ)の事件簿
・見えない足跡:アトリエで殺された彫刻家。しかしアトリエに続く道には第一発見者の女中の往復した足跡しかなく…
→ことさら色について強調されてたから色盲とかが絡んでくるのかと思ってたけど…綾辻ミステリで鍛えられた深読みじゃったか。しかし登場するミスおたの巡査が一番つまらなさそうな作品から読むって記述した後に「狩久から読もう」って流れ^^因みに二番目に読むのは研吉のだって狩さん自虐が過ぎる好き^^

・呼ぶと逃げる犬:密室で殺された教授は、書斎のスイッチを入れると隣室の電灯が点き、金庫の中には紙屑が入れられ紙屑籠の中に現金が入っているという変わった家に住んでいた。そして、飼っている犬は追い払うと寄って来て、呼ぶと逃げる犬だった…
→タイトルが良いよね。しかし亜久子の推理の前提はひどい。

・たんぽぽ物語:殺された弁護士のポケットには『Xの悲劇』を忍ばせ片手にタンポポを掴んでいたことから、「タンポポ夫人」と渾名されるサロンのマダムが容疑者として疑われていた。彼女に懸想する天野の伯父は、ミステリマニアである甥の浩介とそのマニア仲間の西村・エラ子・瀬折に彼女の無実を証明して欲しいと依頼する。素人探偵たちはそれぞれ役割分担して情報を集めて…
→研吉大学時代の話。登場の仕方がアレだったから犯人の目星はスグ付いたけど、たんぽぽの意味それか~~!

・虎よ、虎よ、爛爛と――一〇一番目の密室:どんな猛獣も女性も服従させる事ができるアルフォンゾ橘だったが、探偵小説家の江川蘭子だけは例外だった。アルフォンゾが〈内側からは開けられない家〉に蘭子と共に虎を閉じ込めたちょうどその頃、蘭子のヌードを撮影しているカメラマン・砂村が蘭子の所有する毒矢によって殺害され…
→前半の官能小説感からイッキに容疑者が閉じ込められている〈逆密室〉!リドルストーリィめいた結末、か~ら~の~ユーモアなオチ!多分狩さんの魅力が余す事無く詰め込まれた作品だと思う。



・落石:映画《落石》の主演を得る為に右腕を轢断させた女優・華村杏子は、全撮影が終了したその場で吊橋から飛び降り自殺した。妹・葉子はその吊橋があるR河原近くに引越してきて、姉の血を浴びた大石を庭に運び《杏子》と名付けた。ある日桑木医師の元に葉子から《杏子》が倒れて足を挟まれたと連絡があった。翌日、R河原で華村姉妹の敵でもある男の死体が発見され…
→デビュー作。この話好き。

・氷山:服毒自殺を遂げた探偵小説家・多摩村卓也の、書斎机上から発見された日記…そこには彼の妻と彼女に懸想する青年の毒死に関する記述があった…
→事件が起きた状況としては横溝の「百日紅の下にて」に似てる。自殺者の日記、三冊もあって…くどいというか…傍点も読者の注意を引きすぎてそこに仕掛けがあると丸判りでちょっと…

・ひまつぶし:未亡人・弓子は退屈していた。妹は友人とスキーへ行き、家政婦も年末の休暇で不在である今夜、亡夫に似た喬が訪ねてくるのを待っていたが、現れたのは夜盗だった…
→ハッピーエンド。この後、弓子は「貝弓子」となって創作翻訳を発表することとなるんだとか。狩久はどこまでも現実と虚構の境界を曖昧にしていくスタイルだな。

・すとりっぷと・まい・しん:三十七歳で未亡人となった叔母を密かに愛する私は、彼女へ相続される筈であった遺産を掠め取った彼女の兄を殺害する事にした。病気で動けぬ私が考えた、殺害方法とは…
→すとりっぷと・まい・しん=Stripped, My Sin(我が罪あばかれたり)の意だそうで、作中に登場するストレプトマイシンという薬の音に近づけたタイトルらしいが、乱歩ら評者からは不評だった模様…あのトリックが成立するとは考えられないとか最後の一行は不要とか言われたみたいだけど、それを補う位前半は好評だったらしい。

・山女魚(やまめ):有坂夫妻の家に招待された探偵小説家の韮山は、十年程前にこの地で起きた密室事件――鍵の掛かった風呂場から消失し、配水管が流れ込んでいる美女ガ淵で死体となって発見された――の話をする…
→アッ、こうゆうオチなのね^^

・佐渡冗話:佐渡行きの船上で殺人事件が起きた。被害者はハンサム・ジョーと呼ばれる新潟駅専門の掏りだった…
→前前前世じゃない方の「君の名は」の連載を中断してまで佐渡新報に掲載されていた作品。佐渡行きの船に乗った他人達の微妙に絡み合った関係が浮かび上がってくるまでは「これ、探偵小説じゃないのかも…」と思ったけど、刑事が出てきたあたりから一人ひとりの挙動が意味ありげに書かれ出してぐいぐい読まされた。作中の佐渡新報にも狩久「佐渡冗話」が掲載されていて、乗客の一人が「狩久夫人」を名乗ったり(どんでんがえしがあるのだけど)狩流ユーモアも面白かった。

・恋囚:砂村氏の息子の家庭教師に推薦された大学生の鷹本は、砂村夫人の美しさに惹かれた。夫人は二十年程前、砂村氏の友人と駆落ちし子供を儲けたが、彼は学友との登山行で遭難死してしまった。同行の一人に砂村氏もいた為、夫人は恋人を殺したのは夫ではないかと疑っていた。そして狭心症を患い余命僅かとなった砂村氏は、密室状態の自室で服毒死して…
→他の作品から溢れるユーモアの欠片もない作品!登場人物の出自は諸判りだけど(短篇だしね…)、まさかあんな結末を用意するとは…絶対、復讐のネタにすると思ってたのに…フロイト的や…

・訣別――第二のラヴ・レター:探偵小説家・狩久の元を訪れたのはかつての恋人・比崎えま子だった。彼女は彼が書いた「落石」を読んで自分に宛てた暗号だと気付き彼に会いに来たと言う…
→「落石」「ひまつぶし」を特定の人物に向けたメッセージとして発表した、という作品。これを書く前提でデビュー作を書いたのか、こうゆう仕掛けを書きたくて後からこじつけたのかは判らないけど、なんかすげえ…

・共犯者:栗原に犯されたまゆりは脅迫されて関係を続けていた。しかし栗原の親友・池本と出会い愛し合うようになった二人…栗原との関係を打ち明け、栗原との関係を絶ち池本と結婚する事になったまゆりだが、栗原の執拗な脅迫は続き、ついに彼を殺す決心をする。しかし栗原はまゆりが殺す前に密室で背中を刺されて死んでいた…
→慌しい密室だな…だが、嫌いじゃあない。そんで他作品にもちょいちょい出てくる杉本警部はどの作品内でも道化役なのね…

[随筆篇]
女神の下着/《すとりっぷと・まい・しん》について/料理の上手な妻/微小作家の弁/匿された本質/酷暑冗言/ゆきずりの巨人/楽しき哉! 探偵小説

かり・きゅう(1922-1977)
東京都育ち(新潟県生まれ?)。本名・市橋久智(ひさあき)。別名・貝弓子。
46年、慶應義塾大学工学部電気学科卒業、結核を発症し療養生活を送る。
51年、『宝石』の短篇懸賞に「落石」「氷山」を応募し「落石」が優秀作5編の内に選ばれデビュー。貝弓子名義で創作翻訳も執筆。「関西鬼クラブ」東京支部を主宰。
62年、テレビ局の仕事が忙しくなり休筆するが75年に「追放」で再デビュー。初の長編『不必要な犯罪』などを刊行するが、77年肺癌で死去。
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寝ても覚めてもミステリが好き。最近はもっぱら「探偵小説」ブームで新しい作家さんを良く知らない。
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